中国ライブコマース4つの考察 ~ブームの影で進行するもの~
今日は中国のメディアから「中国ライブコマース4つの考察」という記事を紹介します。
この記事で筆者は、今大ブームのライブコマースの現状と今後の方向性について、冷静な分析をしています。
目次
砂上の楼閣
ネットゲーム、共同購入、ライブ配信 、デリバリーにシェアエコノミー。企業は儲かるための突破口を求めて必死ですが、生き残れる企業は本当に少なく、その多くは実力も投資も不十分なため、中国のネット業界はまさに砂上の楼閣(さじょうのろうかく)であると、筆者は言っています。
米中貿易摩擦や、新型肺炎の世界的拡大という危機に直面し、アメリカに上場している中国企業の多くが上場廃止の準備を進めています。
こうした危機の影響で悪化した業績を立て直すべく、企業のCEOまでがライバーとして活動する動きも出てきました。中国オンライン旅行業者の最大手であるCtripのCEOや、大手食品グループ「娃哈哈」(ワハハ)創業者などがその一例で、出演したライブ配信を通じてかなりの好成績を挙げています。
KOL中心のフォロワーマーケティングと、プロ集団のチームプレー
ライブコマース運営モデルとして、筆者は2つの大きな勢力を取り上げています。一つは、KOLの強化を中心とするフォロワーマーケティング、もう一つはMCNなどのプロ集団によるチームプレー。この二つの勢力がお互いに影響しあっていて、今後の主流として予測しているのは、プロ集団による運営であり、しっかりしたコンテンツを制作できる一部のプロ集団だけが競争を勝ち抜くことができるとのこと。
ライブコマース、実は低い成約率
今やeコマースに欠かせない存在のライブ配信ですが、実情はというと、トップライバーのライブであっても、購入の段階までいき、なおかつ返品・返金処理が発生しない、つまり本当の意味での「取引成立」にまで至るのは、平均でわずか10%のコアなフォロワーのみ、という統計結果が出ているそうです。
消費者は複数の購入チャネルを持ち、商品ごとに切り替える
つまり、トップライバーであっても、克服できない要因があるというわけです。ここで筆者がポイントとして挙げているのが、消費者の心理です。消費者はそれぞれ、この商品を買うならここで、あれはまた別のアプリで、というように、商品ごとにプラットフォームの選択をしています。
消費者のそうした「マイルール」を変えるには、消費者心理の徹底的な研究が必要であり、スター、有名人というブランドに頼るだけのライブ運営では成功しない、そして、成果を出せる優秀なライバーだけが生き残る、と筆者は述べています。
MCNによる中堅KOL育成はコスト大、経営プレッシャーが増大
2019年後半からMCNの二極化が進みました。MCNというのはMulti Channel Network の略で、KOLのコンテンツや商品販売を、あちこちのプラットフォームで展開するので、このように呼ばれています。このKOLやMCNについては別動画「ポストコロナ時代のKOLビジネスモデル」でも解説していますので概要欄に貼っておきますので良ければみてください。話は戻りますが、ごく一部のトップを除くと、MCNもライバーも、利益を上げられるところは少ないのです。今やMCNは、中堅KOLの育成にしのぎを削っています。ただ、その育成コストは非常に高く、MCNの経営プレッシャーが増大しています。
筆者の描写から、その苦境が見えてきます。
例えば、業界の競争が激しく、人材の流動性が高い。ライバーが移籍して、投資した育成コストが水の泡になるというケース。
また、MCNもライバーも、実力以上の能力を誇大宣伝して、期待された成果を出せないというケースも散見されると言います。
関係者たちがこうした状況を明らかにしないのは、あまりにも多くの人の利益に関わることだからです。一旦実情が明らかになれば、産業チェーンの至る所で利益が落ち込み、多くの人が職を失うことになるからです。
MCNに残されている時間は、もう多くはないかもしれません。