中国向けホームページ制作法㉚~アリババ式ネットサービス普及法~
目次
モバイル利用6億人、アリババが支持される理由は?
中国EC最大手、アリババグループ(阿里巴巴集団)の業績が好調です。2018年3月期決算によりますと、本業のもうけを示す営業利益が前年比44%増の693億元(約1兆2000億円)となり、これまでに引き続き右肩上がりの成長を維持しています。
高成長の背景には主力のEC事業の好調があります。アリババグループの流通総額は前期比28%増の4兆8200億元。年間利用者数(年間アクティブコンシューマー)は22%増の5億5200万人、モバイル端末利用者(月間アクティブユーザー)が22%増の6億1700万人で、利用者数の増加が好業績を支えていることが伺えます。
アリババグループは、インターネット環境が整った都市部はもちろん、ネットに馴染みが薄い農村部でも草の根的なサービスの“普及活動”を行っており、利用者拡大のヒントはネット空間だけでなく、リアル(現実空間)にもあるようですよ。今回は、アリババグループがいかにしてECサービスの利用者を増やしているのかをみながら中国向けホームページ制作、運営、ネットビジネスについて考えていきたいと思います。
20年前からECサービス開発と普及を展開
“アリババ式ネットサービス普及法”の具体例をみる前に、アリババグループのこれまでの動きを軽く振り返ってみたいと思います。そもそもアリババグループとはどういった企業なのかということを考えてみますと、新しいネットサービス(特にEC)を普及させていく企業といっても過言ではないでしょう。今でこそ中国では10億人以上のネット利用者がいるといわれていますが、アリババグループではネットが中国でほとんど普及していなかった約20年前からネットビジネス(EC)に目を付けてサービスを普及させてきた経緯があります。
創業者の馬雲(ジャック・マー)現会長は1999年、大企業を鯨、中小企業をエビに例え、「鯨をあきらめてエビをとる」と、独自の情報ルートや巨額の広告費を投じることができる大企業に対し、それらを持たない中小企業でも世界の市場と繋がり貿易の機会を得られるBtoB取引サイト・アリババドットコムを創設しました。
その後、BtoC、CtoCにも事業を拡大していき、“販路を持たず、買い物にも行けない小規模事業者や個人にネットサービスを利用し豊かになってもらう”という試みは、約20年経った現在でも変わらず、その点が年間利用者数アップに繋がっているのかも知れません。
ECサイトの商品を実店舗に陳列
アリババグループのこれまでの歩みを踏まえた上で、ECなどネットビジネスが成熟仕切った中国都市部での戦略をみていきましょう。中国都市部では他社ECサイトなどとのネットユーザーを巡る競争が激しさを増しています。そんな中、アリババグループがネットの既存ユーザーの囲い込みと新たなユーザー獲得の目玉とする戦略がネットと“リアル”の融合です。
提携する、もしくは傘下の小売店でグループの電子決済サービス・支付宝(Alipay)活用による無人レジやネットで築いた物流網による宅配サービスを展開。ECサイトの天猫(Tmall)や支付宝(Alipay)を活用した実店舗への集客、ECサイトの淘宝(タオバオ)で取り扱う日用品をPB(プライベートブランド)として実店舗で販売する取り組みも進んでいるといいます。
実際に商品を手にとりながら買い物を楽しみたい顧客へのネットを通じた快適なサービスの提供で、ネットユーザーを実店舗へ、実店舗の買い物客をネットへ誘導することで、グループのサービスを頻繁に利用するユーザー数を増やしています。
農村部ではサービス拠点設置、相談や商品受け取り
アリババグループは、2014年ころから農村部でもグループのネットサービスを普及させるため「農村タオバオ」などのサービスを展開しています。サービス拠点の店舗では、農民が自宅のパソコンやスマホ(スマートフォン)で注文した商品の受け取りができるほか、店舗のパソコンで店員と相談しながら買い物もできます。
ネットの知識に乏しい農民など農村部の人々にグループのサービスを提案することで、ECサイトでの購入と販売(出品)の両方を促し、従来その地域で販売されていなかった商品が購入できたり、農作物の販路が拡大したりするなど、地域の人々の生活の質の向上に貢献しているといいます。
農村部でもネットと“リアル”の融合を加速
アリババグループは今年に入り、農村部の振興・貧困削減やグループのサービス拡大の取り組みを進めるため、ECを活用した貧困削減のためのプロジェクトを重慶市で始めました。
貧困地域でEC発展や産業振興などを支援し、地域での金融や物流、ビッグデータ活用などの取り組み確立も整えます。各地域で収集したデータを農家の生産調整に利用し、埋もれている特産品に産業としての優位性をつけていく方針です。
また、グループの教育機関で貧困地域の農民や起業家にECに関する知識を深め、グループの中核となるEC事業を中国に隅々まで浸透させていく計画です。さらに、日本貿易振興機構(ジェトロ)ビジネス短信(2018年5月2日)によりますと、アリババグループは今年4月、投資会社の五星控股グループと戦略提携。五星控股グループ傘下のO2O(Online to Offline)プラットフォームで、1万5000余りある中国の農村で、小売店8万店が加盟するネットワークを持つ「匯通達」と物流システム構築などで協力し、オンラインとオフラインを一体化させた新たな形の小売りも農村部で展開させていきます。
タイ産品をECサイトで販売、人材育成支援も
アリババグループが目を向けるのは、中国国内だけではありません。シンガポールのインターネット通販企業ラザダへ投資したり、ジャック・マー会長が部下を引き連れてイスラエルを訪問したりするなど、東南アジアを中心とした海外市場開拓と貧困問題解決に意欲を示しています。特に、中国人旅行者に人気で、中国とも親交の深いタイとの繋がり強化を進めています。今年4月にはジャック・マー会長がプラユット首相と会談したほか、タイ政府との間で次の4つ覚書(MOU)を締結しました。
①デジタル技術やEC分野における人材育成支援を支援
②観光分野のデジタル・プラットフォーム開発の支援
③コメやドリアンなどのタイ産農産品をアリババグループのサイトで販売
④タイを中心に近隣諸国との物流サービスの効率化
ネット通販を中核とした新サービスを次々と生み出し、中国国内外へ普及させていくアリババグループ。その“アリババ式ネットサービス普及法”は、ネット通販と物流、金融、小売などの他業種との連携、中国農村部の人々や他国の重要人物とのface to faceの付き合いなのかも知れません。
いずれにせよ、人々の抱える問題を解決するようなサービス開発と、サービス提案こそがその根本なのではないでしょうか。中国向けホームページ制作や運営、ネットビジネスにおいても中国の人々のニーズとかけ離れたものでは意味がなく、そういう意味では“アリババ式ネットサービス普及法”から学ぶことは多いような気がします。
参照:https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/05/a9843025798a42ac.html
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