アリババの直播電商(ライブコマース)B2Bへ波及、工場長が“網紅”に変身?壮大な計画をスタート
アリババの創業事業は、B2Bネット通販である。その伝統は、数々のB2Bプラットフォームとなり、現在に引き継がれている。最近はそのB2B事業が、直播化しているという。B2Cネット通販を席巻しているライブコマースが、B2Bにまで波及してきたようだ。実態を見ていこう。
アリババのB2B事業
アリババのB2B事業は、完璧な布陣を敷いている。
1688網-中国国内中小企業向けの商品取引サイト。100万社以上の中小企業の利用実績を持つ。川上から川下までトータルサービス。現在の対象は16業種。
零售通-1688網の小売業部門を「零售通」として分離。取引の効率化を目指し、全国130万の家族経営店のオンライン化を達成。
淘工廠-優良工場とサプライヤーをマッチング。川上の工場同士をつなぎ、高度のサプライチェーンを目指す。
国際站-海外バイヤーに、中国のサプライヤーをマッチング。貿易の基本業務サービスを提供。
全球速売通-国内中小企業と海外バイヤーをマッチング。
産業チェーンの川上から川上、海外までしっかりカバーできている。
1688直播基地
アリババは4月末、浙江省・温嶺市に全国初となる「阿里巴巴1688直播基地」を開設した。同時に温嶺市直播節活動も開始した。
中国には、1000に上る産業ベルトが形成されている。これは中国製造業の活力を示し、実際世界で唯一、国連の全ての工業分類を備えた国である。各々の産業チェーンは細分化され、完成されている。
ところが今回の新型肺炎と防疫体制は、産業ベルトの運営に大きな影響を与えた。交通管制により物流が途絶え、在庫計上の処理問題も浮上した。海外貿易企業への影響はさらに深刻だった。多くの国で都市ロックダウン等の発生により、注文のキャンセルが多発、保障もなかった。産業ベルトは断裂してしまい、新しい販売先の確保をしなければならない。その支援のため、B2Cネット通販界を席巻している直播を、取り入れることにした。
工場長自らライブコマース
直播電商の特質は、売り手と買い手、双方の需要を効率よくマッチングできることだ。文字では20分かかるセールスポイントの解読が、映像なら2分で可能だ。これはB2Bにも応用できるはずである。
そこでアリババは、春雷計画(2009年から続く中小企業サポート計画)のすべての産業ベルトに、直播基地を設置することにした。目標は30万の工場に、ライブコマースの能力を備えさせることだ。年間で1000億元(1兆5100億円)規模の売上げ、延べ契約数2億件を目指す。全国100カ所に運営センターを建設する。温嶺市の「阿里巴巴1688直播基地」は、その第一弾だ。
直播基地は、実際にどのような運営を行うのだろうか。中心となる配信者は、工場長や、看板の女性社員、産品に精通したベテランなどが良い。有名な網紅(KOL、インフルエンサー)は必要ない。誇張された描写や宣伝は不要だからだ。実践的な、原料や技術の紹介、セールスポイント、使用例等、バイヤーの関心事項が説明できるかどうかにかかっている。
1688のプラットフォームには、膨大なデータ蓄積やハッシュタグがあり、ニーズのある顧客に、効果的な配信が可能だ。
1688直播基地は、それぞれの産業ベルトと各工場に対し、直播関連サービスの指導、新ルート開発、配信者の養成を行う。そして多額の経費がかかるB2Cスタイルのライブコマースと異なり、基本サービス料を請求しない。
まとめ
さらにアリババは、デジタル化“外貿専区”を開設し、海外貿易企業の国内市場へのアクセスをサポートした。これまで少なくとも32万社の海外貿易企業が、国内取引へ参入を果たした。
アリババは常に中小企業に寄り添い、取引きの近代化に努めてきた。B2B取引のライブコマース採用も、その流れの一環だ。とにかくB2Bビジネスに、新しい戦場が出現したのは間違いない。他社の動向に注目したい。