「トップ30グローバルメディアオーナー」から中国広告市場の動向を読み解く
2017年には中国から3社がランクイン
2017年5月2日に発表された「トップ30グローバルメディアオーナー(Top Thirty Global Media Owners)」によると、中国企業としては、百度(Baidu /バイドゥ)が第4位に、腾讯(Tencent/テンセント)が14位に、中央電視台(CCTV)が20位にランキングされています。このレポートは調査会社であるゼニス(Zenith)が集計発表したもので、1位はGoogle、2位はFacebookで、世界全体の広告料の20%がこの2社に流入したと報告しています。この統計は2016年中のメディアの広告収入にのみフォーカスし、他の企業活動からの収入は除外されています。昨年の同じ時期に発表されたレポートでは、百度(Baidu /バイドゥ)が9位、中央電視台(CCTV)が19位でした。
目次
世界の広告市場のトレンド
最近の世界の広告市場の大きなトレンドとして指摘されているのは、中国の広告市場の急激な成長です。その市場規模は2012年には日本を抜いて米国に次ぐ世界第2位になりました。2016年現在、アメリカ市場が世界全体の37%を占めると言われ、中国市場の約2倍の規模なのですが、その差はどんどんと縮まりつつあると言われています。中国の広告市場の急成長の背景には、スマートホンの普及に代表されるオンライン接続環境の改善と、一人あたりの国内総生産(GDP)の増加があると指摘されています。もう一つの大きなトレンドは、デジタル広告の伸びです。これまではテレビが最も有力な広告メディアであったのが、2017年中にはインターネットのシェアが36%になり、35%のテレビを抜いて最も有力な広告メディアになると予測されています。
百度(Baidu /バイドゥ)が4位にランクインしたが
さて、今回のレポートの発表に対する中国での反応ですが、注目を集めているのは、最近あまり存在感を示していなかった百度(Baidu /バイドゥ)が世界で4位にランクインしたことです。このところ何かというと阿里巴巴(Alibaba)や腾讯(Tencent/テンセント)に押され気味とも言われていた百度(Baidu /バイドゥ)ですが、今回その広告収入が4位になった背景には、やはりなんといっても中国の広告市場の成長があります。今回の百度(Baidu /バイドゥ)の躍進に対する中国のネットでの反応ですが、「これでいよいよ百度(Baidu /バイドゥ)もGoogleに近づいた」という評価がなされる一方で、「Googleを中国から締め出しておいて勝ち取った順位を額面通りに受け止めていいものか?」という指摘や、「最近の百度(Baidu /バイドゥ)は広告が溢れていて使い勝手が悪くなっている」という意見も見られます。
腾讯(Tencent/テンセント)の躍進の背景には
いきなり14位にランクインした腾讯(Tencent/テンセント)の躍進ぶりも注目を集めています。2012年から2016年の間の広告収入の伸び率が最も大きかったのはTwitterで734%でした。腾讯(Tencent/テンセント)はそれに次ぐ第2位で697%の伸びで、Facebookの伸びを上回りました。腾讯(Tencent/テンセント)の躍進の理由として挙げられるのは、スマートフォンの爆発的な普及です。パソコンが仕事をするための機器という位置づけに変わり、人々がパソコンの前で過ごす時間よりもスマートフォンを利用する時間のほうが多くなってきていることが影響しているようです。腾讯(Tencent/テンセント)の強みはSNSやオンラインゲームですが、これらはスマートホンなどのモバイル機器からのアクセスがメインです。広告主が広告支出の予算の配分をパソコン向けからモバイル向けにシフトするのは必然だといえます。
BATが抱えるデータの特徴は?
「広告配信の最適化」という観点から見ても腾讯(Tencent/テンセント)には強みがあるようです。百度(Baidu /バイドゥ)は「検索キーワード調査」で大量のユーザーのニーズを把握しています。百度(Baidu /バイドゥ)が得られるデータはユーザーが「何を見たいか?」であって、そのユーザーが「誰であるのか?」、「属性は?」、「何を買うのか?」といったデータまでは得られません。阿里巴巴(Alibaba)はEコマースを通してユーザーの実際の商品に対するニーズや購入履歴などを把握しています。Eコマースの領域でユーザーに対し実名登録を要求していることから、そこで得られるデータの精度は非常に高いと言えます。「誰が何を買いたいのか?」「何をいつ買ったのか?」まで把握しているけれども、個人情報保護の観点から広告主には公開しない部分も多いと言われています。腾讯(Tencent/テンセント)のデータの情報源は、微信(WeChat)や微信支付(WeChat Pay)、コンピューターゲームのQQ Gameなどです。腾讯(Tencent/テンセント)のデータは阿里巴巴(Alibaba)と比べると精度の面では及びませんが、データの情報源には微信(WeChat)上の画像情報なども含まれ、阿里巴巴(Alibaba)よりも広範囲に亘るので、データマイニングの進化によってその価値はますます高まることが予想されています。インスタントメッセンジャー、SNS、ゲーム、決済までをカバーすることでモバイルユーザーの動向を最も把握しているのが腾讯(Tencent/テンセント)だと言われています。
今後の中国の広告市場に注目
ビッグデータ活用やリアルタイム入札の進化によって、広告主の「広告の最適化」に対する意識は高まる傾向にあるといえます。中国のネットユーザーの数は2016年12月現在で、約7億3000万人とヨーロッパの全人口に匹敵する規模です。中国市場を制することは世界の広告支出の何分の一かを確保することにつながります。中国ではモバイルだけではなくスマートTVの普及率も高い伸びが予想され、インターネットからテレビへの回帰も起こるのではないかという予測もあります。どこに広告支出が増えるかは、どこで人々が最も長く時間を過ごすかにかかってくると言われています。2016年の中国のオンラインショップのモバイル向け広告の支出先の調査では、阿里巴巴(Alibaba)が1位で、それに百度(Baidu/バイドゥ)と腾讯(Tencent/テンセント)が続いたというデータも出されています。今後の「BAT」と中央電視台(CCTV)の広告収入の動きは注目が必要でしょう。
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