2020年春、直播電商(ライブコマース)が話題を独占中、スキャンダルも成長の糧、その潜在力を証明?
中国の直播電商(ライブコマース)と直播帯貨(有名人によるライブ配信)の勢いは、とどまることを知らない。有力な網紅(KOL、インフルエンサー)の知名度は映画スターと変わらず、日本のユーチューバーの比ではない。2020年4月、それを象徴する大事件が起きた。その詳細を見ながら、直播電商の持つポテンシャルについて考察してみよう。
株価大暴落
きっかけは4月17日の昼ごろ、“小透明”“花花董花花”というフォロワー数1万以下の微博アカウントの投稿だった。それは1000万以上のフォロワーを誇るスターKOL・張大奕へ向けられていた。だれしも艶聞を感じ取った。発信者が、アリババ最高幹部、若き天猫総裁・蒋凡(35歳)の夫人だったからだである。内容は張大奕へ向けた“最初にして最後の警告”だった。彼女はすぐに、誤解である、と否定の投稿をした。
この醜聞は、同日夜の米国ナスダック市場を直撃した。如涵(ルーハン)控股股份公司の株が10%の大暴落、時価総額2,200万ドル分が吹き飛んだ。これは一体なぜなのだろうか。
如涵とアリババの親密な関係
如涵は、中国で最も早く、ライブ配信者のマネージメントや養成に着手した会社である。2016年に、前身の事業から現在のMCN(Multi-Channel Network)機構へ衣替えした。利益は出ていなかったが、業容を拡大し、2019年4月、ナスダック上場を果たす。
張大奕は、その如涵の大黒柱である。2017年50.8%、2018年52.4%、2019年53.5%と、ここ3年、売上の半分以上を1人でたたき出した。ホームページは彼女を“微博最具商業価値紅人”と表現している。
張大奕は2014年、アリババに「淘宝網虹店」を出店、2016年から淘宝直播でも活動していた。そのアリババは2016年、如涵に出資し、約10%を持つ大株主である。張大奕自身も如涵の大株主だ。
このようにアリババと如涵はきわめて密接な関係にある。その最高幹部と看板KOLの不倫が発覚したのだ。最先端の舞台装置とキャストであり、これで話題にならないはずがない。
アリババはすぐに動き、10日後に懲戒処分を下している。アリババと如涵、蒋凡と張大奕の間に不正な利益供与は無いと判定され、蒋凡は降格と賞与カットだけで生きながらえた。
直播電商トップ10
IiMediaの調査「2019-2020年中国直播電商用戸常用直播平台TOP10」によれば、常用されている直播電商プラットフォームは
1位 淘宝直播 48.18%
2位 京 東 47.45%
3位 抖 音 32.85%
4位 小紅書 22.63%
5位 快 手 18.98%
6位 蘑菇街 14.60%
7位 網易考垃 7.30%
8位 唯品会 7.30%
9位 拼多多 6.57%
10位 蘇寧易購 2.92%
という順だった。上位にはネット通販と短視頻(ショートビデオ)が並ぶ。小紅書は最初から2つの機能を併せ持つ複合プラットフォームだ。販売部門とコンテンツ制作部門の連携が、直播電商を支え、コンテンツ制作部門を支えるのがMCNだ。アリババと如涵の深い関係性は、ここからも明らかである。
まとめ
iiMediaの「商情輿情数居観測系統(ビジネスと世論のモニタリング)」によれば、4月17日、キーワード「喊話(叫ぶ)張大奕」の口コミ指数が1371にまで上昇した。平均値は21.6である。ちまたの話題を独占したのである。
直播電商、直播帯貨は、これを機にさらに話題を集め、勢いは増す一方である。アリババは、トップKOLは元より、零細商店主や工場長まで、ライブ配信者として養成、デビューさせるつもりだ。新しい成功物語も続々生まれるだろう。スキャンダルさえ成長の糧にして成長している。当面、目を離せないそうにない。