発展する中国の農産品B2B取引サイト①農村近代化に貢献する小売店向けプラットフォーム
これから2回にわたり、中国農産品のB2Bプラットフォームを分析していく。中国の生鮮類市場規模(2018年)は1兆9100億元、前年比6.9%の伸びだった。生鮮類とは(構成比)野菜・果物55%、肉類17%水産・海鮮16%、乳製品9%、その他3%を指している。そして全食了品消費の半分以上を占める。この生鮮部門は、今話題のOMO(Online Merges Offline)に注目があつまりがちだ。「盒馬鮮生」や「毎日優鮮」「京東到家」などのシステムである。しかし、物流、品質管理、冷蔵、冷凍など奥行きの広い業界だけに、B2Bでも大小合わせ、さまざまな業態が登場している。小売店に卸す業態、飲食店にデリバリーする業態の二つが農産品B2Bの典型である。今回は前者の有力プラットフォームについて見ていこう。
中農網
中農網は2010年、深圳市でスタートした。急速な成長を遂げ、現在では国内最大の農産品B2B垂直統合プラットフォームといわれている。各領域における経験値と、全国サービス網のアドバンテージで、川上から川下まで、それぞれの参加者に、有効かつ安全、快速の持続的サービスを提供する。
公式サイトには、中農網は独自の“新型農業生態圏”であり、取引き、仕入れ価値を最大化する企業、とある。
GMV(年間の取引総額)887億元、678万トン、倉庫335、提携金融機関23、川上から川下までの全顧客数は10万という。
食糖、シルク、板材、果物、ドライ食品がB2Bの5大中心部門である。そして4大サービスとして、取引の多元化、情報のデジタル化、金融産品化、物流可視化、を挙げている。
またB2Cと越境ECのプラットフォームも運営している。
匯通達
匯通達は2010年12月、江蘇省・南京市でスタートした。農村商業のデジタル化サービスサイトという。“郷村振興戦略”に基付き、インターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、ニューリテールなどの科学技術を用いて、農村商業の高度化、産業価値の再構築を行う。農村零細商店をチェーン化し、彼らの仕入先、販売先に対し、デジタル化サービスを提供する。
公式サイトには、郷鎮(日本の町村に相当、全国に約3万4000)の会員店10万5000と消費者の双方に、新型O2Oシェアサービスプラットフォームを提供する、とある。これは農村に不足していた農産品の出荷手段を、オンラインでシェアする試みだ。匯通達はこれを“農村微物流”と呼ぶ。農村に新しいブルーカラー雇用を生み、彼らに労働者としての安定収入をもたらしている。農村物流の改革を中心に、農場の経営や、農民への金融事業も行う。
宋小採
宋小採は杭州市で2015年1月、淘宝(アリババのC2Cプラットフォーム)からスタートした。アリババの創業グループ“十八羅漢”の1人、呉咏銘が3000万元のエンジェルラウンド融資を引き受けた。その後は有力投資機構が次々と融資を行っている。アリババ系遺伝子が組み込まれているのは間違いない。
公式サイトには、生鮮業界内の中小業者に選ばれるデジタル化サービスプラットフォーム、とある。先進的な生鮮B2Bプラットフォームとして、顧客にデジタルソリューション提供する。例えば、市場と情報の不一致、生産者の販売先難などの解決などである。
年間取引量は30万トン、10大産地におけるサプライヤーは10万以上、バイヤーは80都市3万以上、7000人のドライバーと、300の基幹物流路線を持っている。「全国十佳疏菜電商平台」の称号を得ている。2018年末までの累計融資金額6億3000万元となり、すでにユニコーン企業(企業価値10億ドル以上のベンチャー)の仲間入りをしている。
まとめ
匯通達は、農村の雇用創出、貧困撲滅に注力している。単に農村から仕入れ、卸・小売業者へ販売するだけの競争ではない。社会基盤の整備まで行っている。こうしたステージでは、ちょっとした経営判断が大きな結果をもたらしそうだ。貧困撲滅をめざす政府にとっては、有力なパートナーとなっている。