中国で人気爆発 “旅かえる”の開発者に聞く
中国で空前の爆発的人気となっているスマホ向けゲームアプリ「旅かえる」。以前、“中国で大人気「旅かえる」から考える日本と中国のねじれ現象” と“中国で爆発的人気の日本発スマホゲームアプリ「旅かえる」”で紹介しましたが、この度“株式会社レクサー”による電話取材の内容を提供頂いたので紹介いたします。
“旅かえる”中国では“旅行青蛙”
小屋に住む、かわいい緑色の小さなカエル君を育てるゲームで、カエル君は小屋の中で食事したり、文章を書いたり、鉛筆を削ったりして、ときには、本を読みながらウトウトすることもあります。
庭先に生えるクローバーを収穫し、そのクローバー(通貨)で買い物をして、カエル君に「お弁当」や「道具」などの旅支度をしてあげると、カエル君はふらっと旅立ち、旅の途中で各地の「名産品」や「想い出の写真」を送ってくれたりして、いつの間にか帰ってきます。(クローバーが育つのを待てなければ、課金して買うこともできます)
“株式会社レクサー”が電話取材
この度、“株式会社レクサー”の“植木なお”氏が「旅かえる」のプランナーである“株式会社ヒットポイント”の“上村真裕子”氏に電話取材を行いました。上村氏は気さくな26歳の女性で快く取材に応じてくれたといいます。取材を行った植木氏も中国滞在5年の経験を持つ女性で、女性同士ということもあってスムースに話が弾んだようです。その取材内容を筆者に伝えて頂けたので早速記事にして紹介するしだいです。
“株式会社レクサー”の取材内容
先ずは、開発から中国での爆発的ヒットにいたる経緯を尋ねたたところ「もともと日本人向けに作っていたわけではないが、日本語のみの対応になっていたので海外で、特に中国で爆発的な評価を頂けたのは意外だった」といいます。
中国でヒットしたきっかけについては、「日本の文化に興味を持っている若者が多い」こと、また国民性の違いから「日本とは違い、自分が良いと思った事をSNSで拡散する」こと、そして、去年の末くらいに女性の間で恋愛ゲームが流行り、そのゲームの中で恋人を作った流れで、「旅かえる」は子供を育成するゲームのように思う人が多いようで、その様な幾つかの要素が重なったためではないかと推測しているとのことです。
またターゲットについては地域を限定するつもりはなかったが、企画の段階で旅行をテーマにしており、上村氏が行ったことのある地域とか、行ってみたい所やお勧めしたい所をゲームで取り上げているので、「海外の人には馴染みのない未知の所であったりすると思うので、そういった意味では日本人向けだったのかなと思う」とのこと。
そして、「今回は日本の各地を取り上げた日本バージョンだが、今後は中国バージョンとして広大な地域を幾つかに分けてシリーズ化するのも面白いと思うが、そういった計画はあるか」との問いかけには、「今は行き先が10県だけなので、今後のアップデートで残り37都道府県全てを巡らせてあげたい」とのことで、「メインはそれを優先して行い、海外版についてはまだ考えていないが今後計画して行きたいとは思っている」そうです。
次に中国メディアの反応について尋ねると、メールや電話で中国語版とか商品化についての問い合わせが有り、「商品化については前向きに考えていきたいとは思うが、まずはゲーム自体のボリュームアップで充実させたいのと、お客様に満足頂ける商品をお届けしていきたいので、気長にお待ち頂きたい」とのことです。
中国においては、許可を取らずに勝手にグッズ化されていることを伝えると、その様な不正についての情報は届いているが、コンプライアンス面については、お客様への迷惑とかも考えて、現地企業(代理店)とかを通して対応していくとのこと。
今後の展望については、前述の通り残り37都道府県を巡るための目的地・お土産・風景写真の追加(アップデート)を行い、ゲーム以外では、商品化や、具体的には決まっていないがイベント等も考えているとのことで、また「中国の新聞では課金が2億円」との話かけに対して「課金をして頂くのはありがたいが、課金を求めるというより、長くゆっくり遊んでほしい」との言葉が返ってきました。
会社に関する質問では、名古屋(本社)と京都に開発事務所が有り、チームごとにゲームを企画・開発しており、上村氏は京都の開発チームで以前「ねこあつめ」を開発したチームとのことで、「旅かえる」に携わるスタッフは上村氏のほかマネージャー、デザイナー、プログラマーの僅か4名とのこと。(同社は名古屋と京都の開発拠点を合わせて30人未満の少数精鋭です)
取材の最後のほうで上村氏は「仕事からプライベートまで忙しい方が多いので、気軽に気負いをせずに癒されるアプリを作りたいと想っていたが、その『想っていた形』になったのではないかと思う」と、自分の心が伝わり満足しているかのように語りました。
心が伝わるアプリ
仕事やプライベートに多忙な毎日を送る現代社会にあって、「旅かえる」は、ひと時の癒しを求める人々の心を射る「キューピットの矢」なのかもしれません。プランナー上村氏の想いがそのままゲームアプリという形のなかに込められていて、それが言葉ではない形で伝わっているのでしょう。
どこにも狙いを付けずに放ったその「キューピットの矢」が、中国人の心を射ったのです。言葉なしで「優しさの心」が伝わったのです、その証拠にゲーム自体は日本語のままなのです。そして「長くゆっくり遊んでほしい」という想いは、旅の目的地を全国47都道府県に増やす事により伝わることでしょう。(全国制覇の後はどうなるのかな?)
コンプライアンスの問題
中国では「旅かえる」の人気に便乗して無断コピー等を行っており、中国メディアでは「“旅かえる”が中国でバカ流行りしているため、中国企業が自社マーケティングとしてどんどん著作権侵害している」として京東(JD.com)、ofo(オッフォ)、魅族科技(メイズー)、優酷網(Youku)を名指しで指摘する記事もあります。
実際に調べてみると、中国の淘宝(タオバオ)では、無許可でこんなにも沢山のカエル君グッズが販売されています。
https://s.taobao.com/search?q=%E6%97%85%E8%A1%8C%E9%9D%92%E8%9B%99&type=p&tmhkh5=&spm=a21wu.241046-jp.a2227oh.d100&from=sea_1_suggest&catId=100&bcoffset=4&ntoffset=4&p4ppushleft=1%2C48&sort=default
中国でのコンプライアンスにおいては、株式会社ヒットポイントは現地の代理店と組んで対応していくとの事ですが、こと中国に関しては、商品付加価値、知的財産権などの権利保護には充分な留意が必要であり、今後の商品化においても一歩先の対策が求められそうです。そのためには、中国に精通した信頼できるサポート企業と組む事が欠かせません。
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