日本・中国の企業提携に変化の波、トヨタ、中国企業と新次元の提携を探る
11月上旬、トヨタとBYD(比亜迪)の合弁会社設立が発表された。トヨタにとって中国企業との提携は、9月中旬の配車アプリ最大手「滴滴出行」に次ぐものである。
かつて日本企業の中国進出は、日本向け商品の低コスト生産や、中国内販の拡大を目指していた。トヨタもその例にもれず、広州汽車集団(広州市)、中国第一汽車集団(長春市)と合弁し、中国市場を開拓していった。しかし最近の提携は、そう単純なものではない。今回の提携内容について、詳しく見ていこう。
モビリティ革命下の提携戦略
トヨタは、現在を100年に1度の大変革の時代と認識している。100年前といえば、T型フォードが、初めて一般市民の手元へ届いたころだ。それ以来の大変革のため、移動に関するあらゆるサービス(MaaS)を提供するモビリティ企業へ変身しなければならない。
そのカギとして、トヨタは「電動化」「自動化」「コネクテッド」「シェアリング」を挙げている。そして最近の提携は、当然のように、これらに関連するものばかりとなった。もはや中国市場をどう攻略するか、という問題ではなくなっている。
中国の自動車市場が低迷(16ヶ月連続前年割れ)する中で、トヨタブランドは、1~9月累計は、108万1500台、前年比12.6%増とそれなりの結果を残している。提携企業を選ぶ基準は、世紀のパラダイムチェンジに向けて、利用価値があるかどうかである。滴滴出行は、自動化、シェアリングの、BYDは電動化のパートナーとして、トヨタに期待されているのだ。
BYD(比亜迪)とは
BYDの2019年販売台数(1~10月)は、5.29%の下落と、民族系の中では健闘している。従来型の内燃機関エンジン車は、17万1738台、25%減、新能源車(電気自動車)は、13万1246台、96%増、電気自動車のリーディングカンパニーである。
BYDはもともと1997年、深圳で設立された自動車電池メーカーだった。2003年、企業買収により完成車製造に進出する。2008年には、半導体製造企業を買収し、電気自動車の内製を目指す。そして2009年に最初の純電気自動車を発表。2010年には、ダイムラーと提携している。
電気自動車製造の方針を堅持し、動力電池では突出している。すでに10車種の電気自動車の発売実績もある。
提携はプラス
トヨタとBYDの合弁について、中国側の報道から見てみよう。2019年6月、トヨタの動力電池サプライチェーンに参加。7月、SUVタイプの電気自動車共同開発で合意。そして11月、それぞれ50%出資する合弁会社設立へとトントン拍子に進んだ。合弁会社の定款による業務範囲は、電気自動車と関連部品の設計開発、輸出入、販売等となっている。
大手証券会社・招商証券のアナリストは、「直近の電気自動車は、販売量、利益ともダブルで底に沈んでいる。しかし、依然として高成長市場には違いなく、まもなく反発するだろう。トヨタとの全面提携で、BYD電気自動車の技術力が証明でき、さらに技術進歩を促進できれば、合弁の将来は極めて明るい。強固なブランドが構築できるだろう。」と双方にとってのプラスを見出している。
まとめ
トヨタは、ソフトバンクからの示唆はあったとしても、基本的に何もかも自分で考え、セットしなければならない。孤独である。
中国では、自動車メーカー以外のIT巨頭、アリババ、テンセント、バイドゥ、滴滴出行などが、自動運転を含む、MaaSの研究を行っている。さらに5G研究と絡めた総合試験区が全国に8カ所ある。そして地方政府とのAIプロジェクトを組み、莫大な交通ビッグデータを蓄積中だ。すでに研究成果を利用する段階へ進みつつある。
総動員で臨む中国と、自動車メーカーが単独で闘う日本、という構図は鮮明だ。自動車メーカー単独では、未来のMaas体系において、へたをすれば、パーツ供給業者になってしまう。しかし米中と違いIT巨頭の存在しない日本としては、当面トヨタに頑張ってもらうしかなさそうだ。