訪日中国人に今売れているモノを徹底解説
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化粧品、医薬品好調!家電、時計は失速
政府観光局によりますと、2016年の訪日中国人の数が1~10月累計で早くも昨年の約500万人を上回りました。2016年1~10月累計の訪日外国人総数は前年同期比23%増の約2000万人、うち中国が29%増の約550万人、台湾が15%増の約360万人、香港が21%増の約150万人となっており、中国語圏の訪日が目立ちます。中国人の訪日目的としてはショッピングが上位に来るなど、小売店にとっては大きなビジネスチャンスとなりますが、購買行動の変化で中国人向け商戦の明暗が分かれているようです。2016年上半期は化粧品、医薬品が大きく伸びましたが、時計、家電、ブランド品などが失速しており、また、中国人向け商戦に多くの企業が参入したこともあり、ただ商品を並べていれば売れるというわけではなさそうです。
時計・ファッションから日用雑貨にシフト ドンキ
全国で激安を武器に日用雑貨品から時計、家電などを幅広く販売するドン・キホーテでは、中国人訪日客の免税売上構成比が時計・ファッションから日用雑貨品にシフトしました。2017年6月期第1四半期連結業績資料によりますと、2016年4~9月中国人訪日客の免税売上構成比は2015年7~12月に比べ、理美容、化粧品、医薬品、消耗品、日雑、菓子、食品が増え、ファンシー小物、アパレルが横ばい、高級時計、電気、輸入ブランドが減少しました。2016年4~9月免税売上構成比は化粧品が2015年7~12月に比べ5.4ポイント増加の15.6%、医薬品が5.9ポイント増加の16.3%、消耗品が4.7ポイント増加の11.7%と増えた一方、高級時計は、15.8ポイント減少の3.9%と大きく比率を下げました。
ドン・キホーテの2016年7~9月の中国人の免税客単価は国内平均の約6.3倍の約15000円で、訪日外国人の国別免税売上高の約45%を中国人が占めています。2016年7~9月の免税売上構成比は全店で5.3%ですが、道頓堀御堂筋店(大阪)、道頓堀店(大阪)では50%を上回り、特に訪日外国人をターゲットにした店舗で比率が高くなっています。ドン・キホーテでは今年に入り、羽田空港店、京都アバンティ店、なんば千日前店を出店したほか、来客外国人向けEC(インターネット商取引)サイトを試験運用するなど、訪日外国人の一層の取り込みを図っています。
理美容品が伸長 ビッグカメラ
首都圏を中心に店舗展開する家電量販店のビッグカメラでは、訪日外国人から理美容品が支持されました。2016年8月期決算資料によりますと、理美容品のインバウンド販売商品の構成比は、前年に比べ8.1ポイント増加の25.3%と品目別でトップになり、時計、カメラ、パソコンの構成比は減少しました。中国人向け売上高、客数は昨年から「元ベースで堅調」(ビッグカメラ)に推移しているといいます。
訪日中国人が増加傾向にあるもののインバウンド販売で苦戦している業種もあります。東京、札幌、福岡など都市部に百貨店を展開する三越伊勢丹では、2017年3月期第2四半期決算で外国人売上高が前年同期比2割減りました。三越伊勢丹の外国人の来店客は約7割を中国人が占めますが、外国人顧客の急激な落ち込みで、服飾・時計が苦戦しました。三越伊勢丹では今後、アリババグループのECサイト・天猫国際(Tmall global)への出店など売り場の拡大で売上げの回復を図っていきます。
百度検索は九州が増加
訪日中国人は何故増えているのでしょうか。訪日中国人増加の背景には旅行会社や政府観光局、自治体の訪日プロモーションの強化、LCC(格安航空会社)の路線網拡大、クルーズ船の投入拡大などが挙げられます。また旅行の形態も高額なパッケージツアーが減って個人旅行化が進んでおり、都市部もちろん九州などの地方へも足を運ぶ訪日中国人が増えています。中国最大の検索サイトである百度(Baidu)が2016年9月20日〜10月10日に行った調査によりますと、国別の検索結果は「日本」が昨年に続き1位で、日本の地域別では、大都市圏が多かった昨年に比べ、5位に熊本、9位福岡、10位長崎、11位鹿児島、14位宮崎と九州勢がTOP15に5県(前年は2県)ランクインしています。
「くまモン」検索数、1日1万回超も
百度によりますと、九州エリアの相関ワードは「鹿児島×自由行(個人旅行)」や「福岡×天気」などの個人旅行を想起させる検索ワードが大半を占めています。特に「熊本」については、ご当地キャラクター「熊本熊(くまモン)」の検索数が多く、1日の検索数が最高で1万回を超える日もありました。自由旅行以外で大きく上昇しているのが病院関係の検索です。「日本 医院(病院)」というワードの検索回数が前年比407%、「九州 医院(病院)」などは370%増と検索回数の上昇が顕著でした。来日者数が増加していることから「日本酒店(ホテル)」なども前年比380%と増えています。
訪日旅行の目的別のデータを見ると、美術館、博物館などアートに関係する検索ワード「日本艺术(日本アート)」が前年比279%と上昇しました。日本の主要観光地の検索数TOP100では、56位の東京国立博物館をはじめ、六本木ヒルズにある森美術館が61位、滋賀のMIHO MUSEUMが68位、東京青山の根津美術館が80位、同文京区の印刷博物館が89位にランクイン。 他にも、音楽イベントで都市型ロック・フェスティバル「SUMMER SONIC(サマーソニック)」が69位となり、文化関連の検索ワードがTOP100にランクインするなど上昇が目立ちました。
百度、Yahoo! JAPANと業務提携
百度では、中国での日本への関心の高まりを受けて、日本法人であるバイドゥ株式会社が、ヤフー株式会社(Yahoo! JAPAN)と、中国向けマーケティング領域にて、百度広告の日本における販売に関し業務提携を行うことで合意したと11月に発表しました。バイドゥが取り扱う中国向けリスティング広告・アドネットワーク広告の日本における販売総代理店としてYahoo! JAPANと連携して、日本国内での広告販売のチャネルを全国規模へと拡大・強化し、日本の製品やサービスに興味を持つ中国企業や中国人と日本企業とのビジネスチャンスに繋げていきたい考えです。また、バイドゥが保有する検索ビックデータやこれまでの業界・ユーザー動向のデータとYahoo! JAPANのノウハウを元にトレンド分析や改善施策などのコンサルティング業務も実施していく予定です。中国最大手の検索サイトと日本最大手の検索サイトが手を組むことで、一層の訪日中国人の増加と消費の多様化が期待されます。
将来は“癒し”にビジネスチャンスか!?
中国で人気なのは、「くまモン」だけではありません。ローカル線のネコ駅長やドッグカフェ、ネコカフェなど動物と触れ合えるスポットも人気です。中国語圏で先進的な都市として知られる香港では、人口過密な上、年間労働時間が世界トップクラスに長く多くの人々は大きなストレスを抱えて暮らしているといわれています。経済的には豊かになったものの、多くの人が日本の温泉をはじめとする“癒しスポット”を求めて訪日します。最近の旅行の傾向としては賑やかな大都会ではなく静かな地方でくつろぎたいニーズも少なくないようです。また、香港は世界トップ水準の長寿社会でもあり、健康志向が強く、女性は高い美容意識を持っています。香港、上海、北京などの都市部を中心に発展を遂げ、中国語圏の人々が経済的に豊かになる中、日本に対する新たなニーズが次々と生まれ、中国語圏の人々の消費動向は年単位でも目まぐるしく変化しています。中国語圏の人々の購買意欲は依然として旺盛ですが、今、まさに何が売れているのか、将来はどのようなニーズがあるのか、常に先を見越していないとビジネスチャンスの喪失にも繋がりかねないでしょう。
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