支付宝 VS 微信支付!熾烈な争いのゆくえ
目次
微信の利用者を取り込む微信支付
中国でのスマートフォン決済が急増している。2017年のモバイル決済総額は200兆元(3300兆円)というとてつもない額になった。スマホ決済の増加を牽引しているのは、中国EC最大手の阿里巴巴集団(アリババグループ)電子決済サービス支付宝(アリペイ)と、テンセントが提供する電子決済サービス微信支付(ウィチャットペイ)だ。中国のIT企業であるテンセントは中国版LINEといわれるスマホ向けチャットアプリ微信(ウィチャット )を展開している。
(出典:http://finance.sina.com.cn/roll/2018-03-05/doc-ifyrzinh3496096.shtml)
ビッグデータとAIで顧客囲い込みをはかる支付宝
ECの決済方法として中国で先にシェアを伸ばしたのは支付宝だ。一方、微信アプリに決済機能を盛り込むことで微信利用者をうまくスマホ決済に誘導し、利用者を急激に増やして支付宝からシェアを奪ったのが微信支付である。支付宝は微信支付に対抗するため、ビッグデータやAIを活用し顧客の囲い込みを行っている。この記事では、白熱する支付宝と微信支付のシェア争いについて紹介していく。
スマホ決済シェアは支付宝5割、微信支付4割
まず支付宝と微信支付のスマホ決済を巡るシェア争いの歴史を軽く振り返ろう。電子決済サービスを中国で初めて普及させたパイオニアといっても過言ではないのが、阿里巴巴集団が提供する支付宝だ。
支付宝はもともと2004年に阿里巴巴集団のECサイトでの取引の際、売り手と買い手の支払いトラブルを防ぐために作られたオンライン決済システムだった。当初はECサイトでの利用がメインだったのだ。
スマホの普及とともにネット通販での利用に加え、振り込みや公共料金の支払い、小売店での支払いにも利用用途を拡大していった。決済金額ベースの中国市場シェアは2014年時点で8割を占めるようになったのだ。
微信支付がサービスを開始したのは支付宝より10年遅い2014年だが、スマホ向けチャットアプリ微信の膨大な利用者を1~2年の短期間で取り込んだ。微信支付は2017年の第2四半期までに、モバイル決済市場のシェアにおいて39.8%を占めるようになったのだ。
(出典: http://www.infzm.com/content/130214)
微信支付4億人が利用、支付宝に迫るアクティブユーザー数
微信支付が支付宝から市場シェアを奪うことができたのは、ネット通販や公共料金の支払いに加え、小売店などの実店舗での決済に対応できたからだとみられている。微信支付を展開するテンセントは、タクシーや飲食店、理髪店、食料品店、雑貨店などあらゆる店舗に人海戦術でスマホ決済用のバーコードを提供した。
飲食店など複数人で支払う際の「割り勘」機能や現金のプレゼント機能なども功を奏した。2016年の時点で微信支付は4億のユーザーを抱えており、5億以上のアクティブユーザーを抱える支付宝に迫っている。
(出典:https://baike.baidu.com/item/%E6%94%AF%E4%BB%98%E5%AE%9D/496859?fr=aladdin)
テンセントは微信支付の利用範囲を医療、教育、社会保険、交通に広げていくほか、中国全土や日本をはじめとする中国人観光客が訪れる海外の国々でも普及させている。
(出典:https://baike.baidu.com/item/%E5%BE%AE%E4%BF%A1/3905974?fr=aladdin)
提案、優遇で1人当たり売上高アップをめざす支付宝
微信支付はあらゆる決済に対応する、いわば待ちの戦略であると言えるだろう。各支払いに対応したというだけで、ある意味受け身の戦略だからだ。
一方、微信支付に市場シェアを奪われる支付宝としても黙って見ているわけではない。支付宝を提供する阿里巴巴集団はネット通販で利用者のお目当ての商品を提案するほか、信用力のある顧客を優遇する攻めの戦略で利用者の囲い込みを図っている。支付宝は利用者1人当たりの売上高アップを狙っているのだ。
具体的にはビッグデータ解析や人工知能(AI)を活用している。AIを使った画像認識システムでは、スマホで撮影すると阿里巴巴集団のECサイト淘宝(タオバオ)に出品されている商品群の中から類似の商品を検索できる。
また、支付宝は利用者の利用実績を基に個人の信用力を評価するサービスを開始した。芝麻信用(セサミクレジット)と呼ばれるこの機能は、スマホ画面で利用者の信用力が算出され、評価が高いほど優遇サービスが受けられるというものだ。
優良と判断された利用者は分割手数料やホテル宿泊のデポジットの免除、低金利融資が受けられるなど優遇される。信用力の高い顧客情報は中国の小売企業などにとっても価値が高く、阿里巴巴集団はさまざまな企業と連携し、優良顧客を対象にしたサービス開発を進めていく方針だ。
阿里巴巴(アリババ)、騰訊(テンセント)とも業績好調、今後の行方は
微信支付と支付宝の市場シェア争いは、微信を提供するテンセントと、淘宝(タオバオ)や天猫(Tモール)などのECサイトを運営する阿里巴巴集団との闘いである。中国のスマホ利用者を巡る争奪戦の縮図といえるだろう。
テンセントはゲームコンテンツが成功したこともあり、2017年の純利益が74%増。阿里巴巴集団の2017年第1四半期の売上高は56%増、2018年の第1四半期は売上2500億元(4兆円)超えで58%増となっている。両社ともに業績は右肩上がりだ。
(出典:http://www.afpbb.com/articles/-/3168491
https://www.sankeibiz.jp/business/news/170519/bsl1705190857004-n1.htm
https://this.kiji.is/365118244220306529?c=113147194022725109)
両社の異なる点といえば、騰訊は微信の利用者数10億人を突破させるなど利用者数を急激に増やしているのに対し、阿里巴巴集団の支付宝の利用者数は約5億と伸び悩んでいる点だ。もちろん支付宝はチャットアプリではないため、モバイル決済アプリ兼チャットアプリとして利用できる微信とは単純に比較はできない。しかし、単純な月間アクティブユーザーの比較で考えると、微信は確かに脅威だ。
テンセントの微信はコミュニケーションツールとしての機能はもちろん、スマホゲーム、クラウドサービス、スマホ決済など多様な機能が利用者数の増加と好業績を牽引している。2018年現在、単純に純利益の数字で比較すると、テンセントの方が支付宝を上回っているのも事実だ。
(出典:http://www.yxdown.com/news/201807/407879.html)
一方で阿里巴巴集団は、1人当たりの平均購入額が3割以上増えるなど、ネット通販の売上高アップが、好業績を支えている。越境ECサイト天猫国際からの利益も大きく影響しているだろう。
しかし、一般的に利用者数が大きいほどデータ解析やサービス提供で有利になるといわれている。月間アクティブユーザー10億を誇る微信を提供するテンセントの脅威が、阿里巴巴集団や支付宝を脅かす展開は今後も続きそうだ。