発展する中国の工業B2B取引サイト⑤電子材料、中国のシリコンバレー、深圳の企業が活躍
中国で電子材料といえば、深圳市と北京・中関村の2カ所をイメージするだろう。ともに中国のシリコンバレーと呼ばれるが、検索エンジンのヒット数では深圳市が圧倒している。同市の人口は1979年、経済特区に指定されたとき31万人だった。それが2016年末の戸籍人口は1191万人、ところが実際の2017年11月の常住人口は、2500万を超えたとみられる。世界史上、例を見ない急成長を遂げたのである。
その爆発的な化学反応の中から、テンセント、ファーウエイ、中国平安、恒大集団、ドローン世界一のDJIなど、スター企業が続々と誕生した。B2Bネット通販もそれに寄り添って発展した。いくつか見ていこう。
華強電子網
深圳華強集団は1979年、改革開放政策のスタートと同時に設立された、老舗の投資グループである。ハイテク産業への投資を主導し、深圳市の爆発的成長を担ってきた。2019年中国サービス企業500強では、219位にランキングされている。
華強電子網は2002年、その華強集団が、中国電子信息産業発展研究院、深圳市電子商会などの機関と共同で設立した、深圳市華強電子交易網絡有限公司が運営を行っている。電子材料の情報交換を基盤として、その取引活性化を目指す、B2B情報オープン型プラットフォームである。設立以来、華強集団の重要部分を担っている。
バイヤー、サプライヤー、貿易商、メーカーなどすべてのチェ―ン参加者に、電子ビジネスサービスを提供する最強、最善の電子材料取引プラットフォームを目指すという。
公式サイトをみると、新興サイトに多い、理想を掲げたスローガンはない。20年の実績を背景とした、自信を感じさせる。それに関連サイトの多さが目を引き、全体として、非常に精緻な作りとなっているのがわかる。
科通芯城
科通芯城は、科通通信技術(深圳)有限公司が2010年に設立した、中小企業向けの電子材料B2Bプラットフォームである。
科通通信は1995年設立の、科学、工業、貿易、一体型の国際企業である。2004年、米国ナスダック市場へ上場した。科通芯城もまた2014年、香港市場へ上場している。B2Bプラットフォームの上場企業は珍しい。
電子材料の伝統的の商談スタイルでは、産地の分散によるによる調達コストが、中小企業には重かった。また品質でも、良品と不良品が混在していた。そのため科通芯城では、産品とその品質管理、物流、倉庫保管、技術サポートを、一環システムとして行う。
公式サイトは、トップページからいきなり取引きが始まっている。余分な文言はない。日本サプライヤーには、パナソニック、ニチコン、TDK、スガツネ工業、京セラ、基板洗浄機のNAMIKIの名が見える。ほとんど欧米、日本、韓・台で占められ、国産ブランドは3つしかない。
新勢力の台頭
これらシリコンバレー・深圳を本拠とする老舗に対し、新しいB2Bプラットフォームも登場している。その1つが上海で創業した「芯片超人」である。2017年2月のエンジェルラウンド融資から事業を本格化させ、その翌年には早くも、中国B2B行業100強ランキングの85位に入選している。
公式サイトには、中国半導体を掘り起こし、チップを売ろう、というスローガンを掲げている。そして、方案売買、国産替換、借展出海、供応鍵配套と続いている。
1 方案売買とは、中小のアイデアを実現する。
2 国産替換とは、国産の半導体に切り替える。
3 借展出海とは、海外展覧会に参加し、驚異的な成果を得る。
4 供応鍵配套とは、より優れたチェーンを形成する。
といった意味である。2と3が中心テーマで、国産半導体を、世界に広めよう、という気合を込めている。外国ブランドを国内に流通させること得意とするこれまでのB2Bサイトには、見られない切り口だ。そして同社はアリババと提携関係を結んだ。アリババの越境B2Bの戦略に添うものだからだろう。中国国産半導体の将来は、こうした新しいB2Bプラットフォームにかかっているかも知れない。