中国のインターネット史、焦点はビッグデータ産業に移る すでに10兆円産業へ成長
2019年10月は、翌年を見据えた各産業の研究レポート発表ラッシュであった。インターネット関連では、ビッグデータの研究報告が目についた。ビッグデータはインターネット史における1つの到達点といえるだろう。中国のビッグデータ産業を分析してみよう。
ビッグデータは10兆円産業
報告書の1つ「中国互聯網発展報告2019」によれば、中国は基礎施設の建設を続け、インターネット性能は各段に向上した。光ファイバーの顧客は3億9600万戸、全体の91%を占め、世界首位である。また移動通信基地局は732万、そのうち4Gは445万である。今年6月には通信キャリア4社に5G免許を交付、5G商用元年となった。
基礎設備の進化に伴い、中国の自主イノベーション能力も向上している。2018年、クラウドコンピューティング産業規模は、963億元(1兆4800億円、1元=15.37円)に達し、ビッグデータ産業規模は、5405億元(8兆3000億円)に達した。それぞれ2017年比、39.2%、15.0%、伸びている。
2019年のビッグデータ産業は、2018年比15.7%増の6255億元(9兆6000万元)になる見込みだ。10兆円産業である。これに対し日本に、ビッグデータ産業というカテゴリーはほぼ存在せず、中国と比較可能なデータはない。
全データのデジタル化を目指す中国
社会生活の中には無数のデータ資源が眠っている。これは、データ化―情報化―デジタル化―智能化を経て、より一層高度なデータとなる。カギはデジタル化である。そのため「数字(デジタル)中国戦略」を加速させる必要がある。
国家互聯網信息辯公室によると、2018年の中国デジタル経済規模は2017年比15.1%伸び、31兆3000億元(480兆円)となった。これはGDP全体の34.8%を占め、日本の同年名目GDP549兆円に近い。
さらなるビッグデータ産業拡大を目指すため、デジタル経済を質量ともに高度化し、デジタル政府を効率化し、デジタル社会のサービス化を実現する。そうして全データのデジタル化を目指すのだ。
ビッグデータ産業園と人材不足
2016~2018年の間、中央政府は43本のビッグデータ政策を公布した。また各地方政府は合計347本の政策を公布している。内訳は貴州省が67本でダントツ、福建省と広東省が23本で続いている。
広東省は2014年、最も早く大数据(ビッグデータ)管理局を設立した。2015年には浙江省と貴州省が続き、2017年以降は、各省が雪崩をうって設立し始めた。今は8大ビッグデータ産業園(貴州、重慶、上海、河南、瀋陽、珠三角、京津翼、内蒙古)を中心とした研究開発争いとなっている。
政策本数トップの貴州省は、貧困省からの脱却をビッグデータ産業の誘致に賭け、成功しつつある。
ただし、人材不足は深刻だ。2018年末、200万人必要とされる中核となる人材が、60万人不足しているという。そのため2017~2019年、大学のデータ科学科とビッグデータ科は、32ヶ所新増設され、それぞれ250と196ヶ所となった。
見通し、まとめ
各種の報告によれば、今後の見通しは次のようなものになりそうだ。
1 中国政府が公共データの80%を握る。
2 情報化、デジタル化産業が、全産業の最前列へ踊り出る。
3 健康産業は、ビックデータから、精緻データへ。
4 工業ビッグデータは、項目から産品へ。
5 営業ビッグデータは、物量の営業から、精密な運営へ。
6 金融ビッグデータは、厳重な管理から、新サービスの創造へ。
7 教育ビッグデータは、通用する人材の育成から、専門人材の育成へ。
8 ビッグデータの安全は、技術の安全から、総合統治へ。
問題の所在を認識し、必要な手を打っている印象はある。そしてBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)をはじめとする中国IT巨頭は、各産業園の核として関わり、14億人のデータを基に、現実に即した研究を行っている。世界の最先端にあるといってよさそうだ。