福井県のインバウンドの取り組み「外国人が魅力を感じる“禅”」
福井県の2016年の訪日外国人宿泊者数は54,000人で全国最下位でした。そんな福井県が今、訪日外国人誘致に掲げているのが、自然に恵まれた風土・風景と重なる「禅」というキーワードです。訪日外国人観光客の延べ宿泊者数全国最下位からの脱出を目指す福井県の取り組みを、応援も兼ねて紹介いたします。
目次
「禅」とは
「禅」は、大乗仏教の一派である「禅宗」の略、もしくは、サンスクリット語のdhyāna(ディヤーナ)の音写で「禅那」(ぜんな:仏教で心が動揺することがなくなった一定の状態)の略ですが、また姿勢を正して坐った状態で精神統一を行う基本的な修行法の「坐禅(座禅)」の略としても使われており、ここでは「坐禅」を指しています。坐禅はMeditation(瞑想)と翻訳される場合がありますが、正しくは眼を閉じて思考する「瞑想」と「坐禅」は別概念なのです。なお、「瑜伽経(ゆがきょう)」に説かれる古典的な意味でのヨーガ(瑜伽)も、坐禅と同じものです。世界的にはヨーガの方がよく知られているかもしれませんね。日本での坐禅は、宗教・宗派とは無関係に精神修行として寺などで僧侶が監視している中で坐禅を行う形をとる修行体験を、一般の人々向けに行っています。自我を極力排除して、外界を全感覚で感じ取る「無」の状態になり自身の境地へ向かうということが知られていますが、ただひたすら心を落ち着け座り続けることで集中力を高める目的で修行とすることもあります。どちらも自身の悩みや疑問から逃げずに、己自身に対峙する精神修行が坐禅です。通常の生活の場でも坐禅を行う事はできますが、お寺などの静寂な場で行う方がより効果が上がります。
外国人観光客にとっての「禅」のイメージ
福井県の2015年度の調査によると、「禅」に魅力を感じる割合は欧米人で90.2%、アジア人で87.3% となっており、本来の「宗教としての禅」の枠を超えて、「人と自然・環境との調和」、「静寂、落ち着き」、「癒し、リラクゼーション」などの印象が持たれているのは確かであり、外国人には自己対話の一環として「禅」の概念が新鮮なイメージで捉えられているのでしょうか。
「Zen, Alive. Fukui」というブランド
福井県はインバウンド誘致に向けて 「Zen, Alive. Fukui」 というブランドを展開しています。県の強みを「四季折々の自然、里山里海湖」「人々の生活に息づく歴史・伝統文化」「自然・環境の恵みである、豊かな海の幸、里の幸」のほか、「健康的な和食文化」「受け継がれてきた伝統工芸の技」「暮らす人々の温かな人間性、篤い信仰心と精神文化」「学力体力日本一の教育県」と言ったことを挙げて、これらに加えて、福井のライフスタイルや観光資源の背景・底流には、「禅」のコンセプトで表現される精神文化が息づいているというストーリーを発信して福井の魅力をアピール しています。
「Zen, Alive. Fukui」ブランドの定義
福井県ではインバウンド誘致のブランド「Zen, Alive. Fukui」を次のように定義しています。
【 誰に 】 日本の歴史や伝統的な文化・食に興味・関心のあるアジアや欧米豪等の個人旅行リピーター層に対して
【 どこで 】 まだ訪日外国人にはあまり知られていない新しいデスティネーションFUKUIの地において
【 何を 】 里山里海湖、寺社、食、伝統工芸、生活文化などの体験を、地元の人々との触れ合いを通して
【 提供する価値 】 訪日外国人観光客が溢れる観光地では味わえない、ゆったりとした自分だけの特別な時間、心身を癒し、深い印象を残す旅
ブランドと歩調を合わせる「Fukui Tourism Guide」
福井県では、充実した外国語版の観光サイト「Fukui Tourism Guide」を運営しています。対応言語は 英語の他に、中国語(繁体・簡体)、韓国語、ロシア語 に対応しており、訪れるべき場所、おすすめの観光、観光ルート、名物、おみやげなどが丁寧に解説されています。また、国際空港からのルート案内などの他、福井県観光連盟が製作した観光名所を紹介するYoutube動画なども紹介されています。「ふくいドットコム」から各言語対応へとリンクしていますが、もう少し表示を強調してアピールした方が良いのかな?と思われます。
福井にある禅の精神
以下は「Fukui Tourism Guide」で紹介している「福井にある禅の精神」です。
The spirit of Zen found in Fukui
「禅」という言葉は、最近、多くの言語で使用されており、エレガントなデザインから、涼しくてリラックスしたものまですべてのものに関連付けられています。実際、「禅」という言葉はサンスクリット語のディヤナから来ており、「瞑想」、「心の沈静化」、「集中」と「平和」を意味します。 禅仏教は大きくソート学校とリンザイ学校に分かれています。福井県は永平寺があるところです。 日本全国の曹洞宗の僧侶が毎日禅を行う永平寺は、日本の仏教の僧院の一つです。禅仏教は禅宗(十字架の姿勢で「坐禅」)で有名です。永平寺と大安寺はどちらも観光客に禅を体験する機会を提供します。永平寺は、ミシュラングリーンガイドジャポン(日本版)で2つの星を獲得しました。
これは、もちろん英語表記ですが日本語に訳したものです。
近年のインバウンドのコト消費化や、わかりやすい観光資源を持っていない地方こそ、インバウンドの地方誘致のためには、このようなコンセプトや世界観を重視したプロモーション戦略が重要かもしれません。この福井県の取り組みは、他の観光資源が少ない地方にとっては良い参考となるのではないでしょうか。政府観光局(JNTO)も中国向けインバウンドプロモーションに「昇龍道エリア」と称して中部・北陸地方を龍に見立てた観光周遊ルートを取り上げて、中国で影響力のあるウェブメディアやインフルエンサーを招請しており、このルートには福井県も含まれています。福井県ガンバレ!!
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