2018年、改革開放40周年の中国
日本にとって中国は経済面では巨大市場であり、またインバウンド需要の柱でもあります。そして、日本と中国との間では昨年が日中国交正常化45周年で、今年は日中平和友好条約締結40周年を迎えると同時に中国の改革開放40周年でもあります。そこで、昨年を振り返り中国の動向にスポットを当てます。
習主席の新年メッセージ「大国の責任果たす」
中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は国民に向けた新年のメッセージで「責任ある大国として国連の権威と地位を断固として守り、果たすべき国際的な義務と責任を積極的に履行する」と述べ、国際秩序の維持に積極的にかかわっていく考えを強調しました。
また「気候変動に対応するための約束を忠実に守る」とも語り「パリ協定」を順守する姿勢を示し、さらには、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」を推進して「世界平和の建設者、グローバルな発展の貢献者、国際秩序の擁護者になる」とも訴えています。
そして、経済面では「2018年は改革開放40周年にあたり、これを契機に改革を最後まで進める」と強調し、2020年までに農村から貧困をなくす目標の実現に全力を挙げる考えも表明しました。
世界リーダーを目指す中国
2017年、世界リーダー米国はトランプ政権に変わり、オバマ前政権とは一転して「米国第一」を主張して、「パリ協定」脱退、「環太平洋経済連携協定(TPP)」離脱、そして「イスラエル首都問題」と、国際社会から反感を買う側面もあり、国連での立ち位置も微妙な状況になりました。
それに対して中国の習政権は、「パリ協定順守」、アメリカのTPP離脱に相反するように巨大経済圏構想「一帯一路」を推進するとともに、「国連重視」を強調し、北朝鮮の核開発・ミサイル開発への対応で軍事力の行使をちらつかせるトランプ米大統領をけん制しつつ、国際社会のリーダーシップを担おうという姿勢が見て取れます。
米国の「我々はインド太平洋地域のパートナーであり、同盟国だ」との訴えに対抗する「一帯一路」構想はまさしく世界リーダーの座を奪わんとする意思の現われでもあり、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議でも米中両大国がせめぎ合う構図が深まっていました。
経済面から見た中国
IT関連をはじめ産業分野では目まぐるしい発展を遂げており、留まる気配はありません。巨大経済圏構想「一帯一路」の先には、世界リーダーを担う経済大国としての中国の構図が画かれているものと思われます。
国民総生産(GDP)を見てもアメリカを上回る伸び率で推移しており、留まる気配も無く「一帯一路」構想を打ち出しましたが、これはアメリカのTPP離脱を契機に、2015年に発表した10年計画「Made in China 2025」の軌道修正若しくはダメ押しともとれるものであり、これらは新中国成立100周年(2049年)に向けた長期計画の序章にすぎないのかも知れません。
軍事力から見た中国
中国は「一帯一路」構想のもとに周辺国への巨額の経済支援を行う一方で、南シナ海での軍事拠点と見られる人工島の整備を進めています。アジア地域の関心は北朝鮮問題に集まっており、これ見よがしにせっせと南シナ海での軍事拠点と見られる人工島で、高周波レーダーや軍事目的での利用が可能なその他設備の設置を進めているのです。
さらには海洋環境の観測と銘打って、南シナ海と東シナ海の海底に外国潜水艦の監視に利用可能な即時観測網を今後5年間で設置する方針であり、南シナ海の軍事拠点化は着実に進められております。現状ではアメリカ軍が圧倒的な軍事力を持っていることは中国も認めており、あえてアメリカ軍を寄せ付けないための布石と視るべきなのでしょうか。
外交面から見た中国
「一帯一路」構想を掲げた中国ですが、ここに来て親中国・同盟国も次々と中国を見放し始めているようです。パキスタン、ネパール、ミャンマーが、中国が計画していた大規模水力発電所3ヶ所の事業中止を発表しています。また、中国が日本からもぎ取ったインドネシアの高速鉄道も、工事が大幅に遅れているため、最近では計画を白紙に戻すべきだという声が高まっているとか。
破格の経済支援や格安のインフラ工事引き受けといったいわゆる札束外交で、世界各国での影響力増大を目指し続ける中国ですが、あまりの「身勝手」ぶりに各地で衝突が多発しています。台湾出身の文明史・経済史研究者で評論家の黄文雄氏は「中国からすればすべては自国のためであって支援国のためではないのだから地元無視になるのは当然」「野心と下心しかない習近平政権にそれらの国々がようやく気づき警戒し始めたのでは」と述べています。
「一帯一路」構想は、中国によるインフラ建設を沿線国で推し進め、一大経済圏をつくりあげるということが建て前として語られてきました。ところが、実際には中国側の契約不履行や工事中断が相次いでおり、また、仮に完成したとしても、中国側に高い金利を要求され、実質的に中国に支配されるというケースが相次いでいます。
いい例がスリランカのハンバントタ港で、スリランカ政府が中国側の甘い提案に乗せられ、高利での資金援助を受け入れた結果、支払いができなくなったスリランカ政府は中国政府に債務軽減を求め、そのかわりに中国側に99年間の運営権と治安警備の権限を譲渡せざるをえなくなりました。
このような背景から、今の中国は「新植民地主義」として親中国・同盟国にも警戒されるようになってしまいました。世界リーダーを目指す中国にとっては不名誉な結末であり、今後どの様に名誉を回復すべく「一帯一路」構想を軌道修正するのか、また、日本においては如何に友好的な国交を維持するかが課題です。
日中平和友好条約締結40周年
日中両国は1972年に国交を正常化し、そして1978年8月12日に平和友好条約を締結し、以来あらゆる分野において友好で互恵的な関係を発展させてきました。今年は日中平和友好条約締結40周年の節目を迎えることから、外務省はじめ関係省庁との連携のもと、「日中交流促進実行委員会」が設立され、オールジャパンの体制で記念事業の実施や日本側が実施する事業の認定等を通じて、様々な交流行事が推進されます。
この日中交流促進周年事業を通じて、日中の幅広い分野での交流が一層促進され、相互理解の増進や友好関係が強化されるとともに、未来志向の安定的な日中関係が構築されることが期待されます。
<CJハート、日中交流の心のマーク>
日中交流の基本は心(ハート)です。 China-Japan の頭文字(CとJ)を組み合わせ、ハート(心)を形作っています。CとJは、長い交流を「種」として、ぐんぐん天に向かってのび、成長回転します。ハートを大切に包み込み、守り、育てる様を表現しています。 |
2016年までの習政権は、内政中心で世界的リーダーシップの話を避けてきました。しかし、孤立主義・保護主義色を強く打ち出すトランプ大統領の登場で、米国のアジアへの関与が不確実になるや否や、習近平国家主席は昨年10月の中国共産党大会で、2050年までに世界をリードする強国にすると述べました。すなわち新中国成立100周年までに世界リーダーの座に座ると公言したのです。2018年は平昌オリンピック、2020年東京オリンピック、そして2022年北京オリンピックとアジアでのオリンピック開催が続きますが、それを踏まえて中国がもう少し柔軟な外交姿勢を見せるのか否かが注目されるところです。
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