中国越境ECの始め方 ~自社サイトとECモール出店のメリット&デメリット~
中国からの訪日、越境EC額は右肩上がり!!
中国からの訪日者数は年々右肩上がりに増え続け、中国の越境ECの市場規模も2017年は過去最高の約1100億ドル(約12兆円)になるとも予想されています。中国向けのビジネスを展開するのに絶好の機会を向かえている今、いったいどのような取り組みをすればよいのでしょうね。中国の人々の購買意欲は旺盛で、中国市場への企業の広告宣伝活動は活発ですが、中国最大手のインターネット検索サイト・百度が検索シェア、業績をともに落とすなど、中国の人々の情報収集や広告のあり方が変化しているようです。そんな中、中国のTwitterといわれる微博(Weibo)などのSNSの投稿からの情報収集が注目され、昨年にはKOL(Key Opinion Leader・多くのファロワーに影響力を持つユーザー)が複数の投資家から約1200万元(約2億円)の投資を受けたことが話題になりました。今回は、中国EC市場で人気のある商品やKOLの人気の秘密について迫りながら、中国の越境ECへの効率的なアプローチ方法を考えていきたいと思います。
中国越境ECサイトは専門分野に特化
まずは、中国の人々の越境ECの実態についてみていきます。微博(Weibo)の日本地域のオフィシャルパートナー・F社によりますと中国の越境EC利用者数は2017年に約5.8億人、2018年には約7.6億人になると見込まれています。利用するECサイトは主に、
① 中国EC第1位のアリババグループのBtoCサイト・「天猫国際(Tmall Global )」
② 中国EC第2位の京東(ジンドン)が手がける「京東国際(JD Worldwide)」
③ 中国IT企業のネットイースが提供する「Kaola.com」
④ “特売”で急成長するECサイト・唯品会の国際版「唯品国際(Global VIP)」
⑤ 化粧品分野で中国最大のオンラインサイト「聚美优品(JUMEI)」が展開する「Jumei Global」
で、ユーザーはこれら5つのサイトを使い分けているようです。
中国向けに日本製品を販売する場合、これまでは中国で知名度の高い天猫国際か京東国際を通じて行うことが多い傾向にありましたが、サイト内での競争激化や商品の特徴を十分にアピールできないなどの理由から、日本企業においても他の中国ECサイトへの出店が相次いでいます。例えば、日本最大級のインターネット・ショッピングモール「楽天市場」を運営する楽天は昨年、高品質な商品や優れたサービスを強みに急成長するECサイト「Kaola.com」に出店しました。美容液、美容パックなど美容関連や健康食品などの楽天市場の人気商品を販売するとともに、日本の楽天市場の売れ筋商品ランキングも紹介しており、ネットイースの持つさまざまなオンラインメディアと合わせて活用することで、日本の人気商品を中国の消費者に効果的に提供する方針です。また、2015年頃からは日本の化粧品を扱うメーカー、卸、小売が相次いで「聚美优品(JUMEI)」と連携する動きが目立っています。
ブランド品の大幅割引、期間限定特売、商品の本物保証を武器に販売を伸ばす「唯品会」の利用も、出品者の在庫削減や物流の効率化にも貢献するなど消費者と出品者の双方にメリットがあり、中国の越境ECではサイトの使い分けの動きが加速しています。これらのことから、販路を1つのサイトに限定してしまうと、越境ECは盛り上がりに欠けてしまう可能性があります。
日本店舗の商品を、中国でネット販売
次に中国の人々が日本を訪れた際に購入した商品を、中国に帰国した後も買い求める可能性を検証していきたいと思います。これについては、訪日中国人が頻繁に訪れる小売店がすでに対策を講じ、一定の成果を得ている店舗もあるようです。免税売上高構成比が50%を超える道頓堀(大阪)などに店舗を構える小売チェーンのドン・キホーテでは、訪日旅行前の商品予約サービスや国内全店での免税対応・多言語対応(中国語は簡体字と繁体字)のコールセンターの設置・フリーWi-Fiサービス・外貨での決済対応などのサービスを提供しています。昨年10月からは「majica Premium Global」の開始により訪日外国人が帰国後も人気商品の購入が可能となっており、来店時に会員登録すれば、帰国後、専用サイトやアプリから注文・配送などを行うといいます。この他にも百貨店の三越伊勢丹が昨年、天猫国際に出店しており、日本の店舗の商品を中国でも購入できるようにする動きは一層広まることが予想されます。訪日は中国への越境ECに繋がるチャンスであり、今後日本でビジネスを展開する企業にとっても中国の越境ECサイトとの連携などの取り組みが欠かせないといえるでしょう。
知名度や固定客があるなら自社サイト!?
中国への越境ECに取り組む際、中国のIT企業が運営するECサイトに出店すると経費負担が重くのし掛かってきます。自社のECサイトを立ち上げた方が効率的という考えもありますが、実際はどうなのでしょうね。中国向け越境ECで自社サイトを運営している例をみていきましょう。2013年のホームページ立ち上げから順調に売上げを伸ばしているのは、「無印良品」の中国向けオンラインストアです。衣服や家具などの正確な情報を発信し、中国で「MUJI」ブランドは確実に定着しつつあります。また、直近ではANA(全日空)も3月から中国語のECモールを開設する予定だそうです。300社の日本企業が出店する見込みで、生活用品と化粧品などを提供し、6月からアプリも提供する計画といいます。ECモールの運営から商品の輸送まで全日空の内部で完結するため、時間とコストを節約できるメリットがあるとのことです。無印良品やANAのように知名度やブランド力、物流網、固定客の存在といった強みがある場合は、自社サイトでの運営が望ましいと思われますが、中小企業などリソースが限られる企業は事業を一から全て自社で行うのは難しいというのが現状でしょう。カスタマーサービスやアフターサービス、マーケティングにも取り組む必要があり、莫大な労力と資金がかかることが予想されます。