新型肺炎③観光業界は大混乱、「携程」オペレーターは残業13時間、今後半年間は尾を引く?
中国ネットメディアでは、新型肺炎の中国経済に与えるダメージについて、さまざまに論じられている。その中から、具体的なケースを取り上げてみよう。まず観光業界である。
2003年のSARS事件、観光業界の受けた損失は甚大だった。同年第二四半期、旅客量は23.9%減少、航空に限っては50%近く減少した。
財政部は終息後、観光業界に5億元の助成金を支給した。また当時の国家旅游局は、観光業界から集めていたサービス保証金23億元の60%を返還した。さまざまな手を打っていたのである。今回、政府と観光業界はどのような対策で臨むのだろうか。
観光業界、大混乱に
2019年1月24日、文化旅游部は全国の旅行会社に対し、緊急通知(文旅発電2020 29号)を発した。団体旅行及び「航空券+ホテル」セット商品の販売を停止し、27日00時以降の海外旅行を禁止するという厳しい内容は、業界を震撼させた。
観光関係者は、今年の春節休暇旅行者を4億5000万人(前年比7.6%増)と見積もっていた。それが旅行会社の“流血点”に暗転した。キャンセルの連続で、損失額の予測は全く立たない。「携程」「同程」等のオンラインサイト、「凱撤」等の旅行会社、各ホテルの顧客サービス部には、問い合わせが殺到している。江蘇省・南通市にある携程カスタマーセンターの第一線オペレーターは、1日13時間の残業をしたという。
携程は「重大災害補償金」として2億元(33億円)、同程集団もやはり「危機応急保証金」を2億元準備して、顧客利益の保護に当たっている。ただしこのような対応は、大手にしかできない。
航空会社も混乱に見舞われた。運休や減便の情報を正確に発信するため、大わらわとなっている。
GDP4.5%の巨大産業が危機に
文旅部の通知と同時に、人力資源社会保障部も意見を出している。防疫体制の影響による、経営の苦境に際し、賃金調整、時短、シェアリングなど労使協力によって、極力人員整理をしないようにとプレッシャーをかけた。
しかし観光業は、労働集約型である。接客、ガイド、ドライバー、オペレーター等みな人間が担当している。同程集団の従業員は1万人もいる。24日の通知は、全面業務停止に等しく、キャンセルの続出は、即キャッシュフロー不足の危機に直結する。人的コスト負担の継続は困難となりつつある。中小業者は経営破綻の危機だ。
国家統計局データによれば、全国の観光と関連産業の産出価値(2018年)は、4兆1478億元(65兆円)、GDPの4.51%を占める。また世界旅游城市連合会、という組織によれば、中国旅游業総収入(2019年)は6兆5000万元(102兆円)に上る。1日当たり178億元(2800億円)だ。同連合会は、直接の影響を3ヶ月、予後回復期の影響を3ヶ月と見積もっている。この通りとすれば、小さな数字では収まらない。
まとめ
一方、人力資源社会保障部は、救いの手も差し伸べている。失業保険を労使とも納入済み等、条件を満たす企業には、助成金を出す。
また短期流動資金確保のため、税制と金融でもサポートを行う。特に海外旅行を扱う企業には手厚い内容だ。例えば指定金融機関から低利融資を得られ、利子補給もある。融資条件も使途限定の条件で優遇される。企業所得税の減免、印紙税減免、増値税の減税も可能になる。
これらの施策は、2003年の経験に基付いたものだろう。しかし、当時第三次産業の構成比は39.2%だったが、現在は60%に近い。影響力の大きさは、比較にならない。政策が功を奏するかどうかわからない。しかし、政府は考えられる限りの手を打ち、経済への影響を抑え込もうとするだろう。その効果を見守るしかない。