仮想通貨「ビットコイン」をめぐる中国の動向
世界中で約800種類もある「仮想通貨」の代表格である「ビットコイン」ですが、2016年までは中国がビットコイン取引量のほとんど(約9割)を占めていました。しかし今、中国ではビットコインをめぐる動きが激しさを増しています。
目次
仮想通貨ビットコインとは
世界中で約800種類あるインターネット上のお金「仮想通貨」の代表格。取引履歴を複数のコンピューターが記録するブロックチェーン(分散台帳)という仕組みで管理されます。台帳の新しいページをつくり、取引記録を取りまとめるのがマイナー(採掘者)で、BCCを主導した“ヴィアBTC”は中国のマイナー大手です。日本では4月に改正資金決済法が施行され、仮想通貨が決済手段として認定されました。安い手数料で決済や国際送金ができる点も評価され、取引する企業や個人が急増しています。ビットコインは発行量に上限があるため、購入者が多いほど価格が上がりやすく、ビットコイン価格は年初から約3倍に上昇して時価総額は5兆円前後まで膨らんでいます。
今までの経緯
中国ではマネーロンダリング対策の面から一時は仮想通貨取引に対する規制ガイドラインが設けられていました、中華人民銀行(People Bank of China)がビットコインへの過熱した投資によって人民元の価値を心配してレバレッジ取引と信用取引を禁止するという規制を行い、中国政府によるビットコイン規制も更に厳しいものになって、これによって引き起こされた暴落は“PBoCショック”と呼ばれています。しかしその後にマネーロンダリング対策がある程度完了したためビットコイン規制が解除されて、それに伴いビットコインは一気に価格上昇となりました。ビットコイン市場は日本でもある程度開拓されましたが最も取引量が多いのは中国でした、中国のビットコイン取引高はちょっと前までは世界全体の9割前後を占めるほどの巨大市場でしたがビットコインの三大取引所などと会談を行い、結果的に取引手数料の徴収や一部の業務を停止する姿勢を見せたため2017年に入ると加速度的に市場がしぼみました。2015年以降はビットコイン取引増加に拍車がかかった中国市場ですが2017年に入ってこのような急転直下な事態が起きてしまったことで一時期世界中の市場が変わってしまいました。そのビットコインを取り巻く環境変化の一つとして中国人民銀行が独自のビットコインを作成中という話も囁かれていました、「ビットコインなど政府の管理に服しない仮想通貨は受け入れられない。ブームが下火の今のうちに自分たちで作り、流通させ、国際的にも主導権を握ろう」という狙いではないかとも言われていました。その一方で当局は仮想通貨の取引増加が違法な資金洗浄や金融詐欺、資金の海外流出につながるものとして警戒を強めていたのです。
ビットコイン分裂、新通貨「BCC」誕生
8月2日ビットコインが分裂し、新通貨「ビットコインキャッシュ(BCC)」が誕生しました。ビットコインの取引急増に対する解決策がまとまらず、中国の一部事業者が新通貨をつくったのです。ビットコインは最近の仮想通貨ブームで取引が急増し、取引確定に時間がかかっていました。処理容量引き上げの手法を巡り、複数の業者同士が対立し、分裂を主導した中国の事業者「ヴィアBTC」が新通貨BCCをつくる構想を表明していたのです。分裂によりビットコインと同量のBCCが誕生し、国内の各取引所は原則としてビットコインの保有量に応じて利用者にBCCを無償で付与するといい、2つのコインを合わせた価値は理論上では分裂前のビットコイン価格と同水準ですが、以後は需要などで価格が変化します。ビットコインに対抗する形で生まれたBCCですが、海外送金や物販などの決済手段としては引き続きビットコインが主流になるとの見方が大半で、分裂で2つの規格が併存しますが、決済の中心は引き続きビットコインの見通しです。BCCの誕生でビットコイン分裂騒動はいったん収束に向かいますが、ビットコインは11月に処理容量の引き上げを予定しており、その手法を巡って騒動が再燃する可能性が残ります。
仮想通貨による資金調達禁止
