中国越境EC「市場拡大の潜在性はまだ高い」
中国では高品質な日本商品に対するニーズも高く、中国越境ECの市場が拡大傾向にあるなか、中国政府は昨年、2016年4月8日にスタートした新越境EC制度の通関証明書提出などの施行を2018年末まで再延長する旨発表しましたが、他にも越境ECに関連する規制があります。その一方で、まだまだEC市場拡大の潜在性も高く、今こそ中国越境EC進出や基礎固めを行う時でもあります。そこで参考となるよう昨年までの越境EC関連の情報から「現状と留意点」をまとめてみました。
目次
中国越境ECの現状
中国越境ECの市場拡大の潜在性
中国は目まぐるしい経済成長を遂げており、インターネットやスマホの急速な普及とともに、消費市場の拡大によりEC市場は大幅な伸びをみせています。中国では国内総生産(GDP)も上昇して、中国人消費者の「良質な商品に対する需要」が高まっており、この要求の高まりがEC市場の発展も促しているのです。それに伴い、越境ECに対する関心も高く、高品質な日本商品に対するニーズも高まっています。
中国は世界のEC市場の4割を占めると言われますが、中国の小売額全体に占めるECの割合は13.8%とまだまだ低く、今後のEC市場拡大の潜在性の高さが覗えます。 すなわち、今なお中国越境EC進出のチャンスであり、既に進出している企業にとっては足場固めを行う時でもあるのです。
日本製品に対する関心と売れ筋商品
中国越境ECでは、日本の「高品質でブランド力のある商品」に関心があつまる一方、「良質で廉価な商品」も人気です。
2017年の消費データによれば、女性消費者向け商品、例えば衣類、宝石類、ベビー用品などの販売が大幅に増加しており、家庭用繊維製品(布団・カーテン・テーブルクロス・タオルなど)が快適性や質感が注目され、高付加価値商品が売れるようになってきています。
売れ筋商品としては、化粧品、ベビー用品、健康食品が代表格で、他には温水洗浄便座、魔法瓶なども継続的な人気ですが、意外にも、鍋、収納用具、米びつといったものも売れており、生活に密接した商品が売れ筋となっています。
日本から出品できる主な中国ECサイト
天猫商城 (Tmall.com) | 国美在線(Gome.com.cn) | 聚美優品(jumei.com) |
京東商城(JD.com) | 当当网(dangdang.com) | 網易考拉海購(Kaola.com) |
唯品会(Vip.com) | 1号店(YHD.com) | 易迅網(Yixun.com) |
蘇寧易購(Suning.com) | アマゾン中国(Amazon.cn) | 淘宝網(Taobao) |
中国越境ECにおける留意点(関連する制度)
競争の激しい中国市場において、日本企業の強みは「品質」と「ブランド力」です。商品付加価値の高さと、ブランドの知的財産権などの権利保護には充分な留意が必要であり、出店や出品時には、信頼できる中国側パートナーまたは日本のサポート企業との連携が効率的でかつ効果的です。
中国における新越境EC制度
中国政府は2016年4月8日に新越境EC制度をスタートしましたが、突然の施行に戸惑う企業も多かったため、通関証明書提出などの施行を延期しました。そして昨年も、通関証明書取得に必要な書類が準備できないケースが多発していることや、一部指定商品に義務付けられている輸入許可書の取得に数ヶ月から1年以上の期間を要することなどから、通関証明書提出などの施行を2018年末までに再延長しました。
データ制約に関する規制「サイバーセキュリティー法」
2017年6月1日から実施の「サイバーセキュリティー法」ではデータの保存に関する規制を定めています。同法の第37条では
・重要情報インフラの運営者は、中国国内での運営において収集および発生した個人情報および重要データを、中国国内で保存しなければならない。
・業務の必要により、国外に提供する必要がある場合は、国家インターネット情報部門が国務院の関係部門と共に制定した規則に従って安全評価を行わなければならない。
と定められていますが、「別途規定がある場合は、それに従う」となっており、EC運営企業においては、個人情報の国外への持ち出しなどに影響するため、今後の関連規定の動向にも注視が必要です。
取扱商品の規制「越境EC小売り輸入商品リスト」
2016年4月6日に、財政部、発展改革委、工業・情報化部、農業部、商務部、税関総、国家税務総局、品質検査総局、食品薬品監督管理総局、瀕管弁、暗号局といった11の部署が連合で「越境EC小売り輸入税収政策に関する通知」を出すとともに、「越境EC小売り輸入商品リスト(ポジティブリスト)」が正式公布されています。
財政部2016年第40号「越境EC輸入商品リストの公布に関する公告」
1,142件の8桁の税関コードをもつ商品が含まれ、リスト上の商品に関連する管理要求も規定 http://gss.mof.gov.cn/zhengwuxinxi/zhengcefabu/201604/P020160407628544745898.pdf |
財政部2016年第47号「越境EC輸入商品リスト(第二弾)の公布に関する公告」
第二弾の輸入商品リスト公布、第一弾と税関コードが同様の商品の注釈は本リストに従うと規定 http://gss.mof.gov.cn/zhengwuxinxi/zhengcefabu/201604/P020160415822493955077.pdf |
※以上は中国語ですが「中国規制データバンク」が和訳の相談も受け付けています。 |
また、それぞれのECサイトでは規制取扱商品につき関連の管理規定を定めています。
例)京東(JD.com)の場合:https://helpcenter.jd.com/rule/ruleDetail.action?ruleId=2495
ドメイン・ICP関連の規定
昨年11月27日に工業情報化部より「工業及び情報化部からのインターネットのコンテンツ配信者にイン利用に関する規定の通知」(工信部信管 2017通達264)が発表されて2018年1月1日より施行されていますが、この通達は、越境ECサイトには大きな影響を与えます。
工信部信管(2017)通達264
http://www.miit.gov.cn/n1146290/n4388791/c5932541/content.html
工信部信管(2017)通達264
工業及び情報化部からのインターネットのコンテンツ配信者にドメイン利用に関する規定の通知 |
関係者各位
《中華人民共和国反恐怖主義法(反テロリズム法) 》 《中華人民共和国ネットワーク安全法》 《インターネット情報サービス管理規定》 《インターネッドメイン管理規定》 等の法律法規の規定により、インターネット情報サービスドメイン利用の更なる規範として、以下の関連事項を通知する。
1. インターネットコンテンツ配信者が配信に利用しているドメインは、配信者自身が合法的に登録して取得したものでなければならない。 (1) 配信者が個人である場合、利用ドメインの登録者は本人でなければならない。 (2) 配信者が組織である場合、利用ドメインの登録者はその組織の名義(会社株主含む)かその組織の主要責任者若しくは高級職管理者でなければならない。
2. インターネット接続サービス業者は、インターネットコンテンツ配信者に接続サービスを提供する際に、《中华人民共和国反恐怖主义法(反テロリズム法)》《中华人民共和国网络安全法》に基づきコンテンツ配信業者の身分について検査しなければならない。真実な身分証明を提供できないものに対して、インターネット接続サービスを提供してはならない。
3. IP登記管理機構、IP登記サービス機構は、《インターネット情報サービス管理規定》に基づき、また、電信主管部門の規定により、サービス管理システムを構築することとし、「工業及び情報化部ICP/IPアドレス/IP情報登録管理システム(以下、登録システム)」に基づき、IPアドレスの登記情報を報告しなければならない。
4. ドメイン登録管理機構、ドメイン登録サービス機構は、身分情報登録管理の更なる強化を進めなければならない。正しい身分証明を提供できないものに対し、ドメイン解析サービスを提供してはならない。
5. インターネット接続業者がサービスを受けるとき、登録システムによりドメイン登記者の真実な身分情報を検査し、正確な情報を提供しない、或いは提供された身分情報が正しくないか不足があった場合、インターネット接続業者がこの業務を提供することができない。本通知の施行前に登録システムに既に登録されたドメインはこの限りではない。インターネット接続業者は定期的に登録システムによりインターネット接続業者が利用するドメインの状態を検査しなければならない。ドメインが存在しない、或いは有効期限を過ぎている、且つ正しい身分情報の提供されていない等の状態にある場合、サービスの提供を停止するものとする。
6. 電信主管部門は、インターネットサービス業者、IP登記管理機構、IP登記サービス機構が、上述の業務について法律に基づき、各種違法行為を処理することを要求し、処理した結果は企業誉誉管理档案に格納され、また公示される。
本通知は2018年1月1日より施行する。 ここに通知する。 |
既にECサイトを運営されている企業にあっては、ドメインが適合しないためにサイトが突然閉鎖されるリスクもありますので今一度、当規定に照らし合わせて規定要求を満たすように改善する必要があります。
以上のように、中国越境ECはまだまだ市場拡大の潜在性を秘めております。しかし、中国越境ECを取り巻く環境は、関連する制度・規制による難しさも相まって、独自で運営するには厳しいものがあります。今後もいつ施行されるか分からない規制に対応するためにも、信頼できるサポート企業との連携が必要です。
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