発展する中国の工業B2B取引サイト⑦工業製品、専門B2Bサイトは、専門性を高めることで生き残れるか?
今回は工業製品B2Bプラットフォームの中から、専門性が高く、ネットメディアで話題性のあったものを紹介していこう。アリババや京東の持つ、総合性や国際性とどう戦っていくのだろうか。専門化こそ戦略の中心となりそうだが、他業態にも参考になりそうなヒントは眠っているのだろうか。
佰万倉
佰万倉は2015年、上海で設立されたMRO=非生産物量(消耗品)B2Bプラットフォームである。創業者の楊寧は、アリババ創業期に在籍していたメンバーである。アリババの体現する価値観「顧客第一」とジャック・マー前会長その人のリーダーシップから、大きな影響を受けたと語っている。
MROでは、アリババ、京東など大手総合通販との差別化は、難しいように思える。公式サイトを見ると、対象とする産業を絞っている。それは、電車製造、軌道交通、エネルギー、自動車製造、機械製造、医薬化工の6つである。これら業界とその関連企業に対して、徹底的にコミットしようというのだろう。
商品カテゴリーは、工具、安全防護、刀具・測量具、気動及び液圧、電気控制、動力伝動のやはり6つに分かれている。ゾーンを決めて戦う、専門性の高いMRO型業態といえるだろう。
鋭錮商城
鋭錮商城は2014年、上海でスタートした。このところ順調に資金調達を行っている。2018年12月、シリーズBで2億3000万元、続いて今年9月には、シリーズCで3億元と立て続けに資金調達に成功した。
公式サイトには、トップページから商品紹介であふれている。実用に徹した作りだ。商品カテゴリーは、電動工具、消耗財、測量工具、手動工具、小型機械、電線、エアーコンプレッサー、労働防具、気動工具、ポンプ、溶接・カッティング、起重機、造園工具、汽保工具、汽動工具、運搬工具、油圧工具、の17に別れ、高い専門性を持っている。
そして、幅広い品ぞろえ、品質保証、快速配送、返品保証、の4点を強調している。対象業界を絞るのではなく、これら17類の商品では負けない、というデザインだろう。佰万倉よりゾーンは広いが、逆にMRO=事務所や店舗消耗品、は重視しない。やはり専門性に賭ける姿勢だ。
震坤行工業超市
震坤行工業超市は1996年、上海の工業製品貿易会社としてスタートした。90年代は貿易の時代だった。やがて工業製品の卸商から、B2Bネット通販へと主力事業を移していった。創業者の陳龍は昨年の講演で、次のように述べた。
「もし我々が工業品B2Bネット通販を始めていなかったら、1つ1つの製品価格はどのように決まっただろうか?製品の付加価値は安定せず、メーカーの周囲をくるぐる巡っていたに違いない。B2Bネット通販は、コスト削減と効率アップに大きく貢献した。」
強い自負を感じさせる。その震坤行工業超市の公式サイトは、佰万倉と鋭錮商城の中間のようにみえる。
自動車工業、食品工業、冶金業、電力業、化学工業の5つを主要対象として、製品カテゴリーは、防護用品、手工具、実験室消耗品、動力工具、接着剤、金属加工、潤滑剤、測量機器、をはじめ26に細分化さている。
対象業界は絞り、製品の奥行きを深くとったデザインとなっている。
まとめ
2019年6月、テンセントは震坤行工業超市のシリーズD融資、1億6000万ドルに主力インベスターとして参加した。テンセントはB2Bシフトを強め、昨年9月には、鉄鋼B2Bサイトの找鋼網と合弁会社を設立した。資本金は2,000万元、出資比率はテンセント40%、探鋼網60%である。同社では鉄鋼に限らず、全分野交易型SaaSプラットフォームを目指すという。震坤行工業超市への投資はそれに次ぐものだ。
これからの工業品B2Bプラットフォームは、専門性を極限まで高めて生き残り、その先にはIT巨頭と提携という形もありそうだ。