中国人民銀行は7017年9月4日、独自の仮想通貨を発行して資金調達する「ICO(新規仮想通貨公開)」について即日禁止すると発表しました。中国当局は仮想通貨に対する法整備が追い付いていない現状の中で仮想通貨の「ビットコイン」が自国を中心に急速に広がったことに危惧を抱いているのです。直接ビットコインの取引禁止までは踏み込めない状況でもあり、仮想通貨が新たに登場する事態を防ぐための措置を講じたものです。ICOはIPO(新規株式公開)よりも容易に資金調達ができるため、日本でも活用に向けた動きが出始めていますが、先行する各国では詐欺などの被害も出ており、中国当局は「金融秩序を著しく乱している」と判断しICOの禁止に踏み込んだものと見られます。
中国の3大取引所すべてが閉鎖
その後、ビットコインの取締りを巡って9月14日に「BTC China」が9月30日で取引停止を発表し、翌日にはインターネット金融監督当局がビットコイン取引所責任者らを集めて取引停止の期日を決めて発表するように求めたことにより、夜になって「OKCoin」と「Huobi」が10月30日に業務を停止すると発表しました。中国の3大取引所すべてが閉鎖を決めたのです。これは中国政府が取引停止を求める動きを強めたからで、こうした事態を受けてビットコインの価格(単位はBTC)は下落が続き、9月1日時点ではまだ仮想通貨の時価総額のランキングで1位:ビットコイン、2位:イーサリアム、3位:ビットコインキャッシュ、4位:リップル、5位:ライトコインとなっておりましたが、ビットコインは9月2日の約5,000ドルから2週間足らずで4割も落ち込んだ形になりました。
ビットコイン取引の取締り範囲拡大
9月19日、「中国当局は3大取引所の措置に加え、海外取引所へのアクセスを封鎖することを決定した」と報じられ、また別メディアでは「米国Coinbase、および香港Bitfinexなどへのアクセスを金盾(グレート・ファイアウォール)で禁じる」との情報も報じられています。専門家によれば中国政府のビットコイン取り締まりはマイニング活動やPeer to Peer取引までにも及ぶ可能性があるそうで、これまで「WeChat」などのメッセージング・プラットフォームを通じて行われてきたPeer to Peer取引は「やばい」ということで、エンクリプション(暗号化)された「Telegram」というメッセージング・プラットフォームへ移行しはじめているそうです。「中国国内よりも流動性の高い国外のチャネルを閉じられたとすれば最も損失を被るのはマイナー(採掘者)だ」、「マイナーは採掘によって得たコインを換金する手段を失った」と指摘する声もあります。主要取引所は「エクスチェンジ業務以外のサービスへの影響はない」と声明の中で述べていますが、今後はマイニングの完全停止もありうると捉えるべきかも知れません。
ビットコイン取引所代表者を出国禁止
中国政府は仮想通貨取引所の捜査の一貫として代表者の出国を禁止しています。ICOの実施と仮想通貨売買を全面禁止して捜査が終了するまでは関係者は政府の監視下に置かれているのです。中国政府の捜査状況は未だ不透明で、取引所によって取引停止時期が異なる理由なども判明していません。また今回の取引所の営業停止が一時的であるのか、あるいは免許制にして再開するのかも不明です。またOTC(店頭販売取引)や個人間のPeer to Peer取引に対しても規制が行われるのではないかとの憶測も流れていますが、現状において中国政府は公式見解としてICOや取引所以外の仮想通貨関連事業に対する声明は出しておりません。中国は元々、資本規制や社会統制のために多くのものを禁止してきた経緯もあり、今回の中国政府の動きには仮想通貨によるキャピタルフライトなどの国外資金流出を防ぐ狙いがあるものと思われます。
昨年まではビットコイン取引量において中国が世界一となっていましたが、政府や中央銀行による規制強化によって取引量が大幅に減少し、仮想通貨情報サイト「CryptoCompare」8月時点のデータでは日本円がトップで2位が米ドルで中国人民元は3位に転落しています。今回の中国の規制動向後、ビットコインの取引通貨シェアはそれ以前の人民元に代わって日本円、米ドル、韓国ウォンなどが存在感を強めている状態で、今後も中国の規制動向が注目されます。
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