中国のネット動画ユーザー数8.5億人に増加、全国民が直播電商(ライブコマース)に熱中?
中国互聯網信息中心(インターネット情報センターCNNIC)は4月末、「第45次中国インターネット発展状況統計報告」を発表した。今回、注目を集めたのは、動画視聴ユーザー数だった。現在、中国ネット界の焦点となっている。詳しく見ていこう。
動画ユーザーはネット民の94%
この報告は1997年11月から続く中国ネット界の基本統計だ。インターネットの発展状況を、総合的に反映する。今回は各メディア、動画ユーザー数をメインニュースに取り上げた。直近の時系列データを紹介している。(動画ユーザー数/短視頻ユーザー数)
2018年06月 7億1107万人 5億9403万人
2018年12月 7億2486万人 6億4798万人
2019年06月 7億5877万人 6億4764万人
2020年03月 8億5044万人 7億7325万人
短視頻(ショートビデオ)ユーザーは、実は頭打ちだったのが、新型肺炎の宅経済(巣ごもり消費)により、再び勢いを得た。そして全動画ユーザー数8.5億は、全ネットユーザーの94.1%に当たる。
ネット通販
こうしたデータの示す通り、中国ネット界は、文字表現から映像表現への転換が急速に進んでいる。その象徴が、直播電商(ライブコマース)と直播帯貨(有名人を起用した販促)である。以下代表的プラットフォームから、状況を見てみよう。
総合ネット通販で最も早く採用したのは淘宝(アリババ)である。2016年3月にテストを開始したが、ユーザーにサイト内に長居してもらう仕掛けの1つと考え、大々的に網紅(KOL、インフルエンサー)を募集したわけではない。節目となったのは、現在のトップ網紅、微婭の起用だった。4ヶ月間で1億元(15億円)を売上げ、網紅の能力を証明した。2017年以降、その戦略的地位は上昇を続け、2019年3月には、淘宝直播事業部を設立した。同年末のユーザー数は4億人を突破した。
短視頻
短視頻の代表は、快手と抖音(海外名・TikTok)である。特徴は投稿シェアモデルのため動画作成が容易なことだ。誰でもKOLになれる。主導権を取ったのは快手である。快手には推奨機能がなく、公平なモデルとして信頼されている。快手もやはり2016年、直播効能を追加、クリエイターに利用を促した。2018年6月には「快手小店」をリリース、独自商品をアップできるよう機能を強化する。同年12月のアップグレードでは、快手アプリ内で商品購入まで可能とした。現在、快手のDAUは2億、1900万人の投稿者の中には100万人の“電商関連”クリエイターがいる。2019年の直播電商売上げでは、淘宝直播につぐ2位と見られている。
これに対し、短視頻トップの抖音は出遅れた。ショッピング機能を付加したのは、2018年末である。新型肺炎の防疫期間中には、さまざまな手を打ち利用を促した。直播帯貨で有名人を大量起用、巻き返しを図る。
SNS
SNSの雄・テンセントは2019年初頭、こっそり直播の内部テストを行った。同年12月、テンセント直播発表会を開催、正式にライブコマースへの参入を表明した。淘宝との違いは、WeChatの“SNS資源”を生かせることにある。WeChat上にたくさんある商売意欲の“積極信号”を捉えられる。
テンセント直播は、ミニプログラムを介して、WeChatにアクセスし、企業微信、コミュニティ、広告トラフィックを通じて動画を配信できる。ただし、社内事業部制の壁もあって、テンセント直播が、WeChatエコシステム内で、どこまで進展できるのかは疑問視する向きも少なくない。
まとめ
こうしてネット通販、ショートビデオ、SNSと、出自の異なるプラットフォームが、すべてライブ配信を行い、積極的に商品の販売に関わっている。商売好きの中国らしい光景と総括することは可能だろう。今後の展開は、直播帯貨がカギとなる。4月の羅永浩(教育家、企業家)の起用は大きな話題を提供し、ついに新型肺炎の防疫指揮者・鐘南山氏まで登場した。当面は発信力のある有名人の囲い込みが焦点だ。中国のライブコマースが、さらに活性化するのは間違いない。