直播電商(ライブコマース)新次元の大激戦へ、ミニプログラムを武器に最後に笑うのはテンセント?
IT巨頭テンセントは5月中旬、2020年第1四半期決算を発表した。営業収入1,080.65億元(1兆6,300億円)前年26%増、純利益270.79億元(4,080億円)29%増、と市場予想を上回る好決算だった。今回の新型肺炎に対して、強靭な抵抗力を示した。しかし課題も明らかとなった。文字から映像へ、急速な進化が進む中国のネット界。テンセントはこれまで通り、主導権を握っていられるのだろうか。そのカギは直播電商(ライブコマース)だ。
直播電商の戦い
中国経営連鎖協会によれば、新型肺炎の防疫期間、商店の70%以上が閉店し、業績は90%以上下降した。一方「宅経済」の恩恵を受けたネット企業も多い。
テンセントはその典型である。収入の34.5%をしめるゲームが373.0億元、前年比31%増、とくにモバゲーは60%増と好調だった。WeChat、QQ等のSNS部門は、251.3億元、23%増だった。しかし広告は停滞気味で、前期(2019年第4四半期)比12%下降した。
CNNICの「中国互聯網発展状況統計報告」によれば、2020年3月、直播電商ユーザー規模は2億6500万、全ネット通販ユーザーの37.2%に達した。また調査機関のiiMediaは、2020年、直播電商市場規模は、9,000億元(1兆3,600億円)になると予測している。4月以降は、直播帯貨(有名人によるライブコマース)が全盛となり、巷の話題を独占している。
現在の市場は、淘宝直播(アリババ)、抖音(海外名TikTok)、快手、の三国志状態である。快手は資本系列ではテンセント系だが、ここへテンセント本体も切り込もうとしている。
WeChatミニプログラム
その武器は、やはり看板SNSのWeChatとミニプログラムである。ミニプログラム(小程序)とは、ダウンロード不要でアプリが使えるミニOSのような優れモノだ。
2020年第1四半期、WeChatのMAUは12億500万に達した。これは全人口の86%をカバーする数字である。それにともにミニプログラムユーザーも順調に増加、DAUは4億を超えた。これは1月比で1億人も増えている。ミニプログラム経由の通販は2019年、8000億元(12兆600億円)のGMV(成約総額)をたたき出した。拼多多に接近するレベルである。
大衆はミニプログラムの使用慣習が身に付いている。つまりミニプログラムでの直播の開催は、非常に有利な地位にある。また直播プラットフォーム開設においても、使用即プログラミングであり、簡単に完結する。同時にWeChatは、支払い習慣を伴う私的領域でもあって、企業、個人ともに、その強い関係性は今後も継続する。直播で簡単にモノを買えるシステムを、最初から提供できているのだ。
ミニプログラム動態調査を行う「阿垃丁」の最新データによると、2020年4月、ネット通販業者の58.9%は、ミニプログラムにおいて直播を行っている。そのうち専門通販業者の4割は、ミニプログラム直播を気に入っているという。また各コミュニティにおけるミニプログラム直播のシェア数も、平均66.3%増加している。シェアした人数は5.2%の増加だった。
ミニプログラムはライブコマースの簡単ツールとして、期待が高まっている。さらに不可欠の存在となれば、テンセントの新たな可能性を見出せるだろう。
まとめ
直播電商は、淘宝直播、抖音、快手の3社+WeChatミニプログラムの戦い、として語られることが多くなってきた。大企業の社長から個人商店主まで、B2CはもちろんB2B業種に至るまで、すべてのビジネスがライブコマースを取り入れる時代がやってきた。戦いは新次元にアップグレードしている。
参入の敷居が低いWeChatミニプログラムは、新参者にとって最もとっつきやすいプラットフォームである。最後に笑うのはテンセント、という筋書きもなくはなさそうである。