中国向けホームページ制作法㉕~ネットと物流の関係を考える~
目次
“モノ”が日中国境を一瞬で越える!?
中国にいてもすぐに日本の商品が届く!? インターネットの普及で日本-中国間を情報が一瞬で越えることが可能になったのは言うまでもないことですが、情報だけでなくモノも一瞬で日本-中国間を行き来する日がそう遠くないのかも知れません。中国のECの実状をみてみますと、アリババグループが中国国内での発注で24時間以内、中国国外での発注で72時間以内の配送を表明するなど、中国IT企業のEC物流網が拡大しています。迅速な配送はもちろんのこと配送コストを抑える倉庫運営やトラック配車、ITを活用したEC商品の配送など物流効率化の取り組みが進んでいます。
経済産業省によりますと、日本から中国への越境EC市場規模が2020年には2017年の約1.4倍の1兆9000億円になるとの試算もあり、日本の運送業者も中国向け配送の需要増を見据え物流網の整備を急ぎます。中国のECが拡大している今、中国向けホームページ制作やネットビジネスにおいても情報発信だけではなく、モノの移動についても考える時期に来ているといえるでしょう。今回は、日本の運送業者の中国戦略やl、中国IT企業のECや物流効率化の取り組みをみていきたいと思います。
他社のトラック・倉庫をITで管理 アリババ
まずは中国国内でのECの配送の現状を確認していきたいと思います。中国国内のECといえば、シェア第1位のアリババグループと第2位の京東集団がITによる物流革命を起こしているといっても過言ではないでしょう。中でもアリババグループの物流を担う会社「菜烏網絡(CAINIAO)」の取り組みはユニークで、日本の運送会社のように自社でトラックを用意するのではないそうです。菜烏網絡は、中国の宅配会社のほか、日本通運や米国などの中国国外の企業や組織とも連携し、リアルタイムで連携する企業のトラックや倉庫の稼働状況を把握、自動で担当を振り分けるといいます。
ビッグデータやクラウドの技術を導入し、送り状の電子化も行うなど、IT活用による物流の効率化を進めています。11月11日「独身の日」セールなどでECによる商品購入が集中しても、宅配会社の負担を分散することができ、コスト削減や配送時間短縮にも対応できるというわけです。また、宅配時に不在で商品を再配達しないといけないという“二度手間”“三度手間”を防ぐため、一部地域では顔認証で商品を受け取れるロッカーの設置や、連携する実店舗での商品の受け渡し、さらにはアパレル商品を受け渡す際に試着室を用意し、試着してサイズが合わなければ即返品という対応もしているというから驚きです。
AIによる無人管理・配送目指す 京東物流
中国ECシェア第1位のアリババグループに対し、第2位の京東集団は、自社での物流強化や他社への物流網開放でECシェア奪取を図ります。京東集団は、アリババグループと異なり、自社の物流網「京東物流」で配送を行っています。京東物流には小中型荷物、大型荷物、低温のカテゴリーに分かれた三大物流網があり、都市部を中心に農村部でもITを駆使した物流センター、大型倉庫 、営業所・受け取り専用窓口などを設けて消費者の決め細かなニーズに対応、その物流網は中国全土の9割以上をカバーしているともいわれています。
さらに京東集団の物流網は他社にも開放されており、提携する会社と倉庫や物流網のシェアを図るなどの試みでコスト削減と効率化を目指しています。また、京東集団は、クラウドコンピューティングや人工知能(AI)、ビッグデータ、ロボットによる運営の自動化を高めており、ロボットのみで運営される無人倉庫稼働、無人トラック、ドローンによる配送実現も進めています。
中国国内の配送は現地企業任せ ヤマト、日通
ここまで中国国内の配送の現状をみてきましたが、日本-中国への配送の状況はどうでしょうか。先にも触れましたが、中国では2016年に日本通運がアリババグループと業務提携し、越境ECサイト「天猫国際(Tmall Global)」出店者への物流サービスを本格的に開始しています。具体的には、菜烏網絡-「天猫国際」出店者-日本通運という形で、それぞれをEDI(electronic data interchange、企業間における電子的なデータ交換の仕組み)で結び、千葉県成田市の日本通運輸出拠点を菜烏網絡の海外倉庫と位置付けて、オーダー管理、通関情報、輸送履歴情報、運賃決済情報を連携させ、「天猫国際」出店者の円滑な販売活動を支援しているそうです。
ヤマト運輸も2017年に京東集団と手を結ぶことで自前で日本から中国に宅配する方針から中国での宅配は京東集団に任せる方針に転換しました。日本企業などが日本から中国向けにヤマト運輸を通じて商品を送る場合、日本から中国までの輸送をヤマト運輸が手配し、中国国内は京東集団の物流網を利用するといいます。ヤマト運輸と中国全土に物流網を持つ京東集団の提携強化により、中国のECサイトに出品していない中小メーカーなどでも中国向け販売ができるようになり、ヤマト運輸の中国向け商品の取扱い増が期待されます。
一方、京東集団としても日本の宅配便市場でシェア約5割を持つとされるヤマト運輸との提携で日本からの商品の取扱い増が見込めるほか、ヤマト運輸の低温物流のノウハウを京東集団の物流センターや配送車両などで活用していく方針です。
アリババVS打倒アリババ連合の構図鮮明に
アリババグループと日本通運、京東集団とヤマト運輸のように、中国では物流の効率化とコスト削減に向けて、企業同士の提携、連携が相次いでいます。中国でチャットアプリ・微信(WeChat)や電子決済サービス・微信支付(WeChat Pay)を提供するIT企業・騰訊控股(テンセント)と京東集団の両社は2017年、中国第3位のECサイト・唯品会に出資しました。微信(WeChat)に唯品会のサイトへの入り口を作るなど3社が業務面で提携し、EC事業で中国第1位のアリババグループに対抗する方針です。“打倒アリババ”に向けては、他の中国企業との連合で日本企業の伊藤忠商事も動いており、中国でのEC本格参入を目指しています。
伊藤忠商事は越境ECサイト「豌豆公主(ワンドウ)」を運営するインアゴーラに出資しており、中国中信集団(CITIC)と資本提携しています。CITICの顧客網や金融、インアゴーラのマーケティング、伊藤忠商事のコンビニや物流のノウハウを組み合せ、中国EC市場への食い込みを狙います。中国では、EC、物流などでアリババグループと“打倒アリババ”連合の構図が鮮明になっており、中国でネットビジネスを行う際には、組む企業がアリババグループか、“打倒アリババ”連合なのか、や、そのメリット、デメリットをより深く考えていく必要があるのではないでしょうか。
情報が動けば、“ヒト”“モノ”“カネ”も動く!?
ネットで知り得た商品を、ECサイトで検索したり、口コミで評判のよかったレストランへの道順を地図アプリで調べたことは、ネットユーザーであれば誰でも経験のあることではないでしょうか。情報が動けば、次に動くのは“ヒト”“モノ”“カネ”というのが、ネット社会のセオリーとでもいいましょうか。中国でスマートフォン(スマホ)が浸透した今、消費者がスマホで知り得た情報をもとに、スマホを使って欲しいものを購入したり、行きたい場所へ移動する、というパターンが出来上がりつつあるのかも知れません。
こういった消費者ニーズに先手を打とうと、アリババグループ、テンセントといった中国のIT企業は、人々の足(シェア自転車、ライドシェア、タクシー配車)、財布(電子決済サービス)、そしてモノの動き(物流、宅配)を手中に収めるため、ネット空間で激しい争いを繰り広げています。中国の人々への情報発信の一端を担う中国向けホームページやマーケティングにおいても、情報発信はもちろんのこと、今後は“ヒト”“モノ”“カネ”の動きを一層想定した展開が求められそうです。
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