eWTPとは何か?国際貿易システムの刷新を目指す、アリババのB2B遺伝子と野望の結晶
中国ネットメディアによると、2019年11月末、エチオピア政府とアリババはeWTP(Electronic World Trade Platform=世界電子貿易プラットフォーム)の共同構築で合意した。すでにマレーシア、ルワンダ、ベルギー等とも提携しているという。このeWTPとは何を目指しているのだろうか。アリババの意図を探ってみよう。
eWTPとは
eWTPは2016年3月の世界貿易ルールの会議における、アリババ、ジャック・マー会長の提唱に始まる。eWTPは越境Eコマースの健康的発展をはかるため、官民の交流促進と有効な政策でビジネス環境を整備する。そして民間部門主導により、全世界の発展途上国、中小企業、若者たちを世界電子貿易プラットフォームへ導き、世界経済の主体へ押し上げる。
eWTP科技創新基金(eWTP Technology & Innovation Fund)公式サイトによれば、同基金の設立は2018年5月、アリババ集団とアント・フィナンシャルを出資者に、資金規模6億ドルでスタートした。中国初の世界的ファンドである。設立以来、インド、東南アジア、中東地区のハイテクベンチャーに投資してきた。
その投資戦略は?
その投資戦略は以下通り。
1 全世界の高い成長ポテンシャルを持つ地区と市場に投資。技術革新と消費のグレードアップ重視。
2 早期、成長期、拡大発展期の企業に200~5000万ドル。
3 海外市場での現地創業企業、中国企業の海外プロジェクト重視。
4 創業者のパートナーを目指し、創業者に全方位サポートを提供。
5 ウインウインの提携関係を促進。
6 重点市場の優秀な投資ファンドと提携。
越境Eコマース総合試験区
eWTPの前段として、2015年3月設立の「杭州越境Eコマース総合試験区」がある。アリババと杭州市政府の提携の産物だが、さらにその根源には、ジャック・マー会長の“世界電子商務本部”建設という情熱があった。貿易のデジタルイノベーションを目指し、中小企業のグローバル経済への参加を促した。現在この越境電商総合試験区は全国59カ所に拡大を遂げている。
2017年10月、アリババと杭州市はeWTP実験区の建設を発表した。総合試験区の活動をグレードアップさせるものである。
海外送金への情熱
アリババは海外送金にも執念を燃やしている。2015年6月、杭州試験区にPINGPONG金融を設立し、ニューヨーク支店を設けた。海外送金手数料を従来の2分の1~3分の1水準、1%以下に抑えた。それでは足りず2017年、米国の送金サービス会社「マネーグラム・インターナショナル」を12億ドルで買収しようと試みた。しかし、米国政府の承認を得られず2018年1月断念する。ところがその1年後2019年2月には、英国の同業「ワールドファースト」を7億ドルで買収することに成功した。
さらに2019年10月には、国際決済サービスの国内ベンチャー「XTransfer(奪匯網絡技術)」に出資した。同社6人創業グループは、いずれもアリババ出身だ。これらの試みは、従来型SWIFT(国際銀行間金融通信協会)体制への挑戦でもある。
まとめ
そして2019年12月には「eWTP公共サービスプラットフォーム」をアップロードした。貿易行政とビジネスのさらなる簡素化を目指し、通関、決済、増値税還付などのソリューションを提供する。
アリババの創業事業は、中小企業のマッチングサイトだった。今でも、阿里巴巴国際站、1688、阿里巴巴零售通、淘工廠、CNZZ、一達通、万網 等の多彩なB2Bサイトを運営している。それらの発展は、そのまま中国ビジネス環境の改革に寄与してきた。eWTはその延長線上にあり、国際貿易、行政までもイノベーションしてしまおうというのである。eWTはアリババの野望の最終形を体現したものかも知れない。注目の存在である。