中国向けマーケティング、広告編①、BATTのプラットフォーム、ネット広告のスタンダードを作ったバイドゥ
中国向けマーケティング、広告編のテーマは、日本企業が中国にネット広告を出稿しようとするとき、どのような手段とブランドがあるのか。それぞれのメリットや、今後有力な媒体はどれかを探ることである。2019年上半期、ネット広告の出稿は、おなじみBATT(バイドゥ、アリババ、テンセント、バイトダンス)4社で67%を占めていた。まず彼らのプラットフォームから分析してみよう。
バイドゥ(百度)
百度の創業者・李彦宏は、ニューヨーク州立大学で修士課程を修めた後も、米国にとどまりIT界で働いていた。1999年シリコンバレーにいたとき、中国語版検索エンジンの巨大な可能性に気付く。翌年、中国に戻った李は百度を創業、目論見通り、世界最大の中国語検索エンジンを築くことに成功した。2018年7月~2019年7月までの検索シェアは、バイドゥ76.4%、捜狗11.35%、神馬4.71%、360、2.85%と、今もダントツである。
百度の2018年売上は1023億元、前年比28%増だった。そのうち広告の売上げは、819億元、12%増と全体の増加率を下回っている。2019年上半期の広告売上げは368億9400万元、アリババに次ぐ2位を保っている。しかし、若干の前年割れとなった。他社は大きく伸ばしているので、これは気がかりな点である。
今も広告の売上が80%を占めている。しかし2014年は99%であり、元々広告に依存したビジネスモデルだった。百度雲(クラウドコンピューティング)、百度小度(スマートスピーカー)など他部門の収入が増加し、今後も広告の比重は下降していくとみられる。
百度百通
それでも広告収入が死活的に重要な収入には間違いない。そのため広告主の便宜を図るため「百度百通」というプラットフォームを公開している。スマホ操作で広告の設計から出稿、データ解析、支払いまでワンセットで可能だ。
セールスポイントとして、1 広告効果の高さ、2 グループメディアに連携して掲載、3テンプレートなど豊富な広告資源を利用できる。4 プロによる設計やデータ解析ができる、の4点を挙げている。
百通を利用した広告クリエーターとして、天猫(ネット通販)、去哪児、携程(以上旅行)、麦包包(婦人バッグ)、愛奇芸(動画視聴)の名を挙げている。アリババそのものといえる天猫の入っているのが面白い。当初は同業他社も百度を頼っていたのである。
広告成功事例として、北汽現代(北京汽車とヒュンダイ合弁)、サムスン電子の韓国系2強や、唯品会、58同城、蘇寧易購、聚美優品など、有力な生活サービス企業を挙げている。
百度小程序(ミニプログラム)とまとめ
百度はネット広告作りのプラットフォームとしても、歴史的に重要な役割を果たしていた。広告主は、まず検索結果との連動を目指した。高い効果があり、ネット広告そのものだったといってよい。しかし時代は変わってきた。
現在、アリババ、テンセントは、プラットフォームにミニプログラムを組み込み、スマホにおける基本OS化を指向している。すべてを網羅するスーパーアプリである。
百度もこの市場へ参入し、百度ミニプログラムは2019年7月には、デイリーアクティブユーザー数が2億を突破した。検索、情報をポータルとし、百家号(創作者200万、政府機構含む)とミニプログラムで、内容豊富なサービス体系の構築を目指す。
百度ミニプログラムの参加者数は、271業種で15万を突破、月間アクティブユーザーは2億7000万に達した。創業者、李彦宏は、これを武器に、空前の繁栄と、強大なモバイル生態、を目指すと表明している。それが本当に実現すれば、ネット広告業界での地位は安泰となるだろう。