世界で最も厳しく検閲されているアプリ“微信(WeChat)”
中国では10月の共産党大会を前に6月1日より「インターネット安全法」が施行され、さらに8月25日に新実名規定が公布されました。党批判につながる言論統制などネット規制が一層強化されています。
全個人情報が中国当局へ送信される
中国ではニセ札の横行で、紙幣に対する信用が低いためネット銀行の口座から直接引き落としとなる「スマホ決済」が普及しています。なかでも、中国で最も人気のある多機能アプリ「微信(WeChat)」は、携帯利用人口6億6,000万人の内でトップシェアを誇っており、電子決済で「公共料金の支払い」「店舗やレストランの支払い」「自動車や自転車のレンタル」や「病院の予約」など様々な生活シーンに欠かせないツールとなっています。中国在住の日本人は「日本は現金主義だな。中国の手続きは震えるほど便利」などとSNSでつぶやき、電子社会に適応したアプリのメリットが次々とネットで紹介されています。しかし、このように利便性が着目されている微信(WeChat)ですが、中国の共産党独裁体制下ではユーザの言動は厳しく検閲されており、個人情報がアプリを通じて中国当局に送信されており、つまりユーザを通じた情報交流は暗号化の保護もされず「筒抜け」になっていると言っても過言ではなく、これに警鐘を鳴らす人は少なくありません。
SNSは個人情報を基にした実名制
最近、微信(WeChat)は、ユーザの個人情報を「関連法や規制」に従って中国当局に提供するとのメッセージを表示してプライバシーポリシーに同意するよう求めるようになっており、個人情報が当局に送信される仕組みになっています。送信される情報は、微信(WeChat)の検索結果・閲覧情報・連絡帳・個人間メッセージ・サービス利用履歴・位置情報など全ての個人の情報が中国当局に送信されるのです。10月1日から中国当局が微信(WeChat)をはじめQQ、微博(Weibo)、支付宝(Alipay)、百度(Baidu)など大半のSNSに実名制を取り入れるため、プライバシーポリシーの同意や個人情報を基にした実名登録を行わないとサービスの利用に制限がかかります。
新実名規定の第9条「口封じ」
国家互聯網信息办公室(全国インターネットインフォメーションオフィス)という機関から8月25日に「互聯網跟帖評論服務管理規定」という新実名規定が公布されました。この新規定で目を引くのは同規定の第9条です。「フォーラムのプロバイダは、ユーザのクラス階級制度を導入し各ユーザの発信内容について評価を実施し、その規定に基づいて信用失墜行為を行うユーザをブラックリストに追加し、当該ユーザのサービス停止および新たな登録を禁止すること」となっており、フォーラムにて風紀を乱す発言や政府に反する発言をするユーザには、現行アカウントの停止に加えて再登録をさせないということで、さらに「国家・各省・自治区・直轄市の当局は、フォーラム運営者の信用記録およびブラックリストの管理制度を提供し、定期的にフォーラム運営者の信用評価を実施すること」としており、当局がフォーラム運営者の信用記録について管理制度を創設することにしています。このブラックリストが全国管理であれば、一度どこかでアカウントを停止されたユーザはそれ以後は中国国内でネットでの発言が一切できないことになります。これは、まさしく「口封じ」です。
中国のネットユーザーは完全な監視体制下
中国では現行の法律で、裁判所や公安当局は市民の財産や私的なデータを押収するのに捜査令状を出す必要がありません。そのため中国当局が基本的に微信(WeChat)などのユーザの全データにアクセスすることが可能であることが「中国は法治国家・三権分立が確立していない」と非難される基になっています。新華社によると、習近平国家主席はインターネットの安全保障の取り組み工作会議で「インターネットは法外の地ではなく、国家政権の転覆、宗教上の極端主義の扇動、民族分裂思想の宣伝、暴力テロ活動の教唆といった行為は断固として止めて打撃を与えなければならない」と述べており、ネットの規制を強固なものにしているのです。
国際人権組織アムネスティ・インターナショナルが、2016年の調査でユーザのプライバシーや発言の自由でランク付けしたところ、微信(WeChat)は100点満点中の0点で「世界で最も厳しく検閲されているアプリ」のひとつにあげています。中国のネットユーザは当局による完全な監視体制下に置かれているのです。
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