中国最大の中国ブランド自動車メーカー誕生の兆し

2017年12月1日、中国国有自動車3社が戦略提携に合意し、3社統合構想の実現に向けて前進したと報道された。合意に至ったのは「重慶長安汽車」「東風汽車集団」「中国第一汽車集団」の3社だ。

中国国有自動車3社合併に拍車

中国は電気自動車(EV)や自動運転などの新技術開発に力を入れてきたが、12月1日に「重慶長安汽車」「東風汽車集団」「中国第一汽車集団」の中国国有大手3社が包括的な戦略提携で合意したと報じられた。

提携した3社の自社ブランド車の販売は中国が中心で400万台に満たず成長が課題となっていた。3社は中国ブランド車の国際競争力を引き上げるために「国家チーム」として3社統合構想を掲げていたが、この戦略提携はその布陣の第一歩と思われる。

今回の合意は新技術開発に加えて「自動車の製造や部品調達」「海外進出」「新しい販売手法」などの分野での包括的戦略提携であり、さらには経営トップが互いに入れ替わるなど3社統合の色が鮮明になりつつある。
（出典：https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2414419001122017FFE000/）

中国の自動車販売シェア

中国における乗用車販売シェアの半数以上は外資ブランドが占めており、その上位は独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラルモーターズ(GM)や日本大手などだ。

＜中国の国別ブランド乗用車販売シェア＞

中国汽車工業協会発表データより集計

＜中国の2017年1月〜12月累計の販売メーカーTOP10＞

＜中国での日系メーカーの新車販売台数(各社発表)＞

（出典：https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_china_2017）

日系メーカーは2017年の中国新車販売も引き続き好調を維持しており、日産が日系メーカー4社の中で販売台数首位を獲得している。日産自動車の車種別では、ティアナやシルフィといったモデルが人気のようだ。

中国の展望

中国は国内の自動車産業を将来的にドイツや日本などと肩を並べる水準まで発展させる目標を掲げている。3社の提携分野は極めて広く、製造や部品調達、新技術の開発など企業の競争力の根幹にかかわる部分でも協力しているのだ。

そのため、3社統合が実現する可能性は高いといえるだろう。中国は「強力な国有の中国ブランド車メーカーを作り上げる」という構想もあり、3社がその中心となるものと思われる。

中国は世界の指導的な役割を担いたいとの願望を抱いていることも忘れてはならない。習主席はスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でグローバル化や自由貿易の重要性を強調し、中国が世界でより大きな役割を担う意思を示した。

そして世界のリーダーである米国がパリ協定の離脱に続いてTPPも離脱した今こそ、中国は「世界リーダーの座」に座るチャンスとみて、力を誇示すべく動き出しているのかもしれない。その為には産業分野においても世界トップレベルになってリーダーシップをとる必要があるだろう。この自動車産業における変革もそれが表面化したものなのだ。

中国の自動車業界は電気自動車(EV)を中心に変革が進んでいるが、まだまだ発展段階だ。これから中国はコネクテッドカーなどの新カテゴリーにおける変革に取り組むことは想像に難くない。中国自動車産業のこれからの進展に注目したい。