中国で今、ライブストリーミングが熱い
目次
ライブストリーミングのプラットフォームは成長分野
ライブストリーミングのメリットは、顧客との間のコミュニケーションを双方向的かつリアルタイムに行えることです。顧客とのエンゲージを高めることができ、SNSによる爆発的な拡散も狙えることからECマーケティングでの活用が急速に広がっています。中国では、2015年第4四半期から2016年第3四半期までの期間でライブストリーミングの分野に対して行われた投資額の伸び率は400%に達し、インターネット分野全体への投資の伸びが25%だったのと比較しても、いかに成長が期待されているホットな分野であるかがわかります。中国でホットな分野であるライブストリーミングのプラットフォームについて解説していきます。
参入が相次ぎ競争激化
中国でのライブストリーミングの本格的なブームは2015年9月の「熊猫TV」から始まった言われています。その後、腾讯(Tencent/テンセント)がネットゲーム系のライブストリーミングである斗鱼TV(Douyu TV)に出資をしたことでネットゲームやオタク系のライブストリーミングが注目を集めるようになりました。成長が見込まれる有望な投資先として活発な投資が行われ、いろいろな分野からの参入が相次ぎました。2016年5月~6月頃が参入のピークだと言われ、従来からの動画配信APP(サイト)やキュレーションメディア、さらにはEC事業者などが相次いで参入し、多いときには1時間のうちに3つから4つものの新しいライブストリーミングのプラットフォームが出現したと言われています。この結果、多くのライブストリーミングのプラットフォームが乱立する結果となり、競争が一挙に激化したのです。次に中国の代表的なプラットフォームを紹介します。
一直播(yizhibo)はいきなり有名人路線でブレイク
今一番注目を集めているライブストリーミングのプラットフォームが「一直播(yizhibo)」です。「一直播(yizhibo)」はスマホ動画アプリ「秒拍(MiaoPai)」を運営する一下科技(Yixia Technology)と微博(Weibo/ウェイボー)を運営する
新浪(Sina/シナ)とが2016年5月にローンチしたライブストリーミングのプラットフォームです。発表と同時に行われたのが、中国でも人気のある韓流スターのソン・ジュンギがアジア各国を巡回するファンミーティングツアーのライブストリーミングでした。このライブストリーミングではソン・ジュンギ自身が何度も視聴者とチャットで交流するなどして、累計6700万人の視聴があり、獲得した「いいね」は2億を超えたそうです。「一直播(yizhibo)」では立ち上げの翌月から、姚晨、周迅、李氷氷、李宇春といった中国の有名スターがライブ発信を開始して一気に知名度を高めました。人気スタートのコラボ以外にも俳優の賈乃亮が「一直播(yizhibo)」のCCOに就任していて、人気スターを経営層に取り込むという手法でも注目を集めています。微博(Weibo/ウェイボー)の膨大なユーザーとスターの人気とを組み合わせる手法で一気にブレイクしたのでした。
映客直播(inke)が目指すのはライブストリーミングの多様な可能性?
「映客直播(inke)」は「一直播(yizhibo)」が登場するよりも1年早くローンチされたライブストリーミングのプラットフォームです。中国のライブストリーミングとしては老舗といってもよく、これまで常にスマホアプリのランキングでもトップ3を維持してきています。1000人を超える有名人、5000人を超えるネット有名人、1万人を超える学生、10万人以上のイケメン・美女たちが発信をしていると言われています。リオデジャネイロオリンピックの期間中に女子水泳のメダリスト・傅園慧選手が「映客直播(inke)」を使ってライブ配信を行い天然キャラを炸裂させたことも「映客直播(inke)」の人気につながりました。「映客直播(inke)」は「誰もがライブを発信できる」ことをコンセプトにしているようです。2016年11月11日の天猫(T-mall)の「独身の日」セールには阿里巴巴(Alibaba/アリババ)が,数千万元の広告料を拠出し、ライブストリーミングが有力な広告の媒体として認知されるようになったことを示しました。また、北京で大気汚染が原因で小中学校などが休校となったときに、多くの学校の教員が「映客直播(inke)」を利用して授業を行ったことで、「教育+ライブストリーミング」の可能性を拡大しました。
花椒直播(huajiao)はスター養成路線
「花椒直播(huajiao)」は毎日100万件ものストリーミング配信が行われ、1日のアクティブユーザー数が500万人を超えるという巨大なプラットフォームです。2015年5月に公開され、プラットフォームの高画質と高音質化に力を入れ言われています。「花椒直播(huajiao)」も他のプラットフォームと同様に、人気芸能人などとのコラボを行っているのですが、特に力を入れているのが「花椒直播(huajiao)」の一般の配信者を真のスターに育て上げるという路線です。中国のライブ配信者は全くの素人が行う場合と、日本のタレント事務所のようなところに所属して、事務所側からは一週の配信日数や時間、テーマなどが指定され、このノルマを達成すると収入が得られるというパターンがあるそうです。「花椒直播(huajiao)」では大々的な「スター発掘オーディション企画」を行っています。これによって「花椒直播(huajiao)」の普通の発信者でも大スターになれるという夢を持たせることになり、多くの配信者を引きつけ、プラットフォーム自体の量と質の底上げに結びつけるという戦略のようです。また、「スター発掘オーディション企画」自体も魅力のあるコンテンツの一つになっていて、他のプラットフォームとの差別化につながっています。ECとの提携では京東(JD.com)や蘇寧(Suning)とコラボを果たしています。
ゲーマー・オタク系の斗鱼TV(Douyu TV)もECと提携
「斗鱼TV(Douyu TV)」は2014年から公開されている、ゲーム・オタク・音楽・スポーツなどが主要なコンテンツです。特にゲームプレイの実況が「斗鱼TV(Douyu TV)」の有力なコンテンツで、ゲームのプレイヤーが喋りながらゲームをしたり、ゲームをプレイしている動画に対してリスナーがコメントしたりするものです。トッププレイヤーたちはゲームのテクニックだけではなく、トーク力やコミュニケーション能力、さらにはビジュアルも兼ね備えた人たちで、年収は数億円にも上るそうです。彼らは「斗鱼TV(Douyu TV)」と直接契約を結んで、契約金を得ていると言われています。人気のある配信者だと1度に10万人以上の視聴があるそうです。「斗鱼TV(Douyu TV)」は今後はゲームだけでなく総合的なライブストリーミングのプラットフォームを目指していて、大手ECサイトの「網易考拉(Kaola.com/ワンイーコアラ)」との提携が伝えられています。
「ライブストリーミング+EC」こそが一番熱い焦点!
2016年には乱立気味に多くのプラットフォームが現れたのですが、BATSが参入するようになって、これらの後ろ盾のない中小のプラットフォームは次第に淘汰される傾向にあります。主要なプラットフォームはECサイトと提携し、同時にECサイトが独自のライブストリーミングのプラットフォームを持つようになり、ライブ配信とネットショッピングの融合の動きが急速に進んでいます。これまでは、動画配信は主にイメージ形成やブランディングに使われていたわけですが、ライブ配信とECサイトとが融合することで、ライブ配信が、ショッピングでのコンバージョンまでの導線として機能するようになってきています。ライブなのでこの導線は限りなく短くなり、これからのKOLにはリアルタイムに「買う気にさせる能力」も求められるのかもしれません。2017年は「ライブストリーミング+EC」の動きから目が離せません。