中国シェアサービス「カーシェアリング」の展望
中国では各大都市でシェアサイクルが普及を続ける中、最近、共享汽车と呼ばれるカーシェアリングがにわかにブームになっている。カーシェアリングはスイスが発祥といわれているが、日本では1999年頃から導入されており、現在の代表的ものに「タイムズ24」がある。近年急成長中の中国のカーシェアリングにスポットを当ててみた。
中国のカーシェアリング市場
中国では現在、北京、上海、広州など多くの都市でEV(電気自動車)のシェアリングが展開されている。2018年にはすでに中国の内陸部でも省都などを中心にカーシェアリングが始まっている。多数のカーシェアリング会社がある中、レンタカー業者もカーシェアリングサービスの提供を始めているのだ。
レンタカー業者による取引総額は2020年に約10億ドル(約1100億円)に達するとみられている。カーシェアリング会社の有名なところでは「Gofun出行」「Evcard」「一度用車」「軽享出行」「即行car2go」などがある。
中でも「Gofun出行」は1万2000台の専用車両を北京、上海、武漢、成都、南京など20都市に展開しているようだ。中国自動車メーカー「上海汽車」傘下で、8400台のEVを20都市で展開している「Evcard」の曹光宇CEOは「時間にして40分未満、10~30キロのちょっとした日々の用事など、市内での都市型移動に使ってもらうのが狙いだ」と述べている。
(出典:https://baike.baidu.com/item/gofun%E5%87%BA%E8%A1%8C
http://www.12365auto.com/news/20170314/275198.shtml)
中国の自家用車事情
中国には運転免許保有者が3億人いる。全国の自家用車の数もここ数年で急激に増えてきており、3億台となった。車の数が増えているため、中国では渋滞を管理するため車の台数が制限されている。北京にはくじ引きで割り当てられるナンバープレートを待っている人が多数いるのだ。
(出典:http://www.xinhuanet.com/mrdx/2016-06/17/c_135444497.htm
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1589637772901143504&wfr=spider&for=pc)
北京で1100台の車を保有するカーシェアリング会社、「北京首汽智行科技」のトップは、中国の交通市場が大きすぎると述べる。配車やライドシェア、タクシーでさえ北京市民の需要を満たしきれないでいるのだ。こういった背景から、今カーシェアリングが急成長を遂げている。
カーシェアリング利用方法
最初に専用アプリをインストールして携帯電話番号による実名登録作業の後、免許証の写真をアップして許可を得れば利用が可能になる。まずアプリを起動し、マップを見て車両を探すのだが、これはシェアサイクルを利用する場合とだいたい同じ要領である。
ユーザーはアプリの地図上にプロットされているカーシェアリング専用駐車場に行く。車のドアロックを解除するためにQRコードを読み込み、利用し終わったら指定された駐車場に車を返却する。
アプリのマップ上に車の場所を示すアイコンが表示される。このアイコンをタップすると、メーカー名や車種、残り走行可能距離などの詳細が分かるようになっている。残り走行可能距離はバッテリーの残量から計算しているのだろう。
借りるためにはシェアサイクル同様に、支付宝(アリペイ)または微信支付(ウィチャットペイ)のいずれかの電子決済を使いアプリへ保証金を支払う。この保証金は後に返金可能だ。利用を終える際は、街の指定された駐車場へ戻せば良い。
シェアサイクルと異なる点は、スタート地点と同じ駐車場に返却しない場合利用料金に8元が加算されてしまうということだ。また、利用前に前後左右から車を撮影して、車の状況を事前報告しなければならない。これらのプロセスを経てようやく車のドアをアプリで解錠し、乗車できるのだ。
シェアリングカーへの不満
自転車と異なり車は製品毎、モデル毎にインターフェースが異なる。また、車種によってカーナビがあったりなかったりする。アプリには利用する車種の説明が書いてあるが、車内には操作用のマニュアルがない。
さらにカーシェアリングならではの問題だが、前の利用者のマナーが悪いと、窓や鏡が汚く灰皿に灰がたまっていたりする。窓拭き用の使い捨て布巾やゴミを持ち帰る袋等をトランク等に常備しておくこともできるだろう。
またマナーとして、利用後の最低限の清掃は義務付けるべきだ。利用後に灰皿など車内を撮影して、送信しなければ清算できないようするなどして、アプリを改善できるかもしれない。AI機能で写真を認識し、マナーの悪いドライバーにはセサミクレジットの減点などで対処できる。
中国カーシェアリングの実情
中国のシェアリングサービスはこの1年で急成長している。カーシェアリング会社は新たな市場の一部を自力でつくりだすだろうが、タクシーや配車アプリからも市場を奪い取るだろうとの指摘もある。また一方では、バブルだと警告する人たちもいる。
北京では約200社がカーシェアリングやその種のサービスを提供している。2017年3月にはカーシェアリング会社の「友友租車」が破綻宣言して70の駐車場を閉鎖した。カーシェアリング会社が自動車1台当たりに支出する金額は稼ぐ金額よりも多いというから、難しいビジネスであることは確かだ。
(出典:https://www.kanzhun.com/news/149676.html
http://www.chinaz.com/start/2017/0316/673944.shtml)
EV向け補助金は段階的に廃止されており2020年には完全になくなると言われているが、それでもカーシェアリング会社はEVの充電スポットや駐車場などのインフラに多額の投資をしなければならないのが実情だ。
(出典:https://ask.itouzi.com/question/1101)
2016年2月には中国国家情報センターが「電気自動車のカーシェアリングは、普及するほど車購入を抑えられ、環境負荷も低減できる」と述べていた。一方で、8月には交通運輸部が「EVは運転慣れしていない人が多く、リスクが高いためカーシェアリングには推奨しない」と述べている。
しかし、これも慣れの問題ではないだろうか。中国では確かにEVの運転経験がある人は少ないかもしれないが、これからはもっと増えるはずだ。現段階で民間投資が非常に活発な中国のEVカーシェアリング。どのように発展するのかに注目したい。