中国のユニークなSNS、Douban(豆瓣)におけるマーケティング
Douban(豆瓣)は中国ではそれほど知られていないが、2005年頃からあり今でも広く人気を集めるSNSプラットフォームの一つだ。登録ユーザーは約6,000万人おり、未登録のユーザーも1億5,000万人くらいいる。実はこのSNSの独自機能の1つに、未登録ユーザーであってもサイト機能の90%を利用できる点がある。
ニッチなユーザーをターゲットとするブランドにとっては、Doubanでマーケティングできることは、他にはないチャンスが提供され、顧客を探し出す興味深い機会を与えられることになる。この記事では、Doubanのオプション機能を詳しく見ていくこととする。
もちろん、DoubanはWeiboやWeChat、Renren(人人網)、Qzone(QQ空間)と比べるとユーザー数はかなり少ない。Doubanが際立っているのは、献身的なコアユーザーが創り出す独特のカルチャーだ。Weiboとは違って、Doubanはサラリーマンで、洗練された中国の都市住民の心を動かす。Doubanの創設者のYang Bo(杨勃)博士によると、ユーザーのほとんどは大都市に住んでオフィスで働く会社員やアーティスト、フリーランサー、学生だという。アートやカルチャー、ライフスタイルに対して共通の関心を持つ人々なのだ。
Doubanは実にユニークで並みはずれた中国のSNSである。大まかに説明するなら、Amazonの書評と、映画情報サイトのIMDb、ブログサービスのBlogger、音楽系SNSのMySpace、音楽・動画共有サイトのPandora、画像共有サイトのPinterestを1つのプラットフォームにまとめ、洗練化したハイブリッドメディアだ。
Doubanの中核となるのは、以下のようにグループ化されたコミュニティである:
• 書籍セクション
書籍についてのレビューや議論を行う場で、中国版Amazonから該当書籍を直接購入できる。Doubanの収入源の一つ。
• 映画セクション
imdb.com(中国で定期的にブロックされる)とよく似ており、映画レビューや最新ゴシップの主たる投稿欄。ユーザーはここでチケット予約や、近くの映画館の座席予約もできる。
• 音楽セクション
恐らく最も人気のセクション。若いミュージシャンが楽曲の投稿や宣伝を行うためのプラットフォーム。昨今のMySpaceと似たようなものだ。
Doubanのサイトには他に、興味のある各分野に分類されたグループがあり、ファッションやエンタメ、写真、テクノロジー、ライフスタイルなどの各グループが存在する。
次に同城(都市/City)セクションがあり、その街の近辺で行われる様々なイベントが紹介されている。音楽フェスや展示会、映画上映、劇場公演などの情報がある。ゲームや共同購入、デート、その他、地元のアクティビティに一緒に参加する人を募集しているセクションもある。
次に、音楽ストリーミングサービスのDouban.FMがある。構成や機能がPandoraとよく似たサービスだ。よく聴いたりスキップした曲の履歴に基づいて、好みに合った楽曲を流してくれる。
最近の試みとして、Doubanはもっと多くの収益を生み出すため、まだベータ版となるStuff(东西)というセクションを追加した。クールなアイテムを見つけて買うための場だが、それはTaobao(淘宝)のバザール方式とは全く異なる。
海外サイトで一番近いのはFancy.comだろう。商品や見せ方がDoubanのStuffセクションと似ている。アイテムをレビューしたり、お気に入りやウィッシュリスト、ショッピングカードに追加して購入もできる。Stuffセクションは個人的なスタイルを探している買い手をターゲットにしており、斬新で洗練されたショッピングサイトだ。最安値のバーゲン品の検索はほとんど意識されてはいない。
Doubanは過去にユーザー基盤の成長の遅さとともに、広告制限によってちゃんと収益化ができていないと批判されていた。コミュニティページでは広告オプションが制限されているのは事実で、広告専用のスペースはほとんどない。こういったスペースでの広告表示は1000回あたり15~20人民元(約2.14~2.85米ドル)と極めて高額な傾向があり、比較可能なサイトの広告費と比べ桁違いに高い。
新しいStuffセクションの追加により、Doubanはその独特で洗練された個性を維持しつつ、将来的に収益向上が狙える方法を見つけたようだ。そしてなお、ユニークなモノの購入を通して個性を表現したいという、同サイトの主要なユーザー基盤である都市エリートの欲求を巧みに利用するのである。
総合すると、Doubanはマーケティングバリューの視点から見ると大きなポテンシャルを持っているのに、非常に過小評価されている中国のSNSサイトの1つに思える。新しいStuffセクション経由で商品を宣伝できるという紛れもないオプションに加え、Doubanでのマーケティングは洗練された販促キャンペーンを展開する際の最上の選択肢となりうる。Doubanのコミュニティやグループ機能といったプラットフォームを通して、高収入の都市部の消費者をターゲティングできるのだ。
高級ブランドのいくつかは、Doubanにブランドステーションと呼ばれる拠点を設けている。一例をあげると、ブランドコレクションを特徴とするアディダスは、完成品やイベントを通じて積極的に宣伝を行っている。
具体的には、サイト訪問者やフォロワーは、アディダスがしばしばユニークでビジュアルに訴えかけるものだという、ユーザーが制作したコンテンツを閲覧したりコメント投稿することによって、深く関わりを持つことになるのだ。以下にAdidas社のDoubanのブランドステーションでのほんのひとコマを紹介しよう。
アディダス社のDoubanにおけるマーケティングの一例:
ユーザーが制作したAdidasを紹介するコンテンツの一覧:
「アディダスにインスパイアされる」という作品の制作者に関するストーリー動画:
アディダスの最新コレクションを取り上げたある企業によるコンテンツ:
Adidas社主催のコンテストで、ユーザーに手持ちのストッキングとソックスのコーディネートした画像の投稿を促すキャンペーン:
最後に、中国の比類なきSNSサイトの1つDoubanは、マーケティング担当者から見落とされがちである。洗練度を増していく大都市のユーザー基盤に訴えかける新たな場となりうるうえ、Doubanは最近同サイト内でのマーケティングを促進し、マーケティングに使えるプラットフォームとツールを開発した。これらは中国のネットコミュニティに存在するニッチなセクターに効果的にターゲティングできるだろう。