中国インターネット報告を読み解く①、成功した電信政策とその未来戦略。
2019年8月末、中国互聯網絡信息中心は、第44回「中国互聯網絡発展状況統計報告」(以下報告)を発表した。官製メディアは、評論を加えず、比較的あっさりと、数値のみを伝えている。それによると中国のネットユーザー規模は6月の段階で、8億5400万人、2018年12月段階に比べ2598万人増加し、普及率は61.2%となった。初めて60%の大台を超えた。この報告を基に2回に分け、中国のネット界を分析していこう。今回は公的部門から、中国ビジネスのヒント探る。
インターネット+教育
報告によれば、中国のオンライン教育ユーザー規模は2億3200万人だった。全ネットユーザーの27.2%に当たる。3月に全人代へ提出された「政府活動報告」は“インターネット+教育”の発展を明確に打ち出した。優れた教育資源のシェアを促進させる。農村には、視聴覚室、録画スタジオ、マルチメディア教室などの教育施設は行き渡っていない。進学校もなければ、有能な教師もいない。そこでインターネットによる教育が、農村教育の有力なソリューションとなる。
中国の教育アプリはすでに花盛りである。幼児教育、英語教育、アート教育、宿題補助、課外教育、社員教育、公務員受験アプリ等の運営会社が資金調達を競っている。中央政府のお墨付きを得て、教育アプリの発展はさらに加速しそうだ。
インターネット+行政サービス
報告によれば、中国のオンライン行政サービスユーザーは、5億900万人だった。全ネットユーザーの59.6%に当たる。2019年上半期、各級地方政府は情報公開をより一層進めた。297の地方政府が、両微一端(微博と微信につなぐ)等を推進し、全体手続の88.9%をオンラインでカバーした。今後は、行政サービスプラットフォームの一体化を図るとともに、行政サービスのオンラインとオフラインの融合を目指す。これは小売業における新零售、OMO(Online Merges Offline)の考え方と同じである。
こうして、かつては非効率の極みだった中国の行政サービスは、劇的な変貌を遂げつつある。また各地方政府は、PATH(中国平安、アリババ、テンセント、ファーウエイ)との提携により、すべての行政データをデジタル化するスマートシティ建設にも取組んでいる。
未来の電信網を見据える
また報告は、中国は新世代インターネット基礎設備で先行、と指摘している。IPv6(インターネットプロトコルの次世代規格)のアドレス数量は、2018年末より14.3%伸び、世界一となった。IPv6のアクティブユーザー数は1億3000万人、電信キャリア―に分配されたアドレスはすでに12億700万、そのうち地域名の付くものは4800万、CN付きは2185万だった。2019年6月に開かれた「中国インターネット基礎資源大会」では、基礎設備の発展が、新技術や新アプリなど、新しい業種の誕生を促した、と高く評価している。
中国では2008年、電信3大キャリア(中国移動、中国電信、中国聯通)体制が定まった。国有企業同士ながら、うまく競争原理が働いた。とくに2013 年12月以降、4Gの急発展を見事に支えた。
今年、政府はこれら3社に加え、中国広播電視網絡に5G免許を交付した。第4キャリアの誕生である。この中国広電には、三網融合という特命がある。これは電信網、計算機網、有線テレビ網の物理的合一という。未来の通信網を構築するため司令塔だ。未来を見据えた戦略的動きを具体化しつつある。世界の最先端を目指す気迫を感じる。
2014年以降顕在化したITイノベーションにより、中国人の生活は大きく変化したが、公的部門や、国有企業も大きく変わりつつある。今や旧態依然としているのは日本の地方自治体だろう。彼らに中国のノウハウを紹介する時代になりそうである。