高齢化で先行する日本、福祉介護サービスで東アジアをリード。富裕層向けを中心に中国進出を強める。
東アジアでは日本、中国、韓国、いずれも少子高齢化の道をたどっている。周知のように、日本は最も先行している。福祉、介護サービス産業規模は2025年に20兆円になるとみられ、数少ない鉄板の成長市場である。人材育成にも熱心で、異業種からの参入も相次ぐ活況である。IT関連では、さっぱりの日本だが、この分野にはさまざまアイデアが集まっている。東アジアのリーダーとして、中国市場をみていこう。
中国高齢者政策の内部矛盾
2018年、日本の65歳以上の高齢者は3558万人、総人口の1億2644万の28.1%を占めた。(高齢社会白書2019年)そして2050年には37.7%(総人口1億192万人、65歳以上3841万人)と推計されている。高齢者比率は上昇するが、総人口減少のため、絶対数はそれほど増えない。
中国は、2017年末で60歳以上が2億4090万人、人口の17.3%である。それが2025年には3億人、今世紀半ばには5億人に達し、総人口の35%を占めるという。その数の多さに圧倒される。
中国メディアは現在を、超高齢社会の“前夜”と称している。そして養老産業(福祉・介護サービス)は、重大な内部矛盾に直面し、投資、新規創業を通じた“不断の刷新”が必要と指摘している。
内部矛盾とは、供給サービスの圧倒的な不足と、公的部門の不備である。中国は現在、少なくとも介護サービス人員1000万人を必要としているが、、実際には100万人不足している。訪問看護サービス、コミュニティによる見守りも、それぞれ45%、30%程度しか充足されていない。伝統的モデルの改変、運営主体の構成見直しを、スピード感を持って進めねばならない。
伝統モデル改革の動き
要するに、大したサービスを提供できていないのである。一族の結束による“孝行文化”と、年金支給額のアップによって、破綻を防いでいる。これが伝統的モデルである。中央政府は2016年10月「養老サービス市場の全面開放とサービス品質に関する若干の意見」を発表し、改革を促した。以後、各地方政府から、具体的な政策が打ち出されている。江西省の「養老服務体系建設発展3年行動計画」や広西壮族自治区・南寧市の「全国養老サービス業改革モデル都市計画」などである。
さらに企業も動き出した。一例は以下。
万科(不動産)…北京随園養老中心を建設。
越秀(不動産)…広州で2万3500平米の物件を借り、養老と医療サービスに進出。
北京人寿(保険)…養老院経営の「金手杖」と提携し“保険+養老”プラットフォーム。
君康人寿(保険)…養老院経営の「日医居家」と提携し高級養老サービスの新標準確立。
不動産と保険の大企業が進出している。保険会社は特に熱心で、大手による養老施設建設へ投資は、累計1000億元を超えている。
日系介護サービスの中国進出
2017年「中日医養結合国際学術交流論壇」が開催され、以後、日中間の交流は密度を増した。中国の医療、養老関係の会合に、日本の関係者が、頻繁に出席している。
介護事業大手リエイは2011年に上海進出し、2017年には四川省・成都に合弁で「礼愛老年介護中心」をオープンさせた。洋風建築3000平米に76床しかない、中国西南地区初の高級養老施設である。
また医療介護サービスの湖山医療福祉グループは2015年、上海の不動産会社、由由集団と合弁会社を設立した。介護施設や在宅サービスの開発、運営業務委託を行い、介護人材の育成でも援助する。
まとめ
日系合弁会社は、まず富裕層向けビジネスからスタートしているようだ。中国の不動産大手や、保険大手もどうやらその傾向である。その外側には、中産層という巨大な成長空間が広がっている。日本の業界関係者は、製品、サービス、システムを問わず、中国市場へのアクセスをめざずべきでだろう。日中を結ぶ、専門的B2Bマッチングサイトの登場が望まれる。