中国のソーシャルバイヤーって何?
目次
「きれいになりたい!」ニーズ取り込む
美容液、シリアルなど日本製品、中国へ
「もっときれいにもっとスリムになりたい!」中国人女性のニーズを取り込み、美容液やシリアルなど高品質の日本製品を「爆買い」し中国国内で販売している人たちがいます。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の投稿を通じて販売を行うためソーシャルバイヤーと呼ばれ、人気バイヤーになるとフォロワー数は20万人以上です。主に個人で日本製品を中国国内に販売しており、美容液、化粧水、シリアル、オムツなどを中心に年間数億円を売り上げるやり手も現れています。
オムツ、家電にも関心
中国国内で特に関心が高まっているのは、日本製の美容や健康関連商品です。中国メーカーへの不信感や偽物への警戒から信頼ある日本メーカーの高品質な製品を求める人が増えています。
SNSの投稿には、美白・保湿を謳った美容液、化粧水、乳液、洗顔料、マスクなど美容関連商品、肌に優しい高機能オムツといった人気商品をはじめ、おでこに貼るタイプの冷感シート、髪のトリートメント剤、バッグなどのブランド品、衣料品、温水式便座、炊飯器、空気清浄器といった家電もアップされています。
また2015年中国人観光客数が前年の2倍の約500万人(日本政府観光局)に増えるなど、近年日本や日本製品への中国人の関心が高まっており、中国で手に入らない商品や「爆買い」した品を消費しきってしまった中国人が生活用品や消耗品を再びソーシャルバイヤーに求める動きもあるようです。
Weibo、WeChatに投稿
ソーシャルバイヤーは中国への輸入を専業で行う専門業者のほか副業で行う会社員、主婦、日本の留学生なども存在します。主に中国版Twitterの微博(Weibo)と中国版LINEの微信(WeChat)を利用して行っており、フォロワー数や口コミ数が販売に大きく影響します。
中国製品の品質への疑問が根強くの残る中国では、信頼できるソーシャルバイヤーの投稿文は重宝されます。特に美容関連商品、健康食品は実際に使用した感想、効果的な使い方などのアドバイスが購入のきっかけになることもあります。商品の購入に満足した購入者がフォロワーになったり好意的な口コミをしたりすることによりソーシャルバイヤーは販売網を購入者の知人にまで広げることができ、10万人以上のフォロワーを持つソーシャルバイヤーも少なくありません。
またスマートフォンのカメラ機能を利用したリアルタイムな販売ができるのもWeibo、WeChatを使う強みのひとつです。日本のドラッグストアのタイムセール時に店の看板や商品、値札などを撮影し、タイムリーな取引を行うソーシャルバイヤーも存在します。
SNSに決済機能
ソーシャルバイヤーの多くはWeibo、WeChatで商品情報を発信し、購入意欲のあるユーザーをタオバオというEC(インターネット商取引)サイトへ誘導します。タオバオは中国最大規模のCtoC(消費者間取引)のECサイトです。サイト内に自身のセレクトショップを運営することができます。最近はタオバオへ誘導せずWeibo、WeChatのSNS上のショッピング機能や決済機能を利用するソーシャルバイヤーも増えており、WeChatではメッセージのやりとりだけで売買を成立させることも可能です。
ドンキで仕入れも
それぞれのソーシャルバイヤーは自分のフォロワーや顧客の要望に応じて小売店をはじめメーカーや卸業者からも仕入れを行っています。これに対し、日本のドラッグストアや小売店も即座にニーズに対応できるようにするため、中国語表記や中国語を話せるスタッフを常駐させるなど、中国人ソーシャルバイヤーの存在も視野に入れた営業活動を行っています。
激安を武器に生活雑貨からブランド品まで幅広く販売するドン・キホーテでは、中国人の客単価が国内平均の約8倍の2万円のほか、中国人の免税の国別客数が約32%、売上構成比約47%と訪日外国人の中でいずれも最大となっています(2016年6月期)。特に医薬品や化粧品の販売が増えており、ソーシャルバイヤーを行う中国人の仕入れ先のひとつになっているようです。
ネットと毒粉ミルクがきっかけ!?
そもそもソーシャルバイヤーが誕生したきっかけは何だったのでしょうか?
ソーシャルバイヤーは、日本製品の代理購入から始まったと考えられます。はじめは日本で働いていたり生活したりしている中国人が親族や友人、その知人に中国で手に入らない化粧品や日用品、ブランド品などを頼まれて代理購入して手数料を得ていました。2007年頃のインターネット普及とタオバオのサービス開始に伴いネットショップの取引量が増えはじめ、2008年の毒粉ミルク事件をきっかけに輸入専門業者だけでなく個人による代理購入も一般的になっていきました。
ソーシャルバイヤー誕生に直接かかわったのがWeibo、WeChatの登場です。中国製品への不振が高まる中、自分の友人や知人と繋がっていたり販売者自身が商品を使用した感想を載せていたりする“顔の見える”販売がユーザーに受け、急速に広がっていきました。
アニメ、スイーツも「いいね!」
中国版Twitter・Weiboではわずか数分後には新しい投稿でページが埋めつくされるほど、ユーザーたちの活動は活発です。特に目立つのは、訪日中国人の投稿です。お気に入りのアニメキャラのグッズ、珍しい雑貨、ファッション、化粧品、スイーツの画像などを、おもしろおかしく、かわいくおしゃれに見た人が楽しめるような工夫を凝らしているものが多く、みるみるうちに「いいね!」が増えていきます。
自分が良いと思ったものを投稿し、ユーザーが気に入れば購入先を提示し買ってもらう、本音で語るブログ感覚の営業法がソーシャルバイヤー台頭の理由なのかも知れません。
経済産業省によると、2014年の中国のインターネット人口は約6億7000万人で、中国が日本からの越境EC経由の購入額は、2015年約8000億円から2019年には2兆3000億円に増えると推定されています。中国のインターネット市場はさらに拡大していきます。ソーシャルバイヤーは、嘘や偽物ではなく、本音の情報発信と本当に良い品を見極める力が一層問われてくるのではないでしょうか。
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