アリババ「零售通」とは何か?零細小売店を新時代のOMOへと導く、先進的プラットフォーム
アリババはB2C事業、B2B事業ともに強力な、オールラウンダー企業である。B2Bは創業事業ともいえ、現在まで連綿と継続してきた。2009年の第1回双11(11月11日独身の日セール)開始以降、B2Cの急成長に隠れ、印象としては目立たない。しかし、今でも着実な進化を遂げるばかりか、中国のビジネススタイル全体に影響を及ぼしている。「零售通」もその1つである。
4つのB2Bサイト
アリババには、4つの主要なB2Bサイトがある。
1 阿里巴巴国際站
越境ECにおけるB2Bプラットフォームの代表的存在である。全世界のバイヤー(貿易商、卸売商、小売商、製造商)に中国サプライヤーのマッチングを目指す。
2 阿里巴巴1688
旧名を「阿里巴巴中国交易市場」といい、主に国内中小企業間のB2B取引サイトである。
3 阿里巴巴零售通
1688のB2B2C版。主にオフライン店舗を組織化し、末端商店のデジタル化などを目標とする。
4 淘工廠
サプライヤーと良質な工場をつなぐ、川上サイドのマッチングを行う。生産工場のオンライン化を援助し、多くの工場の参加によるサプライチェーン構築を目標とする。
越境ECの阿里巴巴国際站を除けば、中小企業向けマッチングの阿里巴巴1688サイトが、より川上を意識した「淘工廠」とより川下を意識した「零售通」に分かれ、よりきめ細かいケアを目指したという理解でよいだろう。
阿里巴巴零售通とは
その「零售通」を詳しく分析してみよう。解説には、アリババB2B事業群のオフライン小売店舗、コミュニティの零細店に、商品、物流、営業、その他付加価値を上げるサービスを提供する、統合型プラットフォームとある。同時にオンライン、オフラインを問わず、有志の創業者たちに対し、創業プラットフォームを提供する。そして、次のように紹介されている。
零售通のポジションは、コミュニティ新零售(ニューリテール)プラットフォーム。
零售通の目標は、百万商店によるスマートコミュニティ創造、億万市民へのサービス。
零售通の使命は、すべてのサービスを1つ1つ個店の為に行うこと。
零售通の価値観は、利他、極致、信任。
公式サイトには、すべてのサービスを1つ1つ個店の為に行うこと、という使命が大きく表示されている。商店の加盟を募るページでは、効能として、経営補助、決算管理、効率的なチェーンに参加、営業管理、商品管理、取引管理、を挙げている。
天猫小店、まとめ
ほとんど経営の丸投げのようにも思える。しかし、これでも採算ベースに乗らないようでば廃業した方がよい、というデッドラインのようでもある。
経営が改善すれば、さらに「天猫小店」に加盟という手がある。もう一段レベルアップし、OMO(Online Merges Offline)体験を、消費者へ提供する店となる。ビッグデータによる詳細なサポートにより、経営効率はますます上がるはずだ。零售通は、最終的に零細小売店を、こうしたネットワークへ導く道しるべである。実際に、2019年上半期には全国130万の零細小売店を、オンラインネットワーク化している。
零售通は、すでに小売業の効率改善に大きく貢献した。しかし、ライバルの京東、蘇寧易購はもとより、社区団購企業とも零細店の囲い込み競争をしなければならない。中国の小売最前線は、見どころ満載である。