中国のB2Bネット通販、越境Eコマースは、なぜ大きくのびたのか?危険な商習慣からの脱却。
今回は、中国の国内ネット通販と越境ECの中からB2Bビジネスにスポットを当ててみよう。急速に成長した理由とはなんだろうか。
ネット通販、越境EコマースにおけるB2B
2018年、中国のネット通販の売上げは30兆6100億元、前年比14.5%増加した。そのうちB2Bは10兆5600億元、シェアは34.5%だった。
越境ECは9兆1000万元、そのうちB2Bは5兆7000億元。越境ECのB2Bシェアは、62.6%に達している。(データ・中研普華研究院、iiMedia Research)
中国ネット通販のイメージは、11月11日(双11)の独身の日セールに代表されるB2Cだろう。2018年は、トップ企業のアリババだけで2135億元(3兆3400億円!)を売り上げている。第一回(2009年)セールの売上げ5000万元から、10年で4000倍以上に拡大した。ユニクロが紳士、婦人衣料品分野で1位に輝くなど、東アジア最大のB2Cセールである。
しかし、実際にはB2B取引が、全体の3分の1以上、越境ECでは6割以上を占めていた。イメージとは違いB2B取引が非常に繁栄していることがわかる。。アリババも設立当初は、B2Bネット通販企業としてスタートした。今も「1688批発網」をはじめ、充実したB2Bプラットフォームを展開している。これらは次回以降、紹介していきたい。
今年4月、「アマゾン中国市場から撤退」のニュースは世界を驚かせた。しかし、これは中国国内ネット通販事業に限られる。越境EC事業やAWS(Amazon Web Service=クラウドサービス)は、今も継続している。これらの事業は有望だからに他ならない。中国の事業者を、アマゾンの欧米版サイトへ導いている。アマゾン中国はB2Bでは、依然として注目の的なのである。
Q&A
Q1 中国でB2Bネット通販が急速に普及した理由は?
これには複数の回答がある。代表的なものは次の2つ。
A1 国内B2B[取引のルールがなかったから。
中国のB2B国内取引は、改革開放政策(1979年~)以降、ルール不在のまま、急速な拡大を続けた。遠く離れた企業間における高額の決済は、日本のような手形もなく、困難を極めた。前金で50%、納品後に残り50%など、業界毎に、大雑把でリスキーな支払い慣行が作られていた。アリババがネット通販で広めた資金プール方式(買い手が商品を確認後、売り手に代金を振り込む=後にアリペイへ発展)は、貿易におけるLC(信用状)の役割を果たし、取引リスクを大きく軽減した。
A2 問屋街のオンライン化
中国には、日本人の想像を超える大きな問屋街がある。上海や広州など大都市に立地しているケースもあれば、地方都市では、町全体がその産業で成り立っているところもある。例えば浙江省紹興市柯橋区は「軽紡城」と呼ばれる巨大な生地問屋街だ。総面積3266万平米、従業者5万人以上、業者数は1万8000社以上に及ぶ。欧米系やインド系バイヤーの姿が目立つ、極めてインターナショナルな空間だ。このような問屋街は、さまざまな商品分野に存在している。これらの問屋街も時代に合わせ、オンライン化を進めた。柯橋では「網上軽紡城」というサイトで、簡単に発注と決済ができるようになった。これまでのように、信頼できる相手かどうか、いちいち見定める必要はなくなったのである。
Q2 それでは人脈はもう必要ない?
完全にそうとはいえない。確かに現物商品の取引リスクは、B2Bネット通販の発達により、大きく軽減された。しかし、在庫リスクを伴う別注や、大量の国内取引に発展した場合、信用は相変わらず頭の痛い問題だ。日本のように、中小企業同士を結ぶ、商社による与信管理もない。こういうとき、やはり人脈は、大きな要素になる。
Q3 具体的なケースは?
例えば、日系のN製粉は、中国工場で、てんぷら粉をはじめ、中国市場では希少な差別化小麦粉を生産している。国内戦略は、各省、各大都市の1位または2位の大手ベーカリーチェーンへの販売だ。手作り高級パンの市場は拡大を続けていて、買い手は引きも切らない。問題は与信管理が追いつかないことである。回収リスクを考えなければ、売上げは、もっと大きく伸ばせるという。
一方、仕入れにおいても人脈は必須だ。同社では高品質な商品生産のために、オーストラリア産、北米産の輸入小麦が必要だ。しかし、これには割当てがあり、許可を受けた中国商社しか扱えない。したがって、売上げ拡大には、中国商社から安定供給を受けねばならない。日常的に情報交換を行い、不測の事態に備えておく。相手の人脈に連なっておくのである。
参考
https://www.toutiao.com/a6707104274599379467/
http://www.china-hzgec.gov.cn/compreservice/serviceindex.shtml