中国人インバウンド集客法③~消費は買い物からコト消費へ!?~
中国の人々はお泊まりがお好き!?
中国の人々はお泊まりが好き!? 観光庁の宿泊旅行統計調査(平成29年10月第2次速報)によりますと、平成29年10月の国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数の約半数を中国語圏(中国、香港、台湾)の人々が占めていることが明らかになりました。
中国語圏の都道府県別の延べ宿泊者数については、東京、大阪、北海道がトップ3を占めており、最近は訪日中国人を対象にしたホテルも登場しています。中国語圏の人々の宿泊を好む理由としては、買い物による消費より、そこでしか体験できない「コト消費」が増えているが背景にあるようです。
日本貿易振興機構(JETORO)の2017年9月中国の地域分析レポートによりますと、「ショッピングモールや百貨店のテナントは、アパレルや化粧品の店舗が大半だが、これらの店舗は eコマース(電子商取引)普及の影響を受け、不振に陥っている。代わって外食店や『コト』消費を提供する店が増えている。eコマースに代替されにくいからだ。」と分析しており、訪日の際もじっくり時間をかけて楽しむ「コト消費」と宿泊との関係がどうやら無縁ではなさそうです。
宿泊者数のトップ3は、東京、大阪、北海道
観光庁の宿泊旅行統計調査(平成29年10月第2次速報)の詳細をみてみますと、平成29年10月の国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数の第1位が中国で前年同月比25.8%増の約154万人(外国人宿泊者数シェア22.9%)、第2位が台湾で前年同月比21.9%増の約105万人(シェア15.7%)、第3位が韓国で前年同月比54.4%増の約104万人(シェア15.5%)、第4位が香港で前年同月比21.5%増の約50万人(シェア7.5%)と、中国語圏の人々の宿泊者数が外国人宿泊者数の46.1%を占めています。
国籍別の都道府県別延べ宿泊者数構成比は、中国が東京24%・大阪17%・北海道8%、台湾が北海道15%・東京14%・大阪12%、香港が大阪17%・東京16%・北海道12%、と東京、大阪、北海道が中国語圏のトップ3を独占しています。「コト消費」と宿泊に関係性があるとするならば、中国語圏の人々を惹き付ける魅力的な日本の体験とは何なのか、などを次に考えていきたいと思います。
中国では、温浴施設、クッキングスタジオなど登場
日本での訪日中国人の「コト消費」の事態をみる前に、まず中国での現状をみていきましょう。日本貿易振興機構(JETORO)の2017年9月中国の地域分析レポートによりますと、「コト消費」は「中国では上海市などの沿海部から始まり、最近では内陸部の都市においても多様なジャンルで浸透しつつある。」と指摘しています。
例えば、洋書・日本語書籍やデザイン性の高い雑貨などを豊富にそろえた複合型書店、シネマコンプレックス、フィットネスジム、英会話や音楽などの教室、スケートリンク、工作や陶芸を楽しめる DIY(手作り)エリアに始まり、最近では自分の歌声を録音できる電話ボックス式の 1人カラオケ、日本で温浴施設を運営する極楽湯、料理・菓子作り教室のABC クッキングスタジオ、食に関するワークショップやイベントを開催し、関連書籍や食器、調理器具なども販売する「無印良品」の新たな飲食業態「MUJI Diner(ムジダイナー)」、松竹の「松竹お化け屋本舗」なども登場しているといい、JETOROは、「イベントに参加したり新しい体験を楽しんだりすることには意欲的である。こうした消費志向の変化を受け、中国には新たな業態が登場したが、まだ発展の余地は大きい。」とみています。
たこ焼き作り体験や畳の内装で集客 大阪
一方、日本に目を移すと、中国語圏の人々を呼び込むために地場や地域の強みをいかす取り組みが活発なようです。東京に次いで中国語圏の人々に人気の都市、大阪では着物着付け体験やたこ焼き作り、新世界などの大阪らしい観光名所と連携した集客の試みが始まっています。
例えば、2017年11月22日付の日本経済新聞によりますと、“香港流”のホテル「大阪逸の彩(ひので)ホテル」が大阪・恵美須町に開業したと報じています。屋上庭園からは通天閣を望むことができ、内装は日本の雰囲気を楽しめるように床に畳を採用するほか、大浴場に慣れていない利用者向けに貸し切り温泉を用意。香港で忌み数とされる4、9、13、14を除いた階を18まで表示しているといいます。
南海電気鉄道も高架下に宿泊施設の開業を進めており、今後、大阪の特徴を取り入れた体験型ホテルの開業が相次ぎそうです。東京でも、外国人観光客の夕食後から終電までを意識して、日本の和太鼓を取り入れたエンターテイメントショーなどの試みが始まるなど、日本文化とエンターテイメントの融合が中国語圏の人々が訪れる都市部で一層加速していくとみられます。
前にもJETOROが買い物→コト消費への中国での消費の変化を指摘しているように、ECの普及・発展とともに日本を訪れる中国語圏の人々の消費も、買い物型から体験型へ移ってきているといえるでしょう。日本や自社の店舗・サービスで中国語圏の人々を“足止め”するためには、日本文化や自社の強み、地域の特性をいかしたエンターテイメント性の高い取り組みが今後一層求められていきそうです。
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