中国IT巨頭の最新BtoB投資分析、金額でアリババ、件数でテンセントが圧倒
中国IT巨頭、BATJ(バイドゥ、アリババ、テンセント、ジンドン)TMD(頭条=バイトダンス、美団、滴滴出行)のBtoB投資の分析記事が掲載された。それによればBATはBtoCビジネスを制覇したが、利益成長スピードはもう望めない。テンセントのBtoB宣言に代表されるように、toBシフトは必然の流れと見られている。彼らはどのような投資戦略を実行しているのだろうか。
各社のBtoB案件
アリババは創業以来、BtoB事業に注力してきた。現在でも主なものだけで「阿里巴巴国際站」「阿里巴巴1688」「零售通」「淘工廠」4つのBtoBプラットフォームを運営している。BtoC事業の急発展により、陰にかくれていた。
これに対してテンセントは、2018年9月30日、ToBシフト宣言を行い、姿勢を明確にした。そして2019年のBtoB企業への投資は34件、ダントツだった。
それに続くのは、アリババの13件で、以下、京東8件、バイドゥ6件、バイトダンス5件、滴滴出行1件、美団0件の順だった。
アリババとバイドゥは減少
2019年、アリババBtoB投資は13件、合計約300億元(4800億円)だった。そのうち233億元を物流子会社「菜鳥網絡」をつぎ込んだ。その他BtoB企業への投資は70億元にとどまる。業種は新零售(ニューリテール)、IoT、ビッグデータ、サイバーセキュリティ等。2018年は400億元を投資し、テンセント、バイドゥ両者を合わせた額の2倍だった。アリババのBtoB投資は、少し鈍化している。
2019年、バイドゥBtoB投資は6件、合計約30億元(480億円)だった。そのうち21億元は、広告企業「新潮伝媒」への戦略融資だった。他の業種はAIやネットビジネス等であるる。金額は2018年に比べ、半減した。
テンセントは横ばい
2019年、テンセントのBtoB投資は34件、150億元(2400億円)だった。2018年は29件、金額もほほ同じだった。
業種は、電子署名、ビッグデータ、オンラインチケット、電子ビジネス、AI、IT機器、CRM(顧客管理)、ERP(Enterprise Resource Planning=企業資源化計画)、情報サービス、サイバーセキュリティ、新零售、貸オフィス、オフィスオートメーション等、多岐にわたる。多様さにおいて他を圧倒している。
京東とバイトダンス、滴滴出行は?
2019年、京東のBtoB投資は8件だった。アリババ、テンセントほどのスケールはないものの、ストーリーは似ている。業種はビッグデータ、AI、ERP、人材、決済、創業支援等、デジタルスマートシティ、スマート農業、スマート医療等である。2018年比、ほぼ横ばいである。
2019年、バイトダンスのBtoB投資は5件だった。パターンにこれといった定型は見られない。業種はAI、メディア、ネットワーク構築、ビッグデータ、ライブ放送等。やはり2018年比横ばいである。なにしろ2017年には、「Musical.ly」に10億ドルをつぎ込んだ。それが今のTikTokの繁栄につながった。大型投資のひと休みもうなずける。
2019年、滴滴出行のBtoB投資は、IT設備の「長亭科技」という会社1件のみ、金額は未公表である。
まとめ
中国青年報の調査によると、2019年の全融資案件は、7405件、前年比31.4%減、融資額は5650億元(9兆円)前年比60.3%も減少した。とくにエンジェルラウンド以下の早期融資比率は、2014年の50%から2019年は20%に落ちている。
ベンチャー投資は冬の時代に入っている。それを思えば、IT巨頭たちのBtoB投資は、まだ活況といえるだろう。巨頭同士の戦いに打ち勝つためにも、先行投資は欠かせない。投資機構にはない実業家としての目利きを生かせるかどうか。2020年の投資動向に引き続き注目したい。