2020年の中国小売業はSaaS時代へ、流通専門の最先端企業「慧策」ユニコーンへ成長か?
2019年、中国の社会消費品零售総額(小売総額)は、前年比8%増の41兆1649元億元(660兆円)だった。初めて40兆元を超え、経済成長への貢献率は76%に達した。2020年には米国を抜き、世界最大の消費市場になるかもしれない。しかし、小売業のデジタル化は、欧米など先進国市場に比べ、まだまだ後れを取っているという。逆に言えば、AI採用による改革の余地は大きい。
小売業2020年の10大展望
中国商業聯合会は1月中旬、「2020年中国商業十大熱点展望」を発表した。
1 国内市場は安定成長、消費構造と商業環境の改善続く。
2 夜間消費熱高まる“夜経済”が新ブルーオーシャンに。
3 サービス需要高まり、飲食業はAI化時代へ。
4 消費と物流のモデルチェンジ加速、強大な国内市場形成へ。
5 小売業イノベーション不断に出現、新商業モデルで多元化する需要に対応。
6 デジタル化商業が“新常態”に。流通改革が生活スタイルを再構築。
7 商店街を改造、業種間を融合させ、新たな商業モデルへ。
8 社区(コミュニティ)の総合サービス化。ラスト100メートル配送が焦点。
9 ネット通販の地方進出、食品のトレーサビリティ、貧困撲滅を“三位一体”で解決。
10 農村流通チャンネルのイノベーションが加速
SaaSというソリューション
国内ネット通販もこうした焦点に挑み、経営資源の構成を変えなければならない。SaaSシステムの採用は、その有力なソリューションだ。
消費市場の拡大により、サプライサイドも不断に拡大を続けている。さらに小売モデルの刷新は日進月歩だ。O2O、社交電商、全チャネル融合などの新概念が飛び交う。こうした状況に対応可能な、さらに高効率の業務サポートが必要とされている。そこで、ERP(Enterprise Resource Planning=企業資源計画)、CRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)等をSaaS化し、ビッグデータ、AI等を用いて、新しいステージを実現しようという動きが急だ。
ただし中小型の小売企業にとって、自前のSaaSシステムを導入するのは、ハードルが高く、専門家に頼む方が手っ取り早い。
慧策のSaaSシステム
そこで今「慧策」という企業が注目されている。同社は2012年、旺店通という名で設立され、EPR、WMS(Warehouse Management System=倉庫管理システム)、智能POS等を基幹事業として発展してきた。
アリババのジャック・マー会長が「新零售(ニューリテール)」に言及したのは2016年である。慧策はそれに先立つ2014年、すでに黒字化を達成していた。全プロセスをスマート化しようとする、慧策のサービスは、時宜を得ていた。
2019年、社名を「慧策」に変更するとともに、ネット通販の“前中後”すべてを一体化したSaaSプラットフォームに進化した。ユーザーは10万社、その中には100社に上る上場企業、十数社の世界500強企業を含む。ジョンソン&ジョンソン、バドワイザー、蒙乳(乳製品)、周黒鴨(食品)中粮(食品)などである。中小企業からは、サービス毎の課金、大企業とはサブスク契約となっていて、収益の安定性は高い。
まとめ
昨年7月には、ソフトバンクとTPGキャピタル(米国)から16億円の融資を受け、主に研究開発に充てられる。
現在、慧策の営業部隊は600人に拡大、全国50カ所に支店を設立した。現在の立ち位置は流通分野のSaaSサービスだが、将来は金融、物流倉庫などのB2B業務も視野に入れている。
慧策CEOのインタビュー記事は、ユニコーン企業入りも有望と見出しを付けている。小売業SaaSの最前線を担っているのは間違いない。注目の企業である。