これだけは知っておきたい“中国市場への心構え”
世界の一大市場である中国マーケットへの進出を考えるとき、大切となるのがマーケットリサーチはもちろんのことですが、それだけではありません。中国という日本市場との異質性・複雑性に対処するために知っておかなければならない事があります。中国ビジネスにおいて知っておきたい幾つかのポイントを上げてみました。
政府の関与の大きさ
中国では政府の企業への関与が大きく、そのようなことから政府関係者へのコネが幅をきかせて賄賂のやりとりが当たり前の社会と言われてきました。今の習近平政権は賄賂だけでなく、高級宴会をも禁止しています。習近平政権は賄賂漬けになった高級官僚などを逮捕してきましたが、最近では行き過ぎて経済が低迷し始めているらしいという声も聞こえており、高級宴会禁止令が出てからはビジネスの裏情報が入手しづらくなったというのも事実のようです。中国における宴会や晩餐会は単に遊興目的だけにあるのではありません。お互いの距離感を縮めビジネスの活性化に役立てている面があるのです。日本とは異なるこのような世界において、ビジネスで相手企業などとの「事の成り行き」で万が一にも政府関係者等との接触が生じた場合には、ただの事務的なこと意外では充分な配慮が必要です。
人間関係・人的ネットワークの重要性
中国ビジネスにおいては、中国文化を背景に人間関係が極めて大きな役割を果たします。極端に言えば「身内に対しては絶対的な信義の下に行動するが、それ以外の人に対しては兵法の策略的な行動が採られる」というのです。したがって、企業間取引においても「意思決定者と人間関係を構築しないと商談は難しい」ことを意味します。顧客間の関係も密接ですので、特にBtoCマーケティングにおいてはある顧客に信頼を得れば、顧客間の情報の共有によって別の客からの注文が発生する可能性も高いのです。同じ分野でも他にない製品を販売していたところ、顧客間に口コミでその情報が広がって向こうから注文が舞い込んできたという経験をしているところも多いのが事実で、広告よりも口コミの影響力が大きいのです。そんなことから、“KOL”とか“インフルエンサー”と呼ばれる「影響力を及ぼす人」を起用したマーケティング手法が中国人向けのプロモーションには欠かせないものの1つにもなっています。このように中国では人間関係がマーケティングにおいてもあらゆる面に影響を及ぼします。
晩餐会は商談の場ではない
前述で人間関係の重要性が理解できたことと思いますが、先にも述べたように中国における宴会や晩餐会は「お互いの距離感を縮めビジネスの活性化に役立てる」ためでもあるのです。ある欧米企業が商談のために中国を訪れましたが、到着したその日に夕食会の席が設けられていました。欧米企業の人達はその夕食会で商談を纏めようと準備を整えて臨みましたが、中国人は終始冗談を言い合って笑顔を繰り返すばかりで、そのままその夕食会は終わってしまいました。翌日に商談の席が用意されていたのですが欧米企業の人達は知る由も無く、商談に失敗したものと思い込んで帰国の途へついてしまったのです。これは中国の習慣を知らずに臨んだことによりコミュニケーションギャップが生じた一例です。中国ではビジネスパートナーとの会食は主にざっくばらんに会話をしながらお互いの意思を確認して親睦を深めることが大事なのです。
合理的で現実主義
先にも述べましたが中国人は「身内に対しては絶対的な信義の下に行動しますが、それ以外の人に対しては兵法の策略的な行動が採られる」と言われ、実際に付き合ってみると「情に厚く身内と他人とでは接し方に雲泥の差があり、良いか悪いかをハッキリと主張して曲げることが無い」ということが分かるはずです。そしてビジネス目線で視ると「商売っ気が強くて計算高く、合理的で現実主義」ということが分かります。日本人と比較すればビジネスの分野では「タフな交渉に強い中国」と「交渉が苦手な日本」という形で現れてきます。非常に義理堅い面もあり親切なのですが、あくまでも「GIVE and TAKE」を貫く気質であり、「YES・NO」をハッキリさせなければなりません。商談などにおいては日本特有の曖昧な表現は禁物です。相手の都合の良いように決め付けられて、言い出したこちらが不利な状況に追い込まれてしまうことになりかねません。「GIVE and TAKE」を明確にして良い関係を結べれば大成功といえます。中国人の気質を理解しているか否かでビジネス面でも大きく影響してきます。
品質に対する観念の違い
「日本人・日本企業」と「中国人・中国企業」では品質に対する観念の違いがあり、日本企業が得意とする高機能・高品質製品への需要は相対的に少なく、代わりに低価格志向が強くて日本メーカーの製品・サービスと中国の需要との間にミスマッチが発生することもあります。日本企業なら当然果たす品質責任を企業が果たさないことは、その分低価格で販売することをも意味するのです。すなわち中国では安ければそれなりの品質なのが当り前で、日本の製品は安いものでも品質が保たれているため中国人にとって人気があるのです。高機能・高品質だから高くても売れるというわけではありません、「この機能は要らないからもっと安くしろ」と言うようなことも起こります。ですから日本では比較的低機能の製品でも中国では値段重視と品質の良さで売れ筋となるのです。また、その反面で「新しい物好き」「ブランド志向」という面もあるので高機能製品はアピールのし方がポイントになります。
反日記念日は要注意
日本人にとっては何気ない日付であっても中国の人にとっては「日本への恨み」が強くなる日があるのです。それは「過去の日本とのトラブルに関わる日付」で、つまり「反日記念日」です。過去、実際に日本の大手家電メーカーが【九一八記念日】である9月18日を新型デジカメの発売日にしたところ大きな不買運動に発展した例もあり、以下のような「反日記念日」にはマーケティングイベントなど特別なことは控えなければなりません。
・5月4日【五四運動】学生運動から全国に広がった抗日、反帝国主義を掲げる運動。
・5月9日【国辱の日】日本の21か条の要求に合意した日。
・5月30日【530記念日】上海で帝国主義反対のデモを行った日。
・7月7日【七七記念日】日中両軍が交戦し日中戦争が勃発した日。
・8月15日【抗日戦争勝利の日】抗日戦争が終了した日(日本の終戦記念日)。
・9月3日【抗日戦争勝利記念日】中日戦争の降伏文書に調印した日。
・9月18日【九一八記念日】満州事変の発端、日本が中国侵略を開始した日。
・12月9日【抗日デモ記念日】中国共産党の指導で侵略戦争に対するデモを行った日。
・12月13日【南京大虐殺の日】南京市を占領した際に一般市民までを殺害したとされる事件。
これらの日付は中国人にとっては特別な日であることを忘れてはなりません。日本企業はこのことを踏まえて中国企業・中国人消費者と接することが望まれます。
以上のように中国の国民性・精神風土・文化といったことを理解しておくことが大切なのですが一言で言うと「日本式は通用しない」ということです。日本で培ってきたやり方が必ずしも中国では通用しないということを肝に銘じておかなければなりません。
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