Wechat Pay(微信支付)大航海時代へ出帆!人民元の国際化、一帯一路政策の先兵に?
12月中旬、中国メディア(環球時報)はQRコードの開発者・デンソーウェーブの原昌宏氏へのインタビューを行った。新華社を含む多くのメディアに転載され、話題となった。強調されていたのは、中国でのQRコード決済の発展は、開発者の想像をはるかに超えていた、という点だ。そしてすでに中国国内では伸び悩み、海外利用の拡大段階に至ったという。具体的にはどう動いているのだろうか。Wechat Payを中心に見て行こう
GDPの9%に関与?
モバイル決済市場は、アリババのAlipay(支付宝)、テンセントのWechat Pay(微信支付)が92%のシェアを握る絶対王者だ。
2020年1月上旬、テンセント は「碼上(コード)経済影響力報告」を発表し、初めてWechat Pay等コード決済の形成する経済、社会的影響力を分析した。報告はそのコード経済規模を8兆5800億元(135兆円)と算出している。
また2018年にWechatが 間接的に創造した“経済効能”は1兆3600億元(21兆4000億元)、デジタル経済規模の26%、GDPの9%に達したという。恐ろしい成長エンジンなのだ。
すでに国内経済は席巻した。そしてコード経済、次の成長エンジンは、越境Eコマース熱、海外旅行、出国留学生増加、の“三頭立て馬車”になるという。
1人当たり5500元(8.6万円)の消費額
中国旅游研究院の「2018年中国游出境游大数居報告」によれば、2018年、中国人が、境外(海外)で消費した金額は1200億ドルに達した。旅行者1人当たり5500元(8万6400円)に上る。
最もWechat Payの利用が多い海外の都市トップ5は、ソウル、大阪、済州島、バンコク、シンガポールの順だった。購買意欲の強い中国人観光客は、支払い習慣まで国外へ持ちだした。各国の商店が、すばやくWechat Payのシステムを装備したからである。
ユーザー11億を誇るWechatは、海外でも国民的アプリの座を維持するつもりだが、そのカギは、いかに海外利用店舗を増やせるかにかかる。
2019年Wechat Payの海外進出
そのための活動は順調に見える。2019年は以下の通り
1 世界提携パートナー大会開催-1600の提携パートナーが香港に集結。
2 欧州サービス企業大会開催-初の“成長計画”を策定。
3 ロンドン・ビジネススクールの公開講座に取り上げられる。
4 アムステルダム・スキポール空港がWechat Payスマート空港に。
5 海外旅行者用のクーポン、世界中で使用可能に。
6 日本の阪急百貨店、海外初の“スマート旗艦百貨店”に。
7 LBS年度最優秀賞
最新データによれば、こうした努力の結果、利用可能海外商店数は、前年比235%、サービスを下支えする金融機関等、海外の提携組織機構は35%増加した。60の国と地域へ“合法的”に進出し、16の通貨をサポートしている。決済数は76%増、決済人数は70%増加した。
まとめ
第三国で中国発モバイル決済を浸透させるには、現地銀行の資金管理を棄損してはならない。現地納税や外為による損失発生などである。これを食い止めるには、現地政府の強力な管理体制が必要だ。そのため問題のあるベトナムやネパールでの使用は、禁止されている。ただし、発展途上国の不完全な信用体制は、大きな“出航”のチャンスでもある。
中国互聯網(インターネット)金融協会は、2020年の重点政策として、人民元越境モバイル決済の研究を挙げている。また中国支付清算協会も、国外機構との連携強化、情報共有を強調した。
モバイル決済の海外進出は、人民元の国際化、一帯一路等の国策にも沿っている。国のサポート受けつつ、Wechat Payの国際化は、さらに加速しそうである。