中国人インバウンド集客法⑦~商品“欲しい”から“楽しみたい”へ!?~
コト消費がけん引!? 百貨店、化粧品が好調
中国経済に関するニュースでは、連日のように中国IT業界やEC市場の活況が報じられていますが、ここ1-2年は買い物や商品を楽しみたいニーズの高まりから、にわかに店頭も中国の人々で賑わってきています。しかし、店頭が賑わっているといっても、中国の人々はやみくもに街に繰り出しているわけではなく、意図的かつ計画的にお店を選んでいるようですよ。店頭に足を運ぶきっかけは、インターネットで、SNSや口コミサイトなどの情報からホームページといった公式情報をもとに接客やディスプレイを目当てに店頭にたどり着きます。特にこういった取り組みに力を入れるのが、関西を中心とした百貨店で2017年は各社が大きく免税売上高を伸ばしました。中でも突出して伸びたのが化粧品で、メイクアップなどをアドバイスするサービスが好評といいます。中国の人々の商品ニーズが“欲しい”から“楽しみたい”に変化しつつある中、日本の百貨店各社の取り組みをみながら、中国人インバウンド集客法について考えたいと思います。
化粧品、リアルタイム動画でPR 大丸
百貨店の免税売上高の上昇で最も顕著といえるのが、J・フロントリテイリング傘下の大丸・心斎橋店(大阪)ではないでしょうか。J・フロントリテイリングの2018年2月期業績説明資料によりますと、2018年2月期の免税売上高は大丸心斎橋店で前期比70.5%増(売上高における免税売上高シェア30.1%)と大きく伸び、大丸の他の店舗でも梅田、東京、京都、神戸、札幌、松坂屋店舗でも名古屋、上野、静岡で前期比50~120%免税売上高が増えました。心斎橋店はインバウンドのSNS販促やモバイル決済導入、化粧品2ヶ所展開など奏功したのだそうで、月別の商品別売上高では化粧品が最大で前年同月比45%ほど伸長した月もありました。大丸は化粧品のPRで、中国で人気の美容研究家を起用したメイクアップのトークやリアルタイムによる質疑応答を動画配信するなど、SNSでの拡散を意識した取り組みを展開。店頭に足を運んだ訪日中国人に対しても、一人ひとりに合ったメイク方法をアドバイスするなどして支持を得ているといいます。
建物そのものや飲食店紹介 高島屋
訪日中国人による百貨店へのニーズは、化粧品だけに留まりません。高島屋の大阪店や日本橋店では、中国の動画サイトなどを通じて商品はもちろん建物自体のみどころや飲食店も紹介しているそうです。中国で人気のある俳優の矢野浩二さんを動画に起用するなど、単なるCM動画にならないよう、より多くの中国の人々に注目されるために知恵を絞っています。高島屋の2018年2月期決算説明会資料によりますと、2017年度インバウンド売上高は前年比41.6%増加。2018年度インバウンド売上高は、2017年度比15.1%増を計画しており、CM動画による集客を期待します。その他の百貨店各社も中国のSNSで多数のフォロワーを持つインフルエンサー(KOL)をイベントに招待するなど、口コミを中心とした中国での情報発信を強化しており、日本に興味のある中国の人々への訪日前のアプローチを強めています。
最近の百貨店による情報発信は、店舗・商品紹介から始まり、ラッピングや靴磨きサービス、店舗周辺の観光名所、日本の文化・催事紹介にまで至るといいます。SNSや動画、口コミサイトが中国の人々への影響力を強める中、百貨店各社は中国の人々の目に届き、胸に響くような動画または体験を作るために知恵を絞ります。中国の人々を惹き付けるのは、商品、建物、あるいはそこで働く人や街そのものであるかも知れません。いずれにせよ、日本での“楽しみたい”ニーズが高まる中、一層の自社商品・サービスの強みの把握やエンターテイメント性のある事業展開が今後求められそうです。
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