中国向けホームページ制作法⑲~内も外も怖いものだらけの中国IT業界!?~
目次
アリババ、テンセントの怖いものは?
中国IT業界の覇者や巨人といっても過言ではないのが、インターネット通販(EC)サービス最大手のアリババ集団と、オンラインゲームや対話アプリ「微信(WeChat)」などを提供する騰訊控股(テンセント)ではないでしょうか。アリババ集団とテンセントは中国国内においてそれぞれの強みのサービスで圧倒的な地位を築き、その分野で大きなシェアを握っています。そんな競合他社の追随を許さないといっていいほどの巨大な力を持った2社ですが、実は怖いものがあるのをごご存知でしょうか?テンセントは中国共産党から業務に圧力をかけられ、アリババ集団は米アマゾン・ドット・コムが東南アジアに迫るのを怖れているようですよ。今回はアリババ集団とテンセントの怖いものに触れながら、中国向けホームページ制作や中国のインターネット関連サービスへの脅威などについてみていきたいと思います。
人工知能(AI)の回答に共産党が警告!?
時価総額が40兆円を超え、業績好調と思えるテンセントの快進撃に最近中国共産党や当局からの横やりが入っています。テンセントが共産党や当局からにらまれたのは、同社が提供するサービスで中国政府にとって不都合なことがあったからだとみられています。特に問題になったのが、スマートフォン(スマホ)向けなどに提供するSNSサービス「QQ」です。「小氷」(女の子のキャラクターの愛称)と呼ばれる人工知能(AI)とチャット形式で会話を楽しめるものなのですが、この「小氷」の回答が共産党にとって好ましくないというのです。中国の利用者が「小氷」に「共産党万歳」などと話しかけると、「(君は)腐敗した無能な政治に万歳できるのか」などと答えたそうで、テンセントはサービスの一時停止を迫られました。その後、「小氷」の回答は、同じ話題を振ると「私はまだ幼いからよくわからない」とはぐらかすようになり、しつこく聞くと「あなたは何が知りたいの」と答える改善がなされたといいます。
オンラインゲーム、ニュースも共産党などが干渉
「小氷」の回答ほど直接的ではないにしろ、テンセントのサービスはしばしば共産党の批判の的になっています。党機関紙の人民日報など共産党に近いメディアは、大ヒットの同社の最新オンラインゲーム「王者栄耀」の批判を展開しました。このゲームは6000万~1億人のユーザーが参加し、そのうち少なくとも半数は毎日プレーしているといわれるほど空前の人気を博していますが、「王者栄耀」のやりすぎで父親に叱られた少年が自殺したと事例があるなど子供たちのゲーム中毒が社会問題となり、共産党に目を付けられたとみられています。テンセントは、ゲームのプレー時間を制限する仕組みを導入する対応に迫られました。このほかにも、7月に北京市当局が低俗なスマホ向けニュース情報を問題視し、大量のアカウントを閉鎖したともいわれるなど、テンセントへの共産党や当局の干渉が相次いでいます。
アリババ集団は共産党とベッタリなのか?
中国IT業界のもう1人の“巨人”、アリババ集団はといいますと、共産党や当局からの目立った批判などは見当たりません。これはアリババ集団創業者の馬雲氏とテンセント創業者の馬化騰氏の中国政府との向き合い方の違いにあるといわれています。アリババ集団の馬雲氏は政治の世界で存在感があり、テンセントの馬化騰氏は控えめで脚光を浴びることを避けているとみられています。2017年5月に日本のニュースサイトのデイリー新潮が、「アリババ集団の馬雲氏は共産党とベッタリで顧客の個人情報を平気で政府に引き渡す」というような中国人漫画家の辣椒さんのコメントを掲載し、話題になりました。辣椒さんは「漫画で読む 嘘つき共産党」などの作品で共産党批判を展開しており、アリババ集団の提供する電子決済サービス・支付宝(Alipay)の利用履歴を政府に引き渡したり、政府の意向で支付宝(Alipay)を使えなくしたりしているというのです。この辣椒さんのコメントについて真偽は定かではありませんが、アリババ集団と中国政府の密接な関係を伺わせる馬雲氏の発言や行動はいくつかあります。
反テロで政府に協力、個人情報提供の真偽は⁉
アリババ集団の馬雲氏の発言で代表的なものが「政府とは恋人関係にならないといけない、でも夫婦になっちゃ絶対ダメ。」ではないでしょうか。そこで馬雲氏の真意を探っていくと、どうやら中国政府とベッタリで個人情報でも何でも提供するほど言いなりになっているわけではなさそうです。馬雲氏はインタビューなどで、国家のセキュリティ対策や反テロ対策については協力する意向ですが、個人情報の提供に関しては顧客の信用確保のためにも応じない考えを示しています。ただし、この“反テロ対策”という基準が曖昧で、政府が反テロとみなすケースでも、国民からすれば、反テロではないとする、政府と国民の認識のズレもあり、そういった点が辣椒さんのアリババ集団と中国政府のベッタリな関係を指摘するコメントに繋がっているのかも知れません。馬雲氏は中国でビジネスを行う上で政府とのかかわりは避けられないとの考えを示しており、国家の事業を担うなど公益のためにも活動しながら、政府と“適度な”距離で付き合っていく姿勢のようですが、やはり中国政府の顔色を日々伺っているといったほうが正しいような気もします。
アリババが本当に怖れるのは米アマゾン!?
中国国内で圧倒的な地位を築き、中国政府の顔色も伺いながらうまくやっているとなると、アリババ集団の怖いものはないといってもよいか、というとそうでもなさそうです。厳密にいうと、中国国内にはそんなに怖いものはないといったほうが正しいのかも知れません。中国国外に目を向けてみると、世界最大手のECサービス、米アマゾン・ドット・コムの脅威が東南アジアまで迫っています。アマゾンは、AIやクラウドを使ったサービスでアリババ集団に先行しているといわれており、アリババ集団としてもアマゾンの脅威が東南アジアに迫る前に先手を打ちたい考えではないでしょうか。アマゾンを強烈に意識してか、アリババ集団は年内にシンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピンの6ヵ国でECサイト「淘宝(タオバオ)」の展開を目指すほか、支付宝(Alipay)の普及も後押しするといいます。アリババ集団は、2016年4月に東南アジアのECサービス大手、ラザダを買収。商品供給や仕組みでアリババ集団の経営資源を活用し、シェア拡大を図っています。すでに今春からは、ラザダがシンガポールとマレーシアで「タオバオコレクション」を展開。商品供給を優良な業者に絞り込んで対象商品を400万点に限定し、サイトを英語表記にしました。電子決済分野でも、アリババ集団傘下の金融会社、アント・フィナンシャルが4月にラザダの電子決済サービス「ハローペイ」を買収し、支付宝(Alipay)に名称変更するなど、アリババ集団は着々と東南アジアでの地盤を固めています。
中国向けホームページ制作やホームページを活用したビジネスを展開する際にも、テンセントやアリババ集団に迫る脅威は他人事ではないのではないでしょうか。中国向けビジネスを行うのであれば、中国政府の動きはもちろん、中国のすぐそばまで迫る海外企業の動向、アリババ集団、テンセントの対応も注意深くみていく必要がありそうです。
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