新型肺炎特需に湧く中国のゲーム市場(後編)コンソール急上昇、モバイルゲーム各社、笑い止まらず?
新型肺炎の防疫体制発動依頼、中国の娯楽、観光、飲食などのオフライン企業は、甚大な打撃を受けた。給与カット、人員削減、緊急融資や倒産のうわさも出回っている。しかしオンラインで事業展開する業種の状況は悪くない。特にゲーム産業は巣ごもり「宅経済」の恩恵をまともに受け、最も光に包まれた部門である。
コンソール市場新時代へ
2019年12月、テンセントとニンテンドーは提携に合意した。そし1同月10日からネット通販大手、アリババ、京東による「Switch」の予約販売が始まった。Switchは2017年3月の発売から3年で、ようやく中国“正規”販売に漕ぎつけた。ソフトは「NEWスーパーマリオブラザースUデラックス」「マリオカートUデラックス」「スーパーマリオオデッセイ」が299元(4600円)で、その他周辺機器も同時発売された。
その1ヶ月後の2020年1月末、ニンテンドーはSwitchの売上げ見通しを、当初目標の1800万台から、1950万台へ修正、20年3月期決算も上方修正した。中国市場の底上げが大きいとみられる。
中国コンソール市場は、2014年から開放され、ソニー「Play Staytion」マイクロソフト「Xbox」が先行した。しかしモバイルゲームの急発展に押され、停滞していた。そこへニンテンドーSwitchの投入と、防疫体制下の「宅経済」が重なった。Switchだけでなく、PS4の売上げをも大きく押し上げた。コンソール市場に新時代の到来したのは間違いない。
モバイルゲーム市場も爆発
中国の調査機関、伽馬数居は近日、「2020年1月移動遊戯報告」をまとめた。それによると1月の中国モバイルゲーム規模(Apple Store、Google Play課金)は、47億7,000万元(740億円)、前年比49.5%増だった。前月比では37.5%増だった。
モバイルゲーム市場も、コンソールに劣らず、すばらしい活況を見せた。例えばテンセントの看板ゲーム「王者栄耀」と「和平精英」である。業界メディアの情報を総合すると、「王者栄耀」の春節前日の除夕(今年は1月24日)1日の売上げは、20億元(310億円)を突破し、前年比50%も伸びた。営業政策や運営努力はさることながら、防疫体制下という特殊環境により大きく依存している。モバイルゲームは生活必需品と化したからである。
同じく「和平精英」の春節期間デイリーアクティブユーザーは、1日1億人前後を記録、売上げは数億元と見られている。
その一方、黒猫投訴(微博を運営する新浪傘下の消費者サービスプラットフォーム)に、父母の悲痛な声が寄せられている。子供が親のスマホを勝手に操作、2月22日~27日までの間「和平精英」を遊びまくり、十数回にわたり計5,614.36元(8万7,000円)をチャージしていたという。おそらくこうした例は、枚挙にいとまはあるまい。
まとめ
某ネットメディアは、テンセントやネットイースは、生徒たちの時間、エネルギー、小使いを完全に“収穫”した、と表現している。春節明けの在宅学習期間も「王者栄耀」と「和平精英」のDAUは、それぞれ36.4%増、66.0%増のペースで伸びている。ちなみ在宅教育に採用されたアリババのオフィスツール「釘釘」も55.9%の高い伸びだ。とにかく両親は、子供が学習に集中するよう、全力を尽くすことを強いられている。彼らは最も切実に、学校の正常化を望んでいる。
オフライン産業が苦境に陥っている中、ゲーム業界には、順風が吹きまくっていた。とにかくオンライン、オフラインどの産業にとっても、忘れがたい年となるのは間違いない。