VANCLの広告戦略“アフィリエイト”
中国でアパレルのネット通販で急成長を成し遂げて世界でも注目された企業があります、それは“VANCL”(凡客誠品)といい2007年の10月に設立されて初年度の売り上げは112万元にすぎませんでしたが、翌年以降急激に売り上げを伸ばし続けました、この成功のカギを探るべく“VANCL”のWebマーケティング手法にスポットをあててみると頭脳的な広告戦略が覗えました。
VANCLとは
ファストファッションのネット通販を中心に業務を展開している“VANCL”(凡客誠品)は日本ではあまり知られていない企業ですが、中国Webでアウトレットモールを運営しており“中国のユニクロ”とも言われています。創業者兼社長の陳年氏は現アマゾンの前身である「卓越」の創業メンバーでもありました、ビジネスモデルは日本の“ZOZOTOWN”に似ており、アパレル専門のB2Cサイトとしては中国最大手となっています。日本の“ユニクロ”も“タオバオ”とのパートナーシップにより中国でネット通販を展開しておりライバル関係にありますがこの両社には宣伝広告の面で大きな違いがあります。
VANCLの宣伝広告戦略
中国語サイトでネットサーフィンをしていると必ずと言っていいほどVANCLの広告を見かけます、またインスタントメッセンジャーを立ち上げて誰かとチャットをしようとしても、必ずやそこにVANCLの広告があります。VANCLの宣伝広告費はWeb広告が60%を占めており、売り上げの70~80%に貢献しているといわれます。その秘策は成果報酬型広告の“アフィリエイト”でした、“ユニクロ”はニュースレターを配信しているのに対してVANCLは独自にアフィリエイトを行っているのです。一つの例は“VANCL STAR”というユーザー自身が「マイショップ」を作れるWebサイトで、ユーザーは「マイショップ」内で自分のVANCL商品を身に着けて写真をアップロードします、その写真を通じて商品が売れると売り上げの一部がユーザーに入る仕組みなのです。他にも、「VANCLネット広告連盟」と名付けてこれに加盟した「誰か」すなわち“アフィリエイター”が自分のブログや個人ネットショップにVANCLのリンクを貼り、消費者がそのリンクを経由してVANCLで買い物をしたらこのアフィリエイターに売り上げの一部が支払われるのです。分かりやすく言うと、このアフィリエイターにとっては自分のブログ内や個人ネットショップに自動販売機を設置するようなイメージです。リスティング広告は成約が生じなくてもクリックされる毎に広告費用が発生するのに対し、アフィリエイトは成果に対してのみ広告料を支払うだけでよく、非常にリスクが低くて費用対効果の高い広告形態ということができます。一方でアフィリエイターにとっては無料ブログや無料メルマガなどパソコンとインターネット環境さえあれば初期投資をかけることなく収益を作ることができることから広告主にとってもアフィリエイターにとっても、大きな魅力をもった広告手法といえるでしょう。
アフィリエイトの歴史と実情
もともとは1990年代にアメリカのアダルトサイトがクリック報酬型で「ユーザーをサイトへ誘導した場合報酬が発生する」アフィリエイトプログラムを用いたのが始まりといわれています。その後2000年ころに日本でクリック報酬型ではない「成果報酬型のアフィリエイト」の仕組みが普及して、2004年ころにはアフィリエイトサービスプロバイダー(仲介をしてくれる業者:通称ASP)が多数登場するまでに広がっていき、ますます高度な広告形態へと進化したのです。“アマゾン”や“楽天”もアフィリエイト広告を活用していますし、東証一部上場企業も普通に出稿しているれっきとした広告ビジネスです。しかし、その一方では「悪質業者」も登場して「アフィリエイトを勧誘した業者を信じて高額な契約を結んだもののまったく収入にならない」などと消費生活センターへの相談が相次ぐようになり、詐欺的な悪いイメージを持たれているのが実情です。この「悪質業者」とは本当にASPなのでしょうか、悪質業者は副業を紹介するサイトの閲覧者やメールマガジンの読者に誘いをかけてきます。こうした勧誘につられて始めてみると、実際にはまったく儲かりません。そこへ業者から「有料の本登録をすれば、勧誘マニュアルなどの営業ノウハウやツールを提供する」というメールが届きます。また「有料登録をする人の勧誘に成功すると、紹介料をもらえる」などと、マルチ商法的な勧誘を勧められることもあります。中には訴えに対してアフィリエイトを始めるためのサイト構築料として数十万円の費用を正当化する業者もいます。だます方は勿論悪いですが、副業という名に誘われてネットビジネスに殆ど素人の人たちが、アフィリエイトをエサにだまされる方もあまりにも隙が多いのではないでしょうか。早くアフィリエイトの正しい知識が広まり汚名を払拭して欲しいものです。
VANCLは自社工場を持たずに他社委託によって商品を生産し、実店舗も持たずネット通販に特化しています。しかし、ネット通販ユーザーのクレームで一番多い「商品が早く届かない」という不満を解消するために自前の物流拠点を持ち、主要都市の近郊地域では3日以内、広い中国の遠隔地でも1週間以内の配送を実現しています。そして顧客の苦情や意見を収集するとともに顧客の不満に対するアフターケアも行っています。このようにWeb広告をフル活用し安心感やサービスを重視した戦略は中国進出を考える日本企業にとっては良い参考になることが多いのではないでしょうか。
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