2020年、中国二次元経済は基盤充実、あとはコンテンツ次第?「二次元視頻行業研究報告」を読み解く
3月上旬、調査機関の艾媒(iiMedia)は、「2019-2020中国二次元視頻行業専題研究報告」(以下報告)を発表した。それによれば、政策の奨励、技術の進歩、各プラットフォームのサポート、ユーザー規模拡大等の要因により、業界は長足の発展を遂げた。内容はレベルアップを続け、商業モデルは多元化している。詳しくみていこう。
中国の「二次元経済」とは
日本のネット界における二次元とは、アニメ、ゲーム、コミックに伴う創作物を指し、三次元とは実在の世界を指す。中国ネット辞書は、アニメキャラクターの超現実的想像力に基づく、審美観と趣味としている。
さらに中国では「二次元経済」という言葉が定着している。起源は2015年、ゲーム界の巨頭・テンセントの提唱した「新しいアニメ産業の商業モデル」である。自由なネット空間において、人気キャラクターを共同で育成する。そしてゲーム、映画、小説など周辺業界とともに、大衆流行文化を形成を目指す。理想はスーパーマンやハリーポッター、ゴジラだろうか。
さらに二次元経済の趨勢として、次の3つを挙げている。
1 サブカルからマスへの流れに、モバイルが重要な役割を果たす。
2 二次元と三次元、仮想と現実の境界があいまいになる。
3 二次元要素と社会との相互作用、ユーザーの行動もコンテンツの1部に。
ユーザー4億人視野に
報告によれば、2019年のユーザー規模は、3億3200万人、今年は3億7000万人、2021年には4億人の大台が予想されている。今後、主力層のZ世代(1995~2009年生まれ)が次々と経済的に独立し、消費能力は継続して増加する。
二次元経済は、
動画61.4%、映画41.4%、ゲーム35.7%、音楽32.9%、舞踏17.1%等が中心となっている。
動画視聴プラットフォームは、
B站53.6%、A站(AcFun)0.4%、愛奇芸41.2%、騰訊視頻39.7%、快手26.9%、抖音25.3%、その他19.1%だった。
尚A站は快手の子会社、その快手はテンセント系である。騰訊視頻と合わせ、テンセント系は3社入っている。さすがに二次元経済の提唱者である。
A站(AcFun)
二次元経済を担うプラットフォーム、A站を分析してみよう。
2007年、設立。
2008年、中国初の動画コメント投稿機能。
2014年、インターネット直放送部門が「斗魚」に発展。
2016年、デイリーアクティブユーザー1000万突破。
2018年、快手の100%子会社に。
中国AGC(Anime、Comics、 Games)の最も早い震源地の1つである。初期ユーザーを結集し、二次元発展の揺籃となり、B站、斗魚など他のプラットフォーム発展にも貢献した。2019年の業績は好調である。現在のユーザー数は2億、24歳以下57.4%、男性54.2%、女性48.2%の構成だ。
今後の方針として以下の4点を挙げている。
・優れた作品の版権を購入すること。
・ユーザー生成コンテンツの強化、インセンティブを供与。
・快手のプラットフォーム運営能力を借り、サービスの安定性をトップクラスに。
・快手のAI技術を借り、コンテンツの精緻化を実現。
まとめ
A站と快手は協力し、コンテンツ、仮想現実アイドル、ゲーム、生放送等の総合力で人気キャラクターの創造に挑む。
一方ライバルのB站は、これまでの蓄積、商業モデルの外部環境変化が、今後同社にプラス作用すると見られている。一方コスト上昇を見据え、収益構造の見直しを急いでいる。広告事業とネット通販を拡大中だ。
A站とB站を中心に、二次元経済のプラットフォームは洗練されてきた。あとはコンテンツ開発のオリジナリティと、商業化プロセスの加速化である。また年齢層も若者に偏り、拡大する必要がある。いずれも難問であり、これらのブレイクスルーには、国境を超えたイノベーションが必要になるかも知れない。