中国の就職戦線は大幅に収縮、就職活動はオンライン化へ、新型肺炎が若者の起業を強力にプッシュ?
新型肺炎は、中国の新卒就業市場にどのような影響を与えているのだろうか。2020年の就業創業事情について、調査機関iiMediaがレポートをまとめた。その「2020年全球(世界)経済環境対中国就業影響総体分析」を中心に、今後の情勢を占ってみよう。
就業者は減少、卒業者は増加
2015年以来、中国の就業者増加率は減少を続け、2018年からはマイナスに転じた。就業者総数は2017年の7億7640万人がピークだった。2018年、7億7586万人0.07%減、2019年7億7471万人、0.15%減である。
2019年のCIER指数(中国就業景気指数)は、2019年第一四半期1.68、第二1.89、第三1.94、第四2.18と、昨年の求人状況はまずまずだった。
*CIER指数=市場招聘求人数/市場求職申請人数、日本の有効求人倍率に近い。
2020年の大学卒業生(7月卒業)は874万、前年比4.6%増、史上最多だ。中国研究生考試(大学院修士試験)受験者は341万人、前年比17.6%増だった。しかし260万人以上が不合格となり、彼らは、また仕切り直しである。2020年は、求職圧力が高まっていた。そこへ新型肺炎である。
新型肺炎の影響で縮小
中国政府は、新型肺炎の防疫体制入りと同時に、就業、創業政策を制定した。それにより、起業家養成機関、及び創業間もない企業を、再開させ、新卒者や起業家たちの活力を保持する。
しかし、正常な招聘活動はできていない。求人大手「智聯招聘」校園事業部は2019年秋季、8000回にも上るオフライン就職説明会を実施した。それが春季には1つも開かれていない。オンライン求人大手「BOSS直聘」の「2020春招就業市場追跡報告」によれば、春節明け3週間の段階で、就業市場全体は34%縮小、新卒市場に限れば44%縮小、さらに中小企業の新卒採用意欲は52%縮小した。
企業側にも、影響は拡大している。人材の質が不揃い、養成コスト高い、といった従来からの悩みに、合理的な報酬の提示が難しくなった(34.9%)移動の規制で、面接範囲が限られる(27.3%)が加わった。
オンライン就活へ
そしてオンラインでの就職活動が活気付いている。求職者たちの見方は
面接集中を免れ、企業比較に便利 55.7%
選択肢が拡がる 45.5%
ネットサービス不完全 30.6%
就職活動効率が良い 28.1%
第一印象に左右されない 20.7%
懸念は
求人職位は信頼できるか 50.8%
待遇の実際とのギャップ 47.5%
求人情報の信ぴょう性 41.4%
個人情報漏洩 36.8%
情報を視認できない 22.7%
等を挙げている。
新型肺炎、起業の方向性示す
企業求人は大きく減少した。しかし、防疫体制下における“宅経済化”の進行は、起業の方向性を示した。
・巨大都市から中小都市まで、モバイルネットの消費時間が急増した。インターネット業界が最大の焦点。
・防疫体制は、ネット業界の専門分化を“強制”した。専門性が高く、利用頻度の低かった業態の価値が急に高まった。オンライン教育、オンライン医療、テレワークなど。
・娯楽プラットフォームは、豊富な内容でオンライン消費をけん引した。長短のライブ放送は莫大なユーザーを蓄積した。ゲーム業界は歴史的なチャンスに遭遇している。
・新型肺炎は、免疫力の重要性を認識させた。漢方薬や、日常の保健衛生にチャンスがある。これらに付随する中小企業金融にも、大きな発展が見込まれる。
まとめ
新型肺炎は、2020年の就職戦線を狭め、起業をやるしかないと、若者に迫ったともいえる。2003年のSARS騒動を契機として、当時中小企業に過ぎなかったアリババとテンセントは、大成功への道を歩みはじめた。今回の新型肺炎は、起業の方向性も示してもいる。今年の創業環境に、大きなインパクトを与えた。終息後の創業市場に注目したい。