中国の“網紅”を支えるMCNは急成長産業?「2020~21年MCN産業趨勢報告」を読み解く
中国では“網虹”(インフルエンサー、KOL)ビジネスが花盛りだ。ネット動画アプリや、投稿シェア型ショートビデオ(短視頻)の普及が、彼らの背景にある。これらライブEコマース(直播電商)業界の発展は目覚ましく、さまざまな分析が行われている。その中から調査会社iiMedia Researchの「2020-2021中国MCN産業運行大数居監測及趨勢研究報告」(以下報告)を取り上げ、今後の網虹ビジネス占ってみよう。
文字時代から動画時代へ
MCN(Multi Channel Network)と聞いて、内容をスラスラ説明できる人は少ないだろう。YouTubeによるMCNの定義は「複数のYouTubeチャンネルと提携し、視聴者の開拓、コンテンツのプログラミング、クリエイターのコラボ、デジタル著作権管理、収益化、営業等のサービスを提供するプロバイダー」である。日本でもYouTuberは、男の子のなりたい職業の上位にランクされるようになった。そしてMCNという場合、まずYouTubeが前提だ。UUUMやVAZ等の企業があり、クリエイター(YouTuber)の育成にあたっている。
中国では、YouTubeはブロックされている。しかし、代わりはいくらでもあり、その幅の広さ、奥行きとも日本の比ではない。小紅書、抖音(海外名Tik Tok)快手、微信(Wechat)、微博、B站、淘宝直播、京東直播、多多直播など、投稿ショートビデオ(短視頻)から、SNS、ネット通販まで、あらゆる有力アプリがその舞台となっている。中国のネット界は、驚くべき早さで、文字から映像への移行が進んでいるのだ。
MCN商業モデル
報告によれば、中国のMCN産業は、2017年の出現以来、急成長を遂げた。2018年の市場規模は、100億元(1550億円)を超え、2020年には245億元が予想されている。MCN企業数はすでに1万社を超え、2020年に2万8000社になるとみられる。ただし、融資件数は減っていて、2016年から、165件、136件、79件、35件と毎年減少している。2018年には、60%近いMCN企業が、エンジェルラウンド、またはシリーズA融資を受けていた。さすがにオーバーストアのようだ。その中国のMCN産業には、7つの業態がある。
1 コンテンツ生産
2 コンテンツ運営
3 セールスプロモーション
4 ネット通販
5 ディ―ル(取引き)
6 知的財産権(版権)の確立
7 知的財産権の販売
各社の業務は、これらの組み合わせから成っている。収益モデルは、広告80.6%、プラットフォーム助成金48.8%、ネット通販35.5%、その他22.6%となっている。
発展の方向
報告によれば、芸能界のスターや、有力“網紅”のコンバージョン率(サイトでの成果=商品申込みや購入を達成した割合)は軒並み75%を超える。
明星(スター) 84.3%
番組MC 83.1%
短視頻“網紅” 82.3%
UP主 78.3% (A站、B站等、動画視聴アプリへのアップローダーの通称)
微博大V 75.3% (微博で多くのファンを持つ人の通称)
こうして直播電商は、2019年には4338億元、前年比326%となり、2020年は9610億元、前年比221%が予想されている。これは全ネット通販の8.7%に相当する。
まとめ
急拡大に伴いMCN産業も、大きな変貌を遂げそうだ。国際化、工業化が進む、とする見方も強い。すると日本のYouTuberたちも、中国MCN業界と契約した方がよい、となるかも知れない。コンテンツ作りからシステムまで輸入するとなれば、ゲーム業界に加え、ネット通販からエンタメ全般にまで、中国に主導権が移ってしまう。考えすぎであることを願いたいが、それほど中国のMCN産業は活性化していることに、留意したい。