新型肺炎②防疫体制下の市民生活を支えるフードデリバリー2強、美団、餓了蘑はライフラインに昇格?
新型肺炎は、現実にどのような影響を与えているのだろうか。今回はもう少し市民生活にフォーカスした、具体的なニュースから見て行く。中国の大都市では、フードデリバリー(美団、餓了蘑)や新零售(主に生鮮食品デリバリー)が高度に発達している。小売店はクローズしていても、これらさえ機能していれば、生活に困ることはなさそうだ。封鎖状態の武漢と、その他地区に分け、実態を見ていこう。
餓了蘑と美団、武漢での取組み
フードデリバリー2強の1つ、アリババ系の餓了蘑は、「万吨通」という地元企業と協力し、商店の組織化に取り組んだ。「有家」「Today」「百貨園」「鮮豊水果」「天香果園」など市内の生鮮店、コンビニと提携し新たに「生鮮便利服務ステーション」をスタートさせた。
目的は、できるだけ多くの社区(コミュニティ)住民に、速やかかつ便乗値上げのない適正価格で、生鮮食品を届けることにある。オンラインの注文経験がない人たちのために、詳細なガイドも配布した。
1月29日、約100カ所の生鮮便利服務ステーションが営業を開始した。これで市民はコミュニティの外へ出ることなく、食品を始め生活必需品を確保できるようになった。アップロード以来4日間で、各ステーションの1日当たり発注数は、60から1000にまで急増しているという。武漢市全地区をカバーするため、速やかにステーションを増加させていく。
もう一方の雄・美団については、美団買菜(生鮮に特化したアプリ)武漢配送センターの実情が報告された。当日の注文分は夜までに、この配送センターへ集まる。翌日(社区)コミュニティの店舗へ配送され、顧客はそこで受け取るシステムだ。現在、このセンターで働く人員は、20人で40人分の仕事をこなし、帰宅することもできない。武漢市民への生鮮供給を保障するため、不眠不休で頑張っている。この状況は封鎖解除まで続くだろう。
美団-その他地区での取組み
武漢以外の地区においても、新型肺炎の防疫体制下、生鮮食品購入の主力はオンラインとなりつつある。
北京地区では美団買菜の1日平均発注量が、春節前の2~3倍となった。責任者は、想定の5倍だが、一部を除いて商品供給には問題ない、と述べている。ただし防疫体制による物流の制約と、人員不足の影響は出ている。
さらに供給量を拡大するため、山東省、河北省等からの直接仕入れを模索、同時に北京市商務局に対し、新輸送ルートの開拓を要望している。配送員も一応確保できているが、今後の配送遅延に備えて、さらに募集をかけている。
また北京、上海、深圳の3大都市に“無接触配送”をアップロードした。これを選択すると、配送員は指定位置へ荷物を置くだけで、顧客との対人接触はない。現在、発注者の50%が、この無接触を選択している。
今回の事態に対し、美団は直ちに“疫情防控応急チーム”立ち上げた。各配送ステーションの全人員にマスクを配布、着用を義務付け、衛生安全体制をグレードアップした。体温計、消毒液も準備し、1日少なくとも1回、配送ステーション全体の消毒を行っている。
まとめ
フードデリバリー大手2社を筆頭に、各社の生鮮配送システムは、防疫体制下もはやライフラインとして機能している。
2019年、中国生鮮ネット通販の取引規模は3506億800万元(5兆5000億円)と見られている。しかし企業の88%は欠損を出し、黒字を達成しているのはわずか1%しかない。ここ2年では、十数社が経営破綻している。
新型肺炎終息後、この状況は一気に改まる可能性がある。中小小売店は、大手プラットフォームへの依存を強めそうだ。そして生鮮ネット通販各社は、はっきりその生死が分かれることになりそうだ。真価が問われている。