新型肺炎⑤京東の戦い、武漢への無料輸送や無人配送、物流イノベーションの契機となるか?
中国経済は、新型肺炎との戦い(抗撃疫情)で混乱に陥っている。人々はネット通販を使って生活必需品の確保に走り、そのためにさまざまな影響が出た。ネット通販2位・京東は、春節のビッグデータを発表、また今後の取組みについて、新しい試みを含め、次々と情報発信を始めている。京東の戦いを概観してみよう。
ネット通販だよりの“宅経済”
現代中国において、食料入手の方法がタイトになっている。人々は外出を控える“宅経済”に入った。飲食店はほぼクローズ、一般商店も休業が多い。武漢など防疫体制の厳しい地区では、生活必需品の95%ネット通販に頼っているという。
2019年の春節、京東ビッグデータによれば、米、麺類、食用油など基本生活用品の通販消費額は、前年比1.54倍に達した。米は5.4倍、麺類は4.7倍、カップ麺等は3.5倍、食用油1.43倍、乳製品、水産品は前年並みだった。旧正月2日(初二=1月26日)がピークで、この日の発注量は前年の15倍に達し、その後徐々に落ち着いた。
除夕から初三(1月24日~27日)までの4日間、京東の生鮮売上げは3.7倍、4000トンを超えた。野菜は9倍、肉・卵7.5倍、冷凍餃子・点心等も7倍にハネ上った。
京東物流の戦い
京東は、義援金1000万元(1億6000万円)を紅十字会(赤十字)に寄付した他、多くの救援物資を輸送中だ。
京東の物流には定評がある。独立の物流会社として、他社配送も積極的に請け負っている。顧客評価も高い。今回も他社寄贈の救援物資を委託され、各地の配送ステーションは、無休の非常体制となった。従業員は「怖くないと言うのは不可能だが。」と皆リスクを承知で頑張っているという。
武漢への輸送は救援物資“特別通道”とし、地方政府、公益組織、医療機械生産企業等の配送を無料とした。これはトラック、鉄道、航空便を問わない。1月26日には、北京、上海、青島から、マスク、防護服、消毒液、空気清浄機、医薬品約40トンを、鉄道で武漢に送った。鉄道では毎日20トンの救援物資輸送を想定している。
無人配送
感染リスクを避けるため、“無接触配送”需要が各地で高まった。これに対し、配送ロボット、ドローン、スマート物流倉庫は極めて有効だ。宅配便業界にとって最大の課題“ラスト100メートル”克服に挑むチャンスでもある。
京東物流の無人車担当のエンジニアは、武漢で配送ロボットを使用し、地図情報の収集と運用テストを行っている。そして間もなくシュミレーションを終え、本格運用へ移る。各地配送ステーションの配送ロボットを、武漢に集中させ、宅配を行う予定だ。終息後の武漢の宅配は、配送ロボットの走り回る姿が“常態”となっているかも知れない。
京東は武漢以外の、貴陽や呼和浩特等にあるスマート物流ステーションでも正常に、新型肺炎救援物資の配送に当たっている。河北省、陝西省、江蘇省の農村地区からはドローンを飛ばし、封鎖地区への物流サービスを提供している。
まとめ
ネット通販の発注量は高水準が続き、京東スマート物流ステーションへの負荷は高まっている。それを支えるのはAGV(Automated guided vehicle=無人搬送車)で、こちらはすでに大きな戦力となっている。次のステージこそラスト100メートルのお届けロボットなのである。
京東の新型肺炎支援体制は、日々大掛かりになっている。非常事態対応の有形、無形の財産を蓄積中だ。次代に向けた、大きなブレークスルーを準備している、と考えてもよいだろう。武漢の配送ロボットに注目である。