【最強戦略】ソーシャル・ニューリテール〜新しい時代の消費とは〜
今日は中国のメディアから「ソーシャル・ニューリテールの成り立ち」という記事を紹介します。
最近ますます注目される「ソーシャル・ニューリテール」というビジネスモデルですが、その本質と発生の背景、ソーシャルビジネスとの関係、そして、消費者と企業それぞれにどのような価値をもたらすのか。これらの内容について順に見ていきましょう。
・記事に沿ってまずは、ソーシャル・ニューリテールの定義から始めたいと思います。
・ソーシャル・ニューリテールとは、すでに定着していた業態であるニューリテール(新小売業)と、ソーシャルビジネスとが融合して誕生した新たなビジネスモデルを指します。
・オンライン、オフライン、ソーシャルビジネスの連携と融合により、消費者にとってはユーザー体験の向上、企業にとっては高効率・低コストの運営が実現します。
・実はこのソーシャル・ニューリテールという舞台には、消費者と企業の他にもう一つの主役が登場するのですが、それについては少し後にご説明します。
・そもそも「ニューリテール」とは何か。
すでに2016年には、アリババの創業者ジャック・マーや、シャオミの創業者レイ・ジュンが「ニューリテール」の概念やその重要性について発言しています。「ニューリテール」とは、当時「将来の小売業の発展モデル」として提唱された概念で、一言で言うと、「オンラインとオフラインの統合により、各方面の効率化をはかり、消費者体験を向上させる革新的な小売モデル」を指します。
・この「ニューリテール」というビジネスモデルが既に定着していた環境で、近年台頭した「ソーシャルビジネス」が融合したものが「ソーシャル・ニューリテール」であり、筆者は次の3つのタイプに分類しています。
1つ目は、ニューリテール企業のソーシャル化。アリババ、京東、Xiaomi、スターバックスなどがその例です。
2つ目は、ソーシャルEコマースプラットフォームのニューリテール化。共同購入アプリとして快進撃中の拼多多(Pinduoduo)などがその例です。
3つ目は、従来型リテール企業のソーシャルニューリテール化、です。
・いずれのタイプも「人、物、場」という3要素に関わり、ソーシャルという切り口を持ち、従来に比べて、より低コストで効率の高い、顧客の獲得と事業運営を実現しています。
3つ目の主役:事業者としての消費者「消費商」
・「ニューリテール」に続き、筆者は次に「ソーシャルビジネス」に焦点を当てます。
ソーシャルビジネスとは、ソーシャルネットワークと従来のビジネスが融合したものです。
つまり、ソーシャルネットワークというツールを利用して行うビジネスであり、典型的な例として「ソーシャルコマース」があります。これは、消費者が、企業やプラットフォームと協力して、自分が消費して良いと思った製品を友達にシェアし、そこから一定のリターンを得るというモデルで成り立っています。
・この「ソーシャルコマース」に従事する人々を筆者は「消費商」(*後述ご参照)と呼んでいます。この「消費商」が、先ほど冒頭で少しのべた、「ソーシャル・ニューリテール」という舞台の3つ目の主役です。
消費商とは、文字通り、「消費する商人」のことです。
消費者とは、消費するだけの人で、商品の取引には参加しない人のこと。
一方、消費商とは、消費者であると同時に事業者でもある人のことを指します。
・この「消費商」の台頭は、消費者のデジタル化の進展、ショッピングルートのオムニチャネル化、ソーシャルネットワークの高度化などが背景にある、と筆者は分析しています。
(*中国語では「消費商」と言い、この用語がすでに経済学用語としても定着しているようですが、海外ではこれと似たものとして「プロシューマー(生産消費者)」がある、とされています。https://baike.baidu.com/item/消费商/112874?fr=aladdin)
(*「プロシューマー」について以下ご参考:1980年にアルビン・トフラーが「プロシューマー(生産消費者)」を提唱。これは、生産者 (producer) と消費者 (consumer) を組み合わせた造語で、「生産活動を行う消費者」を意味します。
https://consult.nikkeibp.co.jp/ccl/atcl/20190515_1/ )
ソーシャルビジネスが急成長した理由
筆者は次に、ソーシャルビジネスが急成長した背景について述べています。
主な2点を挙げると、新技術の開発と、新しい消費概念の出現です。
・まず、新技術の開発。ソーシャルネットワーク、デジタルネットワークなどの新技術の発展で、ソーシャルビジネスの実現が可能になりました。
次に、新しい消費概念の出現。消費の主役の一つである、90年代生まれ以降の世代は、安いから買う、のではなく、人と違う個性があるから、または自分がその商品に共感するところがあるから買う、つまりその消費心理の根底には「ソーシャル」の存在が大きく、ソーシャル的に価値がない商品は買わないのです。
・こうした新たなタイプの消費者が望むのは「パーソナライズ化」つまり一人ひとりに合わせた対応であり、そのためには、企業との双方向性のあるやりとりが必要になってきます。こうした消費者のニーズに合わせる形で、ソーシャルビジネスが発展してきました。
ソーシャル・ニューリテール:顧客、企業、消費商(事業者)の「三方良し」
・まずは顧客についてです。先ほど述べたように、新たな技術を利用した、新たな消費概念に対応した商品やサービスの提供により、ユーザー体験は、より向上します。今までよりも便利に、さらによい商品やサービスが手に入るようになります。
・また、ソーシャルネットワークの口コミなどを通じて商品の情報がいち早く入ります。ソーシャルネットワークとは、自分にとって信頼できる人たちのつながりですから、そこから得た情報なら信用できる、ということで購入を決めるまでの時間短縮が可能になります。
・さらに、ソーシャルネットワークを通じて、ユーザー同士、ユーザーと企業、というつながりが発生し、社会や企業に対する消費者の影響力が高まります。
・次に、企業にとっては、低コスト、効率の高い運営が可能になります。ソーシャルネットワークを利用することで、従来より低コストで新規の顧客を獲得することができ、相互作用やカスタマイズといった方法を駆使して、顧客の定着率やリピート率を向上させ、収益化の効率もアップします。消費者と直接繋がることで、消費者ニーズに合わせるオンデマンド対応が可能になるため、在庫も削減されます。
・また、企業の認知度を高めたり、消費者からの信頼度を得る上でも、従来より低コストで効果的に行うことができます。消費者からのフィードバックをもとに製品開発に反映しているシャオミなどは、ソーシャル・ニューリテールのメリットを活用している例として挙げられています。
・このほか、企業はソーシャルネットワークを利用して、ビジネスパートナーを開拓できます。その一例として、消費者を「消費商」、つまり事業者に転換させるという方法があります。こうして、人材開拓や広告などの資源投資も削減でき、結果として運営コストを大幅に削減できるため、企業にとって大きなメリットがあるとしています。
・そして「消費商」、つまり事業者にとっては、比較的低リスクで起業できるチャンスが広がります。企業の協力パートナーになったり、eコマースのプラットフォームで店舗を出すという形もあるでしょう。
・このように、ソーシャル・ニューリテールというビジネスモデルは、顧客、企業、事業者の全部にメリットがある、と筆者は述べています。
・最後に、消費者と企業の今後の動向についてです。
・消費者については、従来の「生産者中心」から「消費者中心」という新たな消費時代において、C2B、C2Mと呼ばれる、消費者が生産・流通を牽引するビジネスモデルが主流になるだろう、そして
・企業については、ビッグデータ、技術、ソーシャルネットワークの力を得て、オンデマンドによるカスタマイズが進むのではないでしょうか。