アリババ、ついに打倒WeChatを果たす?オフィスツール「釘釘」予想外の快進撃に注目集まる
中国SNSの王者はWeChat(微信)と誰もが信じて疑わない。中国SNS界の巨頭テンセントはWeChatに加え、QQも運営している。馬化騰(テンセント創業者)は、無敵ゆえの“孤独”を経験したとさえ称された。それが新型肺炎による「宅経済化」により、思わぬ対抗者があらわれた。それもアリババからである。
釘釘(Ding Talk)の登場
2月モバイルアプリの、月間アクティブユーザーランキング(Trustdata)トップ5は、
1位 WeChat SNS 10億2985万 0.20%減 (前月比)
2位 QQ SNS 7億2566万 1.94%増
3位 淘 宝 ネット通販 6億5746万 5.78%減
4位 支付宝 金融 5億6374万 17.96%減
5位 TikTok 短視頻 4億7132万 7.52%増
1位2位はテンセント、3位4位はアリババのアプリである。IT界2大巨頭と呼ばれる所以だ。このところ、この4アプリのユーザー数は安定していた。2月、アリババのアプリは、減少したが、代わりに別のアプリを大きく伸ばした。
24位 釘 釘 ビジネス 9862万 196.57%
釘釘の歴史
アリババは2013年、WeChatへの対抗商品「来往」を発表したが、うまく育たなかった。WeChatの地位を脅かすことは全くできず、今度は支付宝(アリペイ)等の“圏子(サークル)”を参考に、オフィス指向を強めた新製品を発表した。それが2015年スタートの「釘釘」である。中国企業の事務効率アップを目指す、オールインワンオフィスツールで、SNS要素も強い。キーワードは「智能」「協同」「以人為本」「デジタル化」である。
アリババは、国内外のビジネス環境をより合理的に変革したい。釘釘は、そのための国内の基本ツールという位置付けだ。しかし2019年までは、それほど目立っていはなかった。まだ、Eメールとワード、エクセルなどのOfficeツール、さらにSkypeやZOOMなどのビデオ会議を併用するのが一般的だったからである。
状況は春節休暇明けに一変する。テレワーク、在宅教育の拡がりにより、ダウンロード数が急増した。詳細は省くが、テンセントの企業微信や騰訊会議等を上回った。そして3月には5億4000万に達した。もはや国民的アプリの水準である。3月MAUランキングが、極めて注目される。
釘釘の内容とは
使い心地はどうだろう。日本語版をスマホにダウンロードしてみた。アイコンはブルーで、Twitterをひっくり返したようなデザインだ。構成は、1メッセージ、2ドキュメント、3ワーク、4連絡先、5発見、の順になっている。
1メッセージは、相手が未読の場合、もう一度通知し、対応を促す機能が付いている。
2ドキュメントは、問題なくOfficeドキュメントがやりとりできる。
3ワークは、なぜかここだけ英語である。承認、ビデオ会議、クラウド、メールについて説明し、利用のメリットを強調している。
4連絡先は、企業、組織、業種、人員規模、地域などを入力し、グループを編成するようになっている。
5発見は、スマートデバイスとの連携や、有料で利用できるビジネスソフトの紹介が載っている。
確かにビジネスユースを、アプリ内でほぼ完結できている。ビジネスを従来のSNSやEメールから切り離すことができれば、心情的にもすっきりするかも知れない。
まとめ
アリババは新型肺炎の影響により、主力アプリ、淘宝、支付宝のMAUを落とした。しかし、釘釘で盛り返し、越境Eコマースの「天猫国際」は絶好調だ。
そして3月末に、総投資額を52億6600万ドルから、220億7500万ドルと2.2倍とすることが伝えられた。新たな情勢に際し、大きな商機を見出したのだろう。とにかくアリババは、テンセントの国民的アプリ、WeChatを初めて射程に収めたようにも見える。今後のせめぎ合い、新たな展開に注目か集まる